今日は
「SCOOP!」を見てきました。
評価:
– レオン風アイドルPV映画【あらすじ】
かつて優秀なカメラマンとして鳴らしていた都城静(みやこのじょう しずか)はいまやフリーの中年パパラッチ。芸能ネタを夜ごと撮り続け、ゴシップ週刊誌へ売って生活していた。ある日、かつての相棒で週刊誌「SCOOP!」の副編集長・定子から若手社員・野火(のび)の教育を頼まれる。いやいやながらも引き受けることになった静と野火のデコボコ・コンビは、スキャンダルを求め夜の街へ消えていく、、、。
【三幕構成】
第1幕 -> 静と野火の出会い
※第1ターニングポイント -> 野火初めての写真
第2幕 -> コンビの活躍と事件カメラマンへの復帰
※第2ターニングポイント -> 静と野火が関係を持つ
第3幕 -> チャラ源の暴走
【感想】
さて、今日は大根仁監督の最新作「SCOOP!」を見てきました。本作は「モテキの監督最新作」かつ「福山雅治の主演作」と結構なネームバリューでキャパ500の箱でしたが、3組4人しか観客がおらず、さすがにちょっと心配になってしまいました。初日が映画の日だったのでもう見たい人はだいたい見ちゃったのでしょうか。
ここで、いつものお約束です。私、この映画には不満タラタラです。なのでばんばんグチっていきたいと思います(笑)。結末にも普通に触れますので、未見の方はご遠慮ください。また、本作は1985年の「盗写 1/250秒」のリメイクということですが、すみません。私はこの元を見ておりませんのでこちらと絡めてどうこうは語れません。ご容赦ください。
レオンのパロディ
この映画には2本のスト―リーがあります。
1つ目は新人ゴシップ記者の野火の成長の物語です。野火は「この仕事マジ最悪ッスね」が口癖で、完全にパパラッチを見下しています。自分はおしゃれファッション雑誌のライターになりたかったのに、人事異動でゴシップ誌に回されてしまったと不満タラタラです。ところが、ベテランである静と行動を共にすることで、徐々にその「一瞬のチャンスをものにするために頑張り続ける」というパパラッチの仕事にやりがいを見つけていきます。
もう一つはくすぶっているベテラン・静の尊厳回復話です。静はかつて”高尚な”事件担当のカメラマンとして活躍していました。ところが「チャラ源が関係する何らかの事件」のために会社を辞め、フリーの”低俗”パパラッチに身をヤツします。そこに純真な新人の野火がやってくるわけです。静は野火の「私も事件担当をしてみたい」という熱意に押され、”高尚な”事件担当への復帰を決めます。
さて、この2つが組み合わさるということで、これはもうどこからどうみてもリュック・ベッソンの「レオン(1994)」です。「盗写 1/250秒(1985)」をレオン風にアレンジしたのか、たまたま「盗写 1/250秒」がレオンと同じ話だったのかはわかりませんが、意識しているのは間違いありません。ここからは、「でもこれ全然出来てないじゃん」というグチを綴っていこうと思います(笑)。
てんこ盛りのグチ
一番の不満は「芸能パパラッチの扱い」です。上記の2つのストーリー紹介を見ていただくとわかるように、本作における「パパラッチ」の扱いはすごい適当です。一方では「やりがいがあり達成感のある仕事」として描かれ、一方では「低俗で中年になってまでやる価値のない仕事」としても描かれます。特にがっかりくるのが、このアンビバレントに主人公格の静が陥っているからなんですね。そこは嘘でもいいから「パパラッチにだってやりがいがあるんだよ!」っていうのを見せてほしいんです。「ゴキブリかドブネズミ以下なんだよ!」っていうのを本心でいわれちゃ形無しっていうね、、、。
例えば、「レオン」ではジャン・レノ扮するレオンは殺し屋としては超優秀ですが、学がなく文字も読めません。その一方でナタリー・ポートマン扮するマチルダは、文字は読めるが家族の復讐をする力がありません。この2人は完全に相互補完できるんですね。だからこそ、物凄い年齢差がありながらもそこに純愛が生まれるわけです。
では本作はどうかというと、静には写真を撮る経験と策略があり、野火には「高尚なことをしたい」という情熱があります。ここで補完していると言えなくはないのですが、そうすると前述の「結局野火はパパラッチを見下しているのか?」という部分に戻ってしまいます。
これは結構深刻な問題です。劇中でも2人の編集長の「週刊誌SCOOP!はどうあるべきか」という意見対立で表現されています。片や「SCOOP!はゴシップ誌であり、ラーメンやグラビアやスキャンダルなどの低俗なものを載せるんだ」というもの。(※余談ですがラーメンがとばっちりを食らってるのはちょっとカチンときます(笑)。)片や「SCOOP!だって高級雑誌には出来ないゲリラ的な方法で事件のスクープ写真を撮れるんだ」というもの。どっちにしても事件スクープと芸能ゴシップに明確な格差があるように描かれ、そこを否定した馬場が敗れてしまいます。
そして最終的には、静が実は事件カメラマンであり、マスコミの中でもっとも高尚である(とされる)「戦場カメラマン」に憧れていたという話にまで発展します。静自身もはっきりとパパラッチを見下しまくってるんですね。そうすると、そもそも芸能ゴシップの楽しさを理解して良きパートナーとなっていた野火の立場はどうなるんだという話があり、じゃあもう前半の芸能ゴシップ文脈がまるまるいらないんじゃないかと言う話になります。あくまでも「実力のある静が低俗な中年パパラッチに身をやつして己を戒めていた」ってな具合なんですね。そんなの「バットマン・ビギンズ(2005)」だったら開始30分で終わらせてるところじゃねぇかと。たぶん本作でやりたかったのは「露悪的だけど魅力的で実力もあるダークヒーロー」だと思うんですね。文句ばっか言っててゲスいけど、やる時はやる男。それが同一作品の後半で前半を全否定するという、、、さすがにどうなんでしょうね。
さらに言えば、この映画全体が顔のどアップとセリフで全部説明するタイプのテレビドラマ演出であり、しかも三幕というよりは前半後半でガラっと話が変わります。ですから、あきらかに不法なカーチェイスをやってるのにその件が何のお咎めも無いのは良いのかとか、バレバレの大砲を構えてるのに静だけ捕まって野火が逃げられた意味がわからんとか、最後娘だけ助けて自分は残った意味がわからんとか(※結果チャラ源の罪が重くなってるし)、そういうのは「どうせテレビドラマ調の映画だし」で割り切るしかありません。
良かった所:リリー・フランキー
グチばっかりもなんなので良かった所に行きましょう。なにせ一番いいのはリリー・フランキーです。というか全部持って行き過ぎ(笑)。殴り込みしかり最終盤しかり。もともと胡散臭いおっさん役が多いんですが、本作では輪をかけて怪しくなっておりとても魅力的に描かれます。これは大当たりです。一方の福山雅治は、良くも悪くももいつものアイドル要素が消せてません。静はもっとゲスいキャラじゃないとストーリーが成立しないんですが、なんかこうお上品になっちゃうんですね。これも彼のオーラの賜物なのか、それとも単に演技がアレなのか意見が別れる所です。
この映画自体がレオンを通って最終的には「ゲスいけど格好いい男の生き様/みんなが憧れる男の背中」という所に行くので、そういう意味では正しく福山雅治のプロモーションビデオです。ですから、福山雅治さえ格好良ければストーリーはどうでもいいって話はあります。
【まとめ】
穿った見方をすると、本作は福山雅治の「脱・アイドル化」を狙った企画ものです。リアルで結婚したし、もうアイドルって売り方でも無いだろうと。そのイメージチェンジとしての「ゲスいカメラマン」役なわけですが、結果としては「ゲスなはずなのに全然ゲスに見えない」という微妙なところに着地しています(笑)。正直これを見るならオリジナルのレオンを見たほうが手堅いですが、福山雅治ファンなら見ておいたほうが良いと思います。確かにいままでの映画の福山雅治よりは雰囲気が格好いいです。どっちかというとテレビドラマの福山ファンよりはオールナイトニッポンのファンでしょうか(笑)。