今日はTOHOシネマズで2本見てきました。1本目は
「クレイジーズ」です。
評価:
– リメイクとしては上出来だが、意味があるかと言われると、、、。【あらすじ】
アイオワ州はオグデン・マーシュ。保安官のデヴィッドと補佐のラッセルは、訪れた野球の試合会場に男がショットガンを持って乱入するのを目の当たりにする。何とか事を収めたデヴィッドだったが、今度は別の家庭で放火殺人が起きる。共通するのはどちらも加害者が朦朧として凶暴になっていることであった。
そんな中、保安官事務所に一本の電話が入る。地元のハンター達が森の中でパラシュートを付けた死体を発見したという。調査に赴いたデヴィッド達は、そこで墜落した軍用機を発見する、、、。
【三幕構成】
第1幕 -> 二件の殺人事件と墜落事故。
※第1ターニングポイント -> デヴィッドとジュディが軍に拘束される。
第2幕 -> 高校からの脱出と逃走。
※第2ターニングポイント -> ラッセルの死。
第3幕 -> 逃走。
【感想】
本日の一本目は「クレイジーズ」です。ご存じゾンビ映画の巨匠ジョージ・A・ロメロが1973年にインディで制作した「ザ・クレイジーズ/細菌兵器の恐怖」のリメイクです。ホラー映画としてはそこそこ観客は入っていました。先月の東京国際映画祭でも先行上映していましたが、私は真裏の「神々と男たち」を見ていたので今回が初見です。
実は先週ぐらいから急にゾンビ熱が出ていまして(笑)、ロメロの「~of the dead」シリーズをここ一週間で全部見直していたりします。
話の概要
本作を一言で表すならば「知能を持ったゾンビが襲ってくるゾンビ映画」です。アメリカ軍が密かに開発していた細菌兵器が誤って飲み水に混入してしまい小さな街全体が”ゾンビ病”に感染してしまいます。この辺りのゾンビ病の背景についてはオリジナル版では皮肉めいた反体制メッセージが込められていましたが、今回のリメイクではその要素はまったく無くなっています。
概ねリメイクとしては出来の良い部類なのですが、ここに今回のリメイクの大きな特徴であり不満点があります。オリジナル版にあったメッセージを薄めて娯楽作に傾けた結果、本作の持つ毒っ気が削ぎ落とされ、”普通によくあるゾンビ映画”になってしまっているんです。
ロメロの描くゾンビ・ホラー映画の大きな特徴は、ゾンビやモンスター自体はそこまで驚異ではなく、そのモンスターによって露わにされる生身の人間の猜疑心であったり本質としての暴力性が一番驚異であるという点です。つまり、ゾンビなんかよりも人間の方が恐ろしいんです。
本作でも人間狩りをする連中が途中で出てきます。彼らは荒廃した街の中で理性のたがが外れて、ヒャッハー状態(a.k.a. 北斗の拳)になってしまっているんです。この連中は非常にロメロ的です。「ゾンビ」にも出てくる彼らのようなイッちゃってる脳筋バカは、こういった荒廃した世界観には必要不可欠です。
しかし、、、本作では彼らもまたゾンビとして登場してしまいます。本作では「知能を持ったゾンビ」が登場してしまっているおかげで、人間様の立場がありません。本来であれば語られていたはずの「キれてる人間の方がはるかに怖い」という部分が「キれてるゾンビ」になってしまっているんです。これではあまりにも当たり前すぎます。
本作の不満点がまさにここ、つまり「普通すぎる」という点につきます。40年前ならともかく、今せっかくリメイクしたにも関わらず本作は「いままで沢山あったゾンビ映画の最大公約数」になっています。ジャンルムービーとしては正しいのかもしれませんが、ロメロのリメイクにしてはあまりにも寂しすぎます。
一方で、この「普通すぎる」部分を「お約束」として許せるのであれば、本作は大変愉快なコラージュ映画になります。「スーパーマーケットでならず者が襲ってくる」「遺体安置室で検死官が襲ってくる」というシチュエーションはそれだけでも「ゾンビ映画あるあるネタ」として楽しめます。徹底的に安っぽいバックミュージックで盛り上げる手法も無しではありません。
【まとめ】
単体の映画としてはかなり纏まったゾンビ映画の佳作ですが、リメイクとして考えると少々微妙な気分になります。ゾンビ映画ファンであれば間違いなく楽しめるとは思いますが、もし気合いがある方は中古DVDでオリジナル版を探した方が良いかも知れません。
ただ、オススメかといわれれば、当然オススメです!!!!
というか、ただでさえ「ゾンビ映画は当たらない」といわれて公式HPやお抱えのライター達が一生懸命「ゾンビ映画じゃないですよ。感染しただけなので厳密には人間です!!!」とかいう苦し紛れのアピールをしていますので(笑)、これでヒットしないと本気でゾンビ映画がシネコン公開されなくなってしまいます(涙)。多少つまらない部分もありますが、今後くるであろう優良ゾンビ映画への投資と思って是非是非劇場へ足を運んで下さいw