抱擁のかけら

抱擁のかけら

2本目はスペイン映画「抱擁のかけら」です。

評価:(80/100点) – サスペンスのような人間ドラマ。


【あらすじ】

映画脚本家ハリー・ケインは盲目である。ある日彼の元に「ライ・X」を名乗る自称映画監督が現れる。ライ・Xの持ち込んだ企画を聞いて、ハリーは彼がかつての知り合いにして亡きエルネスト・マルテルの息子だと気づく。彼との関係を知りたがる助手・ディエゴに、ハリーは昔の話を語り始める。それは一人の女性を巡るハリーとエルネストの確執の物語だった、、、。


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【感想】

ペドロ・アルモドバル作品を見るのは「ボルベール<帰郷>」以来です。ボルベールも「親子ってやっぱり似るのね。」という都市伝説みたいな感慨とサスペンスを上手く織り交ぜた傑作でした。ボルベール同様に本作もペネロペ・クルスとのコンビで人間ドラマを描きます。
本作は、現在とハリーの回想を行き来することで物語りが進んでいきます。実際に事件が起きたのは過去なのですが、そこに上手く現在のイベントが挟まることで物語が進行していきます。非常に上手い脚本です。
要は愛人を奪った男と大富豪の確執とその狂気の物語でして、話自体はそれこそ昼ドラかと思うほどドロドロでベタです。しかしそこはアルモドバル監督。上手い具合におしゃれ雰囲気で隠してきます。ライ・Xの目的は何なのか?彼が再三口にする「僕の撮ったドキュメンタリー」とは何なのか?そして、何故彼は今盲目でレネと暮らしていないのか?その全てがじんわりと分かってきた段階で、本作が屈折したパーソナリティ達の織りなす人間臭いドラマであることが分かります。
そして終盤、とても面白いメッセージが発信されます。それは「映画監督にとって作品はもっとも大事なもの」だということです。ハリーの個人的な感傷も含めて、やはり映画作品は監督が思い入れてナンボだということです。ハリーは、コメディとしてもレネのアイドル映画としても、そのクオリティを再構築していきます、この過程とビーチサイドの悲惨なロマンスで、十分に入場料の元は取れます。
自身を持ってオススメできる傑作だと思います。
ちなみに、ラスト付近で中途半端な尺だけ見せられる「謎の鞄と女たち」はアルモドバル監督自身の「神経衰弱ぎりぎりの女たち」のセルフパロディです。レンタル屋にも普通に置いてありますので、気になった方は是非観てみてください。まだアントニオ・バンデラスがアルモドバルとコンビを組んで居たときのコメディ作品で、アルモドバルがゲイだったりする関係で「アレな関係では?」とか色々いわれてた作品です。

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