おととい「BANDAGE」を見てきました。
昨日書く時間がなかったので、ちょっとずれてしまいました。
評価:
– 自主制作映画なら絶賛してたかも知れません。【あらすじ】
高校生のアサコは親友のミハルからLANDSというインディバンドのCDをもらう。その後すっかり気に入ったLANDSのライブに出かけたアサコは打ち上げに潜り込み、あろうことかボーカルのナツにナンパされてしまう。いろいろあってアサコは音楽事務所に就職し、LANDSに関わっていくようになる、、、。
【感想】
妄想とファンタジーに彩られた青春映画の王道的な作品だと思います。
レイトショーで見たんですが、観客は20人ぐらいで私以外は皆女性でした。終わった後にギャルっぽい3人組が「なにこれ!?ラブストーリーじゃないし、、、よくわかんない。」と言っていたのがとても印象的です。「ゆとりって怖~い」とか思ってしまいました、、、あんまり年齢変わらないと思うんですが、妙に老け込みます(笑。
基本的なストーリーについて
ギャルの方々は脇に置いておいて(笑)、ストーリー部分については非常に分かり易いです。要はアサコという平凡な女子高生が、大好きなアイドルと個人的な知り合いになって、ついには仕事でも関わるようになるけど挫折を味わって成長する話です。非常にシンプルな青春作品です。そしていうなればジャニーズ・ファンの女性の妄想の映像化でもあるわけです。
スノープリンスをボロカスに書いたので私はアンチ・ジャニーズかと思われているかも知れませんが、単に興味ないので一般俳優として評価してしまうだけなんです。そんな私から見ても、本作のファン妄想はそこまで気持ち悪い感じはしません。おそらく北乃きいが頑張っているのがすごく伝わってくるためだと思います。妄想は多いに結構じゃないですか。よく言えばナチュラルで悪く言えば超大根な赤西仁の演技も、少なくとも本作のトーンには合っています。下手だとは思いますが酷いとは思いません。クライマックスがちょっと唐突すぎる気もしますが、「青春なんだからそんなもん」という気もしまして、そこまで違和感なく楽しめました。ストーリーは結構良いです。
演出・映像について
問題はこの映像表現についてです。終始ホームビデオのようにグラグラ揺れる映像は、正直気持ちが悪くなってくると共にイライラします。要は「現実世界と地続きな作品世界」を表現するための偽ドキュメンタリーテイストを出すためなのですが、それにしても揺れすぎ。すごくオッサン臭いカット割りも含めて、非常に素人っぽい作りになっています。なので、本作はどっからどう見てもインディ映画に見えます。でも実際はジャニーズと日テレの結構お金を掛けた映画なわけです。これは良くも悪くも岩井俊二色なんですが少し気になります。でも本作の凄いところは、その「演出の下手さ」と「90年代という”ちょっと前のダサさ”」が見事に混同出来ることです。つまりわざとダサくしてるようにも見える(笑)。意図してるかどうかは分かりませんが、プロデューサーのグッドキャストだと思います。
本作の掲げる音楽問題について
演出面ではガタガタですが、やはり小林武史は音楽の人です。本作の中でも、彼のバンド観であったり音楽観が出てきます。ステレオタイプ過ぎる気もしますが、でもすごくシンプルに表現していて非常に好感が持てました。
本作の中盤にLANDSが直面する問題はロックファンの間では当たり前に言われていることです。最近ですと「OASIS問題」というヤツです。
OASISというバンドは皆さん大方がご存じのようにイギリスの超人気ロックバンドです。彼らは最初期には音響音楽としてのロックを追求していたんですが、後に大衆歌謡曲に路線変更します。この時にバンドメンバーのインタビューやファンコミュで論争が合ったわけです。一方では「音楽は芸術なんだからストイックに質を追求して欲しい」というファンが居て、でもその一方で「みんなに聞いてもらえる曲を作って有名になって欲しい/大金持ちになりたい」という感情もあるわけです。どちらも正しいことだと思います。これはロックバンドが潜在的に持っている普遍的な問題です。それはひとえに、ロックがポップスと親和性が高すぎるためです。極端な話「チャート1位が狙えるんだから、曲の質を捨てでも1位を獲りに行く」という誘惑は常にロックバンドにはつきまとっていると言えます。そこで獲りに行く人も入れば、いわゆるメジャーを離れて独自路線を突き進む人も居ます。前者がOASISであり後者がSONIC YOUTHだったりするわけです。
(この辺の音楽について興味のある方は、私の敬愛する大友良英さんのHP「JAMJAM日記、別冊 連載「聴く」」を是非ご一読下さい。)
本作のLANDSにおいては、音響派のユキヤとアルミがトラックメイカーを担い人気より質を優先しようとします。一方マネージャーのユカリは売れることを最優先します。別にどっちも正しいわけで、その間で若いバンドメンバー達が苦悩します。とてもステレオタイプでありがちな話ですが、それだけに見入ってしまいました。やはり小林武史という偉大な「歌謡曲メイカー」に語られると背筋も伸びるってもんです。
ただ、、、その割にとか言っちゃいけないんですが、、、肝心のメインテーマソング「BANDAGE」の質はちょっとどうなんでしょう?
これって劇中では「LANDSの原点」であり「質が良くって評判になった」曲のはずなんです。
そんな2010年になってテイラー・デインのパクリ聞かされても、、、ねぇ(苦笑)。そりゃ小林監督にとっては青春の曲かも知れませんが、、、テーマを考えても、もっと他にパクれるバンドがあったでしょうに。それこそOASISでもいいし、Blurでもいいし、なんならgarbageでも。いくらでも「質と人気」の天秤で「質」から「人気」に転向した人いるのに(苦笑)。それともLANDSがテイラー・デインと同じ「一発屋」であることの暗喩なんでしょうか(笑)?
【まとめ】
ネット上では割と賛否が分かれているようですが、私はかなり楽しめました。なかなか良い青春映画だと思います。出てくる女性達がみんな元気ですし小林監督の女性の趣味が良くわかります。裏テーマでもある不倫とかも含めてですね(笑)。DVDが出たらたぶんレンタルでもう一回見ると思います。
見る前はジャニーズファン専用のアイドル映画かと思っていたんですが、なかなか良いですよ。オススメです。