今日の3本目は
「KG カラテガール」です。
評価:
– 不満ばっかりなので次作に期待!【あらすじ】
伝説の空手家・紅宗次郎の末裔・紅達也は謎の男達の道場破りに会い、次女・菜月を攫われ自身も殺されてしまう。なんとか生き延びた長女の彩夏は池上家にやっかいになり、池上彩夏として紅家に伝わる宗次郎の黒帯を守り続ける。
それから数年後、高校生になった彩夏はバイト先でひったくり犯を撃退したことで「スーパー空手少女」としてニュースになってしまう。彩夏が生き延びていることを知った謎の集団のボス・田川は、彩夏へ刺客を放つ、、、。
【三幕構成】
第1幕 -> 彩夏がひったくり犯を撃退し有名になる。
※第1ターニングポイント -> 彩夏が二人組に襲われる。
第2幕 -> 彩夏とサクラ。
※第2ターニングポイント -> サクラが田川の人質となる。
第3幕 -> 菜月の救出。
【感想】
本日の三本目は「KG カラテガール」です。T-JOY作品ですので、自社のバルト9とブルグ13のみでの公開となります。初日のレイトショーですがまぁまぁ人が入っていました。主演はハイキックガールの武田梨奈。監督はハイキック~で脚本だった木村好克。アクション監督で西冬彦。キャストも殺陣は大志塾門下が出演で、ほぼハイキックガールの陣容そのままです。続編ではないですが、西冬彦組の一連のカラテ作品の最新作です。
結論から言ってしまいますと、本作はダメダメですw これより書くことはダメ出しばっかりになるとおもいますが、でもこれは期待の裏返しです。間違いなく武田梨奈は日本アクション界の期待の星です。可愛いですし、十分に動けます。そしてきっちりエンディングを歌うなどアイドルとしての佇まいもできています。だから、是非、この素材をフル活用して素晴らしい作品を撮って欲しいんです。今から書くことはアクション馬鹿からの提言というか(苦笑)、アクション映画の面白さの肝の部分になります。
提言その1: アクションでキャラクターを語れ!!!
本作で一番の肝はここになります。アクションはただ戦えばいいというわけではありません。アクションはキャラクター描写の一種であり、立派な演技なんです。例えば先日見たドニー・イェンの「イップマン2」を例に見てみましょう。
イップマンは詠春拳を使います。詠春拳は守りのカンフーであり、空手の「三戦立ち」のように内股気味で正面に構えます。攻撃は適切な時に適切なタイミングで最小限のカウンターを入れます。技は拳が中心となり、足技は相手の動きを制するため、遠い間合いから牽制したり相手の攻撃をかいくぐる際に使用します。この一連の型は、イップマンの平和主義と直結しています。イップマンは決して自分から手を出す人間ではなく、普段は至って温厚で低姿勢です。詠春拳はこのイップマンの性格・理念を体現しています。
このように、アクションとはその動きでキャラクターの性格や理念を表現するものです。力任せの攻撃を行う人間なのか、それとも守りを中心にカウンターで制するのか。足技を多用するのか、拳を多用するのか。正々堂々とした攻撃を使うのか、卑怯な手段を使うのか。とにかく勝利にこだわるのか、勝利よりも礼節を重んじるのか。その動き全てがキャラクターを表さなければいけません。「この人物ならばこういう動きをするはずだ」という物であり、逆に「この動きをするのだからこういう人物に違いない」という物です。
本作では、アクションが一切キャラクターを表しません。敵も味方も似たように飛び跳ねていますし、似たように踏み込んできます。これは本当に残念です。キャラクターを表さないアクションは、もはやただの「演舞」です。これでは例え動きが良くても映画作品にはなりません。
提言その2: アクションでストーリーを語れ!!!
前項にも通じますが、アクションはキャラクターだけでなくストーリーも語る物です。
本作では田川は傭兵集団のボスで「宗次郎の黒帯」をブランドに仕事をしています。しかしそれ以外の具体的なことは何も描写がありません。作中において一番意味が分からないのは「結局田川とは何者なのか」という部分です。それは田川側のアクションに一貫性と特徴がないからです。例えば、田川側の刺客たちが「田川流」的な技を使いさえすれば、この作品は「田川流」と「紅流」の抗争の話なのだと一目で分かります。また、もし田川本人が戦うシーンがあって、そして紅流のあの独特の構えを使いさえすれば、それは十分ストーリーの説明になります。田川が紅流というブランドを奪おうとしている表現になるからです。
ですが、本作には前述のようにアクションに特徴がありません。アクションとストーリーが完全に分離してしまっていますので、アクションパートではストーリーが前に進みません。唯一ストーリーのあるアクションは海沿いでの姉妹の一騎打ちです。ここでは、2人が同じ型を使うことで姉妹だと気付くという描写があります。この積み重ねがないため、90分しかない上映時間が長く感じてしまいます。
提言その3: アクションは主演のプロモーションタイムと心得よ!!!
アクション俳優とアイドルは紙一重です。というのもアクション俳優は演技力よりもアクション力を重視されるため、より俳優本人の魅力・技量がストレートに表れるからです。ですから、アクションシーンは主演俳優のプロモーション的な要素が強くなります。衣装であったりシチュエーションであったり、アクションシーンに物語り上とは別の「テーマ」を設けることが肝心です。
では本作の彩夏のアクションを順を追って見てみましょう。
最初のアクションはひったくり犯との対決です。ここは顔見せ程度であり、素人相手に圧倒的な強さを見せます。
次いでのアクションは額のペットボトルを蹴り飛ばす模擬シーンです。これは彩夏のハイキックの高さと正確さを見せています。
その直後がサクラと武田一馬との2対1の対決です。ここがひったくり犯とのアクションと同じ構図でレベルを上げた物です。
次がサクラとの一騎打ちです。ここは前述のようにお互いが同じ技を出し合って相打ちになるシーンです。
次はもう本拠地に乗り込みます。乗り込み先で1対1の空手戦、1対多数の乱取りの後、ヌンチャクで木刀相手に戦います。ここが本作で唯一武器を使うシーンです。
最後にいかつい外人リチャード・ウィリアム・ヘセルトンとの1対1から菜月が援護にはいった1対2の戦いです。ここでは劇中で唯一の姉妹連携が見られます。
とまぁ羅列してみるとわかるように、パターンが少なすぎますw すべてのアクションは平らな床の上でおこなっており、地形や施設を利用した戦いがありません。武器もヌンチャク対木刀が1回、それも1分ぐらいで終わってしまいます。本作は武田梨奈のアイドル映画でもあるわけですから、彼女の能力を知らしめないといけません。だからもっと戦いのバリエーションを増やして「武田梨奈ってこんな事もできるんだ」というプロモーションをするべきです。本作では空手家・武田梨奈の魅力の半分も伝えられていません。
【まとめ】
残念です。ただただ残念です。正直な所、ドグーンVで私は一気に武田梨奈の魅力にやられました。だから本作もかなり期待していたんです。ところが蓋を開ければ、、、本当に残念です。疑問なのは、本作のスタッフ(=ハイキックガールのスタッフ)は本当にアクション映画が好きなんでしょうか? どうもアクションに愛が感じられないというか、「アクション映画」という一種のジャンルムービーの肝が分かっていないような気がしてなりません。とはいえ、武田梨奈は文句なく可愛いですから、彼女のファンはとりあえず押さえておくに越したことはありません。ただし、間違っても傑作や良作ではありません。つまらない映画だという前提で、是非将来のアクションスターへの投資だと思って見に行ってもらえるといいかなと思います。小声でオススメします。
>>本作のスタッフ(=ハイキックガールのスタッフ)は本当にアクション映画が好きなんでしょうか?
違うんです!! 彼らはアクション映画が大好きなんです! ただ、情熱が先走りしすぎてテクニックがついてきてないだけなんです! そこだけは分かってあげてください!!