今日の2本目はダニー・ボイルの新作
「127時間」をみました。
評価:
– ソリッド・シチュエーションの佳作。【あらすじ】
アーロン・ラルストンは登山道具屋の店員である。ある金曜の夜、彼はユタ州のブルー・ジョン・キャニオンに趣味のハイキングをしに向かう。途中で旅行中の女性達とも出会ったりしながら、彼はいつものコースを悠々と散策していく。
しかしそんなとき彼は岩の隙間に落っこちてしまう。しかも大きな岩に右腕を挟んでしまった。周りを人が通りかかるような場所でもなく、食料も水もわずかしかない。果たして彼は生還することができるのだろうか、、、。
【感想】
今日の2本目は前作「スラムドッグ・ミリオネア」でアカデミー賞を獲ったダニー・ボイルの新作「127時間」です。アカデミー賞効果なのか、結構中高年の夫婦が見に来ていました。本作は2003年に実際に起きた事故を元にしたアーロン・ラルストンの自伝「Between a Rock and a Hard Place」の映画化です。
あんまり書きたいことが少ない映画なのでさらっと流させていただきます。本作は昨年公開されたソリッド・シチュエーション・スリラーの「リミット」と同様に動けない人物が延々とそのシチュエーションでもがく姿が描かれます。通常のソリッド・シチュエーション・スリラーでは脱出しようとする努力が中心となりますが、本作においてはアーロンはあまりその努力はしません。どちらかというと精神的なものが中心になります。作品の大半は妄想や回想が中心で、この極限状況で彼が心の底から求めているのは何かというのが段々と明らかになっていきます。ヒューマンドラマですので当然のように結論は「愛」なんですが、そこに至るまでの過程がリアリティがあるといいますか(※実話なのであたりまえですが)、とても面白くできています。
最初の内は食料だったり水だったり性欲だったりするものが、だんだん職場の仲間や家族になっていき、最後は好きな女性になります。そしてある決定的な未練を思い出すことで彼はタフな決断を下します。本作は「極限状態を描くことで人間の本質が見える」というソリッド・シチュエーション・スリラーの王道をきっちりと描いています。ですから、なかなか面白い作品です。主演のジェームズ・フランコは本当にすばらしかったです。前半のいかにもチャラい感じから一転してどんどんシリアスになっていく過程は、彼のタレ目な困り顔があればこそです。
多少不満があるとすれば、中盤に中だるみしてしまう部分と最後に決断を下すところのわかりづらさ、そしてクライマックス以降のエピローグの長さです。大変よくわかるんですが、脱出後のラスト数分でなんぼなんでも水を飲みすぎですw あとはカメラのカット割りのしつこさでしょうか。シチュエーションは固定されているのに、カメラだけはやたらとダイナミックに動きます。さすがに岩の割れ目を空撮で撮られたりサム・ライミばりにシェイキー・カムで早回しされると、どうもちょっと悪ふざけしているように見えてしまいます。
総じて面白いかどうかと言われれば間違いなく面白い作品ですので、是非映画館に見に行って下さい。ちょっとショックシーンもありますがそこまではキつくありませんので、どうしても苦手な方以外は大丈夫だと思います。オススメです。