2本目はイラン映画の
「彼女が消えた浜辺」です。
評価:
– 文芸系作品の傑作。【あらすじ】
大学時代の友人達は家族集まって夏休みの旅行に出かける。ドイツから離婚したばかりで帰国したアーマドのために、セビデーは子供が通う保育園で働く保育士のエリを誘う、、、。
【感想】
今日の2本目はベルリン国際の監督賞を受賞した「彼女の消えた浜辺」です。こちらも年配の方を中心に結構お客さんが入っていました。
話の内容は至ってシンプルです。仲間内の旅行に一人だけ友達でない「異物」が誘われ、その女性がいなくなってしまったことに端を発してどんどん個々人のエゴが噴出していきます。サスペンス仕立てではあるものの、本作でエリがどうなったかはまったく重要ではありませんし、そこに論点があるわけではありません。大切なのは、「旅行に誘った良く知らない人が行方不明になってしまった」という何ともし難い状況に放り込まれた人間達が、どんどん本心をさらけ出してしまうというその人間模様です。ある者は責任を感じ、ある者はストレスに耐えきれずにヒステリーを起こし、ある者は事件そのものをもみ消そうとします。そしてそれが終盤に判明する重要な真実によって、イスラム教の信仰そのものを揺るがすような事態へと発展していきます。
イラン映画の割にというと失礼ですが、かなり普通に良く出来た文芸作品だと思います。それこそゾンビ映画とかディストピアSFで描くような「極限状態においてあぶり出される人間の本質」みたいなものをかなりストレートに描いています。もっとも、厳格なイスラム社会だからこその「極限状態」ではあるので、そこがどれほど「極限」なのかは理解しづらい部分かも知れません、しかし、そんな文化差を差し引いても、大変すばらしい作品だと思います。
公開規模は小さいですが、絶対に押さえて置いた方が良い作品だと思います。かなりオススメです。