水曜日は久々にレイトショーで
「孫文の義士団(原題:十月囲城)」をみました。
評価:
– 「長坂橋仁王立ち」が5回も見られるなんて!!!【あらすじ】
時は1906年。西太后の圧政が吹きすさぶ清朝から逃れるため、民主革命を志す本州人達はイギリス領香港へと渡ってきていた。そんな時、日本へと逃げ延びていた革命運動の首謀者にして革命団体・中国同盟会の創設者・孫文が香港を訪れるとの情報が流れる。そして孫文の渡航に合わせて清の本土からも各地の革命指導者達が集合し会議が開かれるという。
しかし、この情報は西太后にも伝わっていた。西太后は反政府分子を一網打尽にするため、500人からなる暗殺集団を差し向ける。一方の革命家たちは香港で護衛団を結成する。孫文の滞在時間はわずか1時間。護衛団は果たして一時間を持ちこたえることが出来るのか、、、。
【感想】
水曜日は昨年の香港電影金像奨のグランプリ作品、「孫文の義士団」です。レディースデーだからなのか香港スター全員集合だからなのか、女性の一人客が結構居てちょっとビックリしました。カンフー映画なのに、、、。
最近は「*****版エクスペンダブルズ」という表現が非常に多くて大変喜ばしい限りですが(笑)、本作も「香港版エクスペンダブルズ」の名に恥じぬオールスターっぷりを披露してくれます。ちょい役なのにいきなりサイモン・ヤムが出てきたり、いつも以上にヘタレなドニー・イエンや浮浪者のレオン・ライ、敵のパシリでストライクフォースのカン・リーまで出てきます。そして話しのフォーマットも昨年の「十三人の刺客」に似ています。少数対多数の集団戦をメインにして、それまでの過程を前振りとしての前半でさらっと見せます。
ただ、「十三人の刺客」と比べればまだ丁寧に前振りをしている方だと思います。本作の話しの軸は数々の親子関係です。革命に賛同しながらも息子にはまっとうな人生を臨むリー・ユータン。酒とギャンブルにおぼれて娘と会えなくなったシェン・チャンヤン。両親が自分のせいで死んでしまったリウ・ユーパイ。父の弔い合戦に挑むファン・ホン。育ての親の恩に報いるために命を賭けるアスー。革命家のシャオバイと破門僧ワン・フーミン以外の全ての護衛団は親子関係を動機として行動します。この辺はきちんと統一されていますし、きちんと描く部分を整理していて頑張った跡が見えます。
ところが、、、やっぱりアクションの繋ぎ方がちょっとワンパターン過ぎます。なにせ本編である「孫文の滞在1時間」が始まってからというもの、「刺客が襲ってくる」→「護衛団の誰か一人が仁王立ち」→「護衛が敵を決死で食い止めるが力尽きる」→「次の刺客が襲ってくる」というパターンを延々と見せられます。たしかに一回一回のシチュエーションは非常にテンションが上がりますし、特にドニー・イエンはやっぱり圧巻のクオリティです。ただ、、、ただですね、、、、全体的にワイヤーを使いすぎなのとカメラの動きで誤魔化しすぎで、正直なところアクションについてはおしなべて中の上っていう位のクオリティです。
なんというか、、、せっかく豪華なメンツを使ってお祭り的なエンタメ映画を作っているのに、いまいち絶賛しきれない感じなんです。もちろん所々演出上で上手い部分はあるんです。孫文が1905年に死んでいないのは誰でも知っていることなので、物語は途中で「孫文の影武者を守れるかどうか」という話しにスライドしてちゃんと最後までハラハラさせる展開にしますし、孫文ほどの大メジャー人物に興味が移らないようにワザと孫文の顔を最後の最後まで映さなかったり、工夫の跡は結構見られます。とはいえあんまりテンションが振り切れるような熱血展開も無いまま、気付いたらなんとな~く終わっています。決め絵は本当に格好良いんです。レオン・ライが鉄扇を持って階段で仁王立ちするのなんか鳥肌ものの格好良さです。
なにが物足りないかと考えると、キャラクターとアクションの説得力だと思います。本作では護衛団同士の連携があんまりありませんので、どうしても一種のシチュエーション演舞に見えてしまうんです。「ここから5分はクリス・リーの時間」とか「ここからはレオンの出番」となっているため、前後とのつながりが全然ありません。そうするとそこまでの流れが一切関係なく俳優のプロモーションタイムが始まっちゃうんです。それでいてアクションを誤魔化してるのはさすがにちょっと厳しいです。
【まとめ】
全体的には面白いですし、概ねエンタメ映画としては良く出来ています。個人的にアクションを期待しすぎていただけのような気もしますが少々物足りなさが残ってしまいました。さすがに「十三人の刺客」と比べるのは厳しいですが、面白い映画なのは間違いないですし歴史を知らなくてもシンプルなエンタメ構造なので十分に楽しめます。オススメかどうかと言われれば、それはもう当然オススメです。アクションはニコラス・ツェーも出ている新作「新・少林寺」に期待しましょう。オススメです。