本日は3本です。
1本目は「ブロンド少女は過激に美しく」を見ました。
評価:
– これぞ男の悲哀ロマン。【あらすじ】
リゾートへと向かう長距離列車の中。会計士のマカリオは偶然隣り合わせた老女に自身の身の上話を始める。それはかつて愛した女性との悲しくも愚かしい物語だった、、、。
【三幕構成】
第1幕 -> 列車での会話。
※第1ターニングポイント -> 少女との出会い。
第2幕 -> 少女との恋愛と波乱の人生。。
※第2ターニングポイント -> 叔父に結婚を認められる。
第3幕 -> 顛末。
【感想】
本日の1本目は「ブロンド少女は過激に美しく」です。中高年を中心にかなりお客さんは入っていました。本作はご存じポルトガルの巨匠・マノエル・デ・オリヴェイラ監督の作品です。ここ20年ほどはかなり他作な上に本作撮影中に100歳の誕生日というちょっとどうかと思うほどの健在ぶりに、圧倒されるばかりです。
併映の「シャルロットとジュール」
最初に本作の話に行く前にTOHOシネマズ・シャンテで二本立てになっている「シャルロットとジュール」から書いてしまいましょう。といっても、さすがにジャン=リュック・ゴダール作品にどうこう言う根性は私にはございませんw
このシャルロットとジュールは1961年の作品でゴダールの4作目です。出て行った恋人・シャルロットがふらっと部屋に戻ってきたことで、ジャンが一方的に「いかにシャルロットが馬鹿か」と「いかに自分がシャルロットを愛しているか」をまくし立てるだけの10分くらいのフィルムです。とはいえ、この10分でジャンのマヌけっぷりと愚かしさを通じて恋する男の悲哀をストレートに描いたコメディとなっていまして、今でも十分に楽しめる傑作です。ゴダールの歴史的傑作「勝手にしやがれ」のクライテリオン版DVDに特典で入っていますので、興味のあるかたはこちらも見てみて下さい。
本作とのからみで言いますと、おそらく併映の理由はテーマ部分にあると思います。非常に乱暴に言ってしまえば、この「シャルロットとジュール」と「ブロンド少女は過激に美しく」は同じ話です。共に、恋に盲目的な男が”一方的に女性を理解した気になって”愛してしまった事の愚かしさを描きます。そういった意味ではゴダールが普遍的すぎるとも言えますしオリヴェイラが古風だとも言えるのですが、何にせよヘタレな男なら共感せずには見られないロマン溢れる題材なのは間違いありません。
本題
肝心の「ブロンド少女は過激に美しく」です。本作はフィルムグレインがたっぷり乗った古風な絵作りが真っ先に目を惹きます。音楽もほとんど使われませんし、何より極力セリフを廃した「映画らしい映画表現」のど真ん中を直球で攻めてきます。「映画らしい」という定義は難しいですが、そんな問題も本作を見ればすべて吹き飛ぶこと請け合いです。
ストーリー自体は前述したような悲恋話です。本作はそのストーリー部分もさることながら、風景を使った場面転換の仕方であったり、ほとんど固定カメラのようなかっちりした構図であったり、そういった映画としての圧倒的なまでの説得力=正しさが大変魅力的な作品です。なので、非常に教科書的と言いましょうか、優等生的と言いましょうか、ほとんど文化遺産レベルでの職人芸を堪能することができます。
こういう言い方をすると反発を招くかも知れませんが、本作を見れば映画のすばらしさは全部分かります。もちろん後述する「エクスペンタブルズ」でも全部分かるんですが(笑)、格調ある「文芸系作品」という意味ではほとんど上限レベルの作品ではないかと思います。
小規模な公開のされ方をしている作品ですので見るのは大変かも知れませんが、間違いなく一見の価値はあります。
是非是非映画館でご覧ください。いまどきゴダールを映画館で見られるだけでも駆けつける価値があります。