エイプリルフールだったけどこれだけはガチです。
「ランウェイ☆ビート」でも食らえ!!!!!
評価:
– 美糸(びいと)って名前、ホストの源氏名?【あらすじ】
東京下町の月島高校に通う塚本芽衣は平凡な生活を送っていた。クラスメイトには引きこもりの留年生がいたり、ヤンキーがいたり、大人気のティーンモデルがいたりする。ある日文化祭の出し物を企画していると、昨年と同じくモデル・美姫を大フィーチャーしたファッションショーに決まる。しかし美姫はそれだけではつまらないといい、みんながオリジナルのデザインを持ち寄り自分が気に入るものがあれば、自身の持つファッション雑誌の連載で紹介すると約束する。張り切るクラスメイト達だったがなかなか気に入るデザイン画は書けない。そんなとき、やってきた転校生・溝呂木美糸がいじめられっ子の引きこもり留年生・犬田悟を一晩でイケメンにプロデュースし、さらには素晴らしい出来のデザイン画を複数点見せつける。なんと美糸は有名ファッションブランド・スタイルジャパンの社長の息子だったのだ。そんな美糸の元にクラスメイト達は一致団結する、、、。
【感想】
4月1日、映画の日は「ランウェイ☆ビート」を見ました。先々週末公開の松竹/TBS映画ですが、震災の影響で得意のごり押し地上波宣伝が出来ず興行的にはかなり悲惨な事になっています。今日も客席は7人しかいませんでした。1,000円なのに、です。
さて、本作は根本的な部分が駄目すぎます。大きく分けると2つの要素で絶望的に失敗しています。1つは「ダサい」こと。もう1つは「話しがぎこちない」こと。それぞれについて詳しく書いていきたいと思います。
ということで、今回はネタバレをガンガン含めて書きます。公開後2週間経ってますので大丈夫だとは思いますが、もし万が一見に行く気がある方はいますぐブラウザを閉じて下さい。もっとも、本作は話しをネタバレされたからと言ってどうこうなる映画ではありません。話しなんぞ予告である程度分かってますから。そんなことよりも、この作品は細かいディティールが酷い事になっています。
絶望を感じる所その1: ダサい
一言で「ダサい」と言っても、本作には2種類のダサさが入り交じっています。そしてその2種類は切っても切り離せない関係にあります。
本作が始まってすぐ、3~4分ぐらいでしょうか、、、月島商店街での人物紹介シーンがあります。なんてことはないシーンなんですが、ここで頭をハンマーでぶん殴られるような強烈な衝撃を受けます。というのも、いわゆる「コマ落ちエフェクト」が入るんです。急に一時停止して、2~3秒飛ぶものです。どんびきするほどのダサさです。そう、ダサさの1種類目は「演出のダサさ」です。これは最初から最後まで随所で見られます。私もついうっかり使ってしまう言葉なのですが、「ポップ/POP」という単語は非常に危険です。一般的には「ポピュラー/大衆的」の略語ですが、和製英語として特に創作畑では「かわいい/いまどき」みたいな意味で使われることがあります。おそらくですが、本作の演出面でのキーワードはこの「ポップ」だと思います。何故かと言いますと、本作での演出はすべて「スカしたハズシ」を意図されているからです。息抜き的な意味で、あえて少しダサいことをしているという空気をビンビン出してきます。これは大谷健太郎監督の過去作「NANA」「NANA2」でも見られた現象です。直近の「ジーン・ワルツ」では直球でダサかっただけ好感が持てたのですが(苦笑)、本作の様に小細工をしようとして失敗していると見るに堪えません。特にもっとも気になるのは、やはりクライマックスのファッションショーに挟まれる観客席からのカメラ映像です。クライマックスのファッションショーは爆笑ポイントの連続でそれはそれは愉快なシーンなのですが、なんと観客席からのハンディカメラ映像(たぶんSONYのHDハンディカム)に光量不足でデジタルノイズが入っていますw
フィルムから見る限り、最後のファッションショーはある程度進行も実際にやっていると思います。実際にファッションショー・イベントを通しでやって、それを映しています。そうすると当然撮影用のライトを最適化できません。かなり暗い客席から少し明るいランウェイをハンディカメラで撮っても上手くは撮れません。本作ではその失敗した映像をポスプロ段階で白黒レベルをカチ上げることで明るくしようとしています。そこでカチ上げすぎたため、デジタルノイズが乗っちゃっているんです。撮り直せって話しなんですが、そんな失敗映像を入れているということは、これは監督の意図としては「ハズシ」であり「実在感の表現」だっていう事です。
実は超直近で同じ演出を試みている作品があります。「ザ・ファイター」です。「ザ・ファイター」では試合のシーンになると突然画面の解像度が落ちわざとインターレースの映像になります。輪郭にシャギがかかる映像で、テレビの放送波で使われる形式です。これはまさしく実在感の表現であり、テレビ中継の映像を再現することで実際の出来事のように見せる演出です。まぁ「ザ・ファイター」の場合は多分に「ロッキー・ザ・ファイナル」へのオマージュではありますけれど。
なぜ同じことを意図し同じ手法をとりながらこんな悲惨なまでに開きができるのでしょうか? 演出力っちゃあそれまでですが、それはやっぱり真面目さだと思います。つまり、実在感の表現としてなぜハンディカメラを使うのかという大元の部分です。「ザ・ファイター」だったらテレビ放送を真似するため。「ロッキー・ザ・ファイナル」だったらリングの中の視点で臨場感をだすため。「レスラー」だったらドキュメンタリー調にするため。でも本作にはその根拠がありません。「なんとなくハンディカメラを使っとけば本当っぽくみえるだろ?」っていう短絡的で上っ面だけの演出です。映画監督は映像作家でありクリエイターなんだから最低限の頭は使ってください。
ちょっと長くなりすぎました。2種類目のダサさに行きます。これはもう文字通りの見たまんま。そもそも服装がダサいです。
Twitterでは面白おかしく「ロディ・パイパーっぽい」と書きましたが、これは決して大袈裟ではありません。主役のビートはデザイナーとは思えないほどいつもワンパターンの服装をしています。トップスはワイシャツに大きめのレザーブルゾン/革ジャン。右手首には驚くべき事に星柄の皮のベルトをブレスレットのように常に付けています。たとえ制服であってもです。先生は没取しろ。ボトムスはジーンズないしチノパンの上から、常に青か赤のタータンチェックのスカートを穿いています。足下はコンバースのハイカットか革ブーツ。レザーじゃなくキャンバス地です。このパターンをずっーーーーーーと着続けます。以下参考画像です。
↑ こちらランウェイ☆ビートの舞台挨拶。真ん中がビート。
↑ こちら往年の名レスラー。”ラウディ”ロディ・パイパー。
「格好良い」タイプではなく、スコットランドからきた飲んだくれというキャラです。
瓜二つです。すごい相似形w でもやっぱパイパーのが渋くて格好良いです。
作中ではビートは「おしゃれさん」で通っているわけです。意味が分かりません。おしゃれではないでしょ、これ。舞台挨拶の衣装なんて本当にコスプレっていうか役者が可哀想。完全に羞恥プレイです。やっぱり本作で一番オシャレなのは田辺誠一演じるお父さんです。彼は常に細身のスーツを着ていてシンプルで格好良いです。一方でビート側の「格好よさ」表現っていうのは、すごくゴテゴテしたものを付けていくやり方なんです。顕著なのは劇中でのワンダの変身です。類型的なオタク・ひきこもりとして登場するワンダは、髪を切って服装を変えることでイケメンとして生まれ変わり、性格まで明るくなり、ついには超人気モデル美姫の恋仲になります。大出世なのですが、彼のイメチェン時の服装は正直無理です。というのも、このワンダ変身後の服装は、ベルトを多用して、革のブーツにデザインYシャツという「渋谷に昔居た勘違いしたヤンキー高校生」そのものなんです。一目見ただけで痛々しさが伝わってくるんですが、劇中では女性陣がみんな見とれてしまいます。こういったセンスにものすごいギャップを感じます。私ももう歳なんでしょうか、、、。
また、中盤でビートのデザインがワールド・モードに盗用されるというイベントがあります。この時の衣装もそんなにみんな騒ぐほど可愛いかが全然ピンときません。たしかに桐谷美玲が可愛いのは間違いないですが、特にパクッたワールド・モードの服はかなりダサいと思います。星いっぱい付けた真っ赤なタイトシャツって、、、小学生のお絵かきじゃないんだから。
ファッションに疎い私が無いセンスを振り絞って考えたんですが(苦笑)、たぶんこれってそもそも「オシャレ」ってものを考えるときのポイントのズレなんだと思います。私なんかが「オシャレ」を考えると、一番最初に気になるのは「シルエット」なんです。例えばボトムスだったら、パイプドなのかテーパーしてるのかとか、太めなのか細めなのかとか。トップスも同じで、細身なのか余裕があるのかとか、シャツの襟の形であるとか、そういうところです。でもこの作品内での価値観は明らかにシルエットではなく装飾なんです。ベルトが一杯あるかとか、星が一杯付いてるかとか、そういうゴテゴテしたオーバーカロリーな感じです。個人的にはそれってジャンクフードに通じるセンスだと思うんですが、でもこの辺は個人差があると思うので一概に否定は出来ません。
唯一言えるのは、「ビートのデザイン・センス」は劇中内での扱いほど万人に受けるすごいものでは無いってことです。
絶望を感じる所その2: 話しの進め方がぎこちない
すでに書き始めてから2時間経過して4600字を突破したのでちょっと先を急ぎますw
本作で絶望的なのはダサさだけではありません。話しの運びも本当にキてます。
Twitterでハナミズキを引き合いに出したのは、実は本作もハナミズキと同様に映画の構成ではなくテレビドラマのフォーマットを垂れ流しているからです。ハナミズキ同様に本作は全5話です。
第一話「転校生ビートとワンダのイメチェン」
第二話「文化祭やるぞ!!!!」
第三話「ミキティの裏切り / 父との和解」
第四話「プロジェクト・ランウェイ・ビートとワールドモードの妨害」
第五話「ファッションショー本番」
しかも本作の問題はフォーマットだけではありません。イベントの進め方にも大きな問題があります。本作では何回か大きなイベントがあります。しかしその一つ一つのエピソードがその後にほとんど影響を与えません。極端な事を言えば、ミキティの裏切り・ワールドモードのパクリのあたりはエピソード自体を丸々削除しても全体に影響がありません。その後のワールドモードの妨害の話しも、大勢に影響がありません。だって、本来この話しは「学校の文化祭でファッション・ショーをやろう!」っていう物なんです。だから、実は本作を整理すると15分ぐらいに収まります。
本作のストーリーには大きく2つの柱があります。1つはファッション・ショーの企画を通じて語られる父と子の和解の話しです。こちらはベタベタで安っぽいもののそれなりにまとめてきています。父を憎んでいた息子が父の思いを知ることで和解し、やがて父と同じ境遇を経験し乗り越えることで成長します。しかし、全体尺の半分ぐらいにはもう父子が和解してしまうため、いまいち興味が続きません。後半は結構どうでも良くなってきます。
もう1つは忍ぶ恋の話し。こちらは「主役(のはずの)塚本芽衣がビートに惚れてしまうがビートにはすでに恋人がいる」という片思いの話しです。こちらも描写がかなり適当で、「ここで惚れたな」っていうポイントが無いまま唐突に好きとか言い出すのでかなりどうでも良いことになっています。しかもわざわざ同じ境遇としてミナミを出してくるあたりも小賢しいです。だってミナミとビート父とビート母の三角関係がまったく同じ構図のまま子供に引き継がれるってそれはちょっと適当過ぎるでしょ。しかも同じイベントの同じタイミングで同じように緊急手術とか、、、これがいわゆる「天丼ギャグ」って奴です。どんなに真面目にやっていても繰り返されると笑いに転化してしまうという恐ろしい現象です。
先ほどもちょろっと出ましたが、これが本作を語る上での2つめのキーワードです。「小賢しい/小手先」。いかにも「企画会議で一生懸命練りました!!!」っていう上っ面だけの人物配置。このいかにもな「やっつけ感」が本作を極めて不愉快で見ていて腹が立つものにしています。それが最高潮になるのがラストのファッション・ショーです。これはもう是非映像でご自身の目で見て下さい。あまりの破壊力に爆笑必至です。でも本来ここって笑われてはいけない場面です。しかし劇中内の観客の少なさもあいまって非常にシュールなコント空間になってしまっています。
【まとめ】
話しダメ、演出ダメ、音楽ダサイ、俳優大根、とかなり極まった作品です。唯一の救いは桐谷美玲の可愛さですが、でも本当にそれだけ。しかもキャラクターの魅力ではなく単に顔が可愛いってだけです。ですから本作を映画館で見る必要は万に一つもありません。どうしても気になる方はレンタルDVDで十分です。
ただやっぱりここまで完成度の低い作品というのもなかなか見られませんので、記念にはなるかと思います。ご自身の忍耐力を試したい、またはゆったりとした空間でポップコーンを食べてウトウトしたいという方にのみオススメです!!!
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