今日も2本見てきました。ちょっと風邪気味で朦朧としてしまいましたがそれはそれ(笑
1本目は「かいじゅうたちのいるところ」です。
評価:
– どうした?スパイク・ジョーンズ!!!【三幕構成】
第1幕 -> マックスの日常。または彼の家庭環境。
※第1ターニングポイント -> マックスが不思議な島に着く
第2幕 -> キング・マックス。
※第2ターニングポイント -> キャロルの怒り
第3幕 -> マックスが家に帰る
【あらすじ】
マックスは姉と母との3人暮らし。ある日、母親と喧嘩をしたマックスは近くの港にあったボートを盗んで沖へと出てしまう。嵐に巻き込まれながら見知らぬ島に漂着したマックスは、そこで不思議な怪獣達に出会う。怪獣達に襲われそうになたマックスは、つい「自分はこの世界の王様だ」と嘘をついてしまう。こうしてマックスと怪獣達の楽しい生活が始まった、、、。
【感想】
さてさて、昨年の秋頃から予告編を飽きるほど見させられてきたスパイク・ジョーンズの新作「かいじゅうたちのいるところ」です。原作はもちろんモーリス・センダックの大ベストセラー絵本。一風変わった「かいじゅうたち(The Wild Things = 野生のなにか)」と少年の交流を描いた感動大作、、、かと思いきや、、、なんじゃこれ。
ともかく「ウザい子供」と良い感じに「”癒し系”な怪獣達」とのギャップが凄まじく、なんか人間嫌いになりそうです。
本作の話を始める前に大前提としてお断りが必要です。本作の監督スパイク・ジョーンズは「映像作家」として一時代を築き上げた巨匠です。そして私も大ファンです。私が彼の名前を知ったのは、忘れもしないあるNIKEのCMです。それはサンフランシスコの交差点でゲリラ撮影された、アガシとサンプラスという当時の男子テニスの2大スターによる「街角テニス」の映像です。もし見たことのない方は、こちらのYouTubeをご覧下さい。この圧倒的なまでのハイテンションと多幸感が強く印象に残っています。当時中学生で広告代理店なんて知らなかった私に、CMも一つの作品になりうると気づかせてくれて、映像表現に興味をもつきっかけになった思い出の作品です。
だからジョーンズが初めて映画を撮ると聞いたとき、友達を無理矢理誘って一緒に見に行きました。それが「マルコビッチの穴」です。奇抜というにはあまりに馬鹿馬鹿しいアイデアとそれを加速させる変態的なストーリーで、初監督作品とは思えない才能を見せつけられる超傑作でした。
それから10年、、、もはやスパイク・ジョーンズといえば「ソフィア・コッポラの元旦那」「おバカ・コメディ映画の監督」といった認識が一般的になっています。
でもですね、、、私の世代(1980年代生まれ)にとっては、やっぱりスパイク・ジョーンズは「映像作家」なんです。30秒に魂を込める職人であり、セリフなしで物語を伝える天才なんです。
物語の基本プロット
本作の物語のプロットは非常に分かりやすい「行って帰ってくる話」です。このブログで取り上げた近作ですと、「ティンカー・ベルと月の石」「カールじいさんの空飛ぶ家」なんかと同じです。主人公が現在の環境に悩み・不満を持って余所へ旅に「行って」、別の世界で様々な体験をして成長して「帰ってくる」話です。
本作のマックスは姉や母親に構ってもらえません。一方怪獣達の所では彼は王様として振る舞いみんな何でも言うことを聞いてくれます。そこでマックスは好き放題やるわけですが、やがて挫折を味わいます。
至ってシンプルで何の変哲もないオーソドックスなストーリーです。
本作で決定的にがっかりなのは、結局マックスが成長しないことです。本当にただ「行って帰ってきた」だけでその中においてマックスに変化がありません。「ワガママの限りを尽くしたマックスが挫折を知った」ところで話が終わってしまい、そこから何を学んだかが分かりません。そのため、マックスがただただ自分勝手でどうしようも無いガキにしか見えません。
特に中盤かいじゅうたちにある遊びを提案するんですが、そのときの一言にどん引きします。「お互い殺し合え!!!」ですよ。さすがにこれは無いです。
デザインについて
ということでストーリーはかなり微妙ですが、一方でかいじゅうたちのデザインは本当に素晴らしいです。昔ながらの着ぐるみとCGを融合させた表現は秀逸の一言です。センダックのちょっとグロい感じのデザインが良い感じに柔らかくなっていて、キモカワイさが前面にでた格好です。さすがはジム・ヘンソン・クリーチャー・ショップの仕事です。
年柄もなくぬいぐるみが出たら欲しいぐらいです。
余談ですが、今「ジムヘンソンのストーリーテラー」を見ながらこの文章を書いてます。話の構成もさることながら、マペットの犬が超カワイくって物凄く面白いです。
また、画面構成も好印象です。相変わらず流行のグラグラ手持ちカメラは健在ですが、一方でそこまで分かりづらい構図も少なく、良いバランスです。
やはりスパイク・ジョーンズの能力は映像の作りにあると再認識しました。ちょっと信者補正は入ってます(笑)。
【まとめ】
肝心の話の部分が微妙でいまいち盛り上がらない作品でした。あまり道徳的な部分が余りませんので、正直なところファミリー映画としても少々どうかと思います。
あまり万人にお勧めできる内容ではないですが、個人的にはDVDレンタルが始まったらもう一回見たい作品ではあります。それほどまでに、人形の造形が良くできています。
ジム・ヘンソンと聞いてピンとくるような人形劇好きの方にはオススメです!