パラノーマル・アクティビティ2

パラノーマル・アクティビティ2

土曜の2本目は懲りずに

パラノーマル・アクティビティ2」を観てみました。

評価:(4/100点) – 前作より悪化しとるやないか!!!


【あらすじ】

ダン・レイの再婚した妻・クリスティは息子・ハンターを授かった。最初の妻との娘・アリとの四人家族で暮らすダンは幸福な子育てをしていく。ハンターが育ってきたある日、ダンの家では奇っ怪な現象が起こり始める、、、、。


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【感想】

土曜の2本目は「パラノーマル・アクティビティ2」です。「パラノーマル・アクティビティ」シリーズはこの一年で3本目ですが、若い学生中心で大変入っていました。いかにも普段映画を見ていないというような客層でしたので、アトラクション的な目当てのお客さんでしょうか。予告が始まっても携帯電話で話してる奴とか、本編始まってもずっ~と雑談している奴とか、最近はなかなか見ないくらいのモラルの低さですw まぁ配給会社からすれば本作のメインターゲットは間違いなく彼らでしょうから、そういう意味ではど真ん中にきちんと届いているのではないでしょうか?
駄目な点は「パラノーマル・アクティビティ」「パラノーマル・アクティビティ第二章/TOKYO NIGHT」と一緒ですからそちらを見ていただくとして、本作ではさらにそこから悪化していますw
前作からの決定的な違いは、ついにカメラが複数の防犯カメラになった点です。もはやフェイクドキュメンタリーとしてハンディカムを持つという体裁が崩壊していますw 複数の固定カメラで庭やら居間やら寝室やら玄関やらを撮った結果、明確に制作者の意図がでてしまっています。冷静に考えてみて下さい。ある家があってその各部屋に固定カメラがあるという状況は、これそのまんま撮影所のセットとカメラの関係そのものですw
なのでカメラが切り替わればそれは普通の映画の編集と同じ事なので、なにかあるに決まってます。コレに合わせて相変わらず「ブーーーーン」という重低音で「いくよ、いくよ、いくよ、いくよ、、、、、、ガシャーン!!! キャーーーー!!!!」という馬鹿の一つ覚えを続けてきますので、どんどんどうでも良くなっていきます。無駄に前作との関係を持たせようとしていますが、ファンサービスにすらなっていないような適当な設定なので気にしない方が良いです。しかも、本作で前作でケイティが呪われている理由を提示してしまった結果、このシリーズが「特殊な姉妹の特殊な話」になってしまいました。Jホラーでは状況を限りなく一般化することで、観客の身にも起こるかも知れないという恐怖を見せます。ところが、本作によってこのシリーズは「特殊な人の話」になってしまいましたから、全然怖くありません。前作も怖くは無かったですが、それに重ねて本作は前作のかろうじてあった設定すらぶちこわしています。
本作で唯一の救いは前作では顔が残念だった被写体に若い女の子(=アリ)が追加されたことです。逆に言うと、それ以外はどこも進歩がありません。見た方が悪いので、無かったことにしましょう。

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ジェニファーズ・ボディ

ジェニファーズ・ボディ

今月の映画の日は一本、

「ジェニファーズ・ボディ」を見ました。

評価:(35/100点) – ホラーなのかアイドルPVなのか中途半端。


【あらすじ】

幼なじみのニーディとジェニファーはある夜、郊外のバーで行われるインディロックバンド・ローショルダーのライブに行く。しかしライブ中に火の手が上がりバーは全焼。ニーディは助かるものの多くの死傷者を出し、さらにジェニファーはローショルダーの面々に拉致されてしまう。その夜、ニーディの家に血まみれのジェニファーが訪ねてくる。その日以来ジェニファーは性格が激変し、町では殺人事件が起きるようになる。。

【三幕構成】

第1幕 -> ニーディとジェニファーとチップ
 ※第1ターニングポイント -> バーの全焼事件
第2幕 -> 連続殺人とジェニファー
 ※第2ターニングポイント -> ジェニファーが悪魔であると気付く。
第3幕 -> 春のダンスパーティ


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【感想】

本日は「ジェニファーズ・ボディ」を有楽町みゆき座で見てきました。映画の日ということもあって併設スカラ座の「借りぐらしのアリエッティ」がとんでもない混み方でして、その煽りなのか想像以上に多くのお客さんが入っていました。予告もポスターも完全にミーガン・フォックスを見るためだけの映画なのは一目瞭然ですが(苦笑)、それにしては若い女性の友達連れが多かったのは意外でした。さぞレズのミーガンも喜んでいるでしょうw

概要

本作の基本プロットは予告を見たそのまんまです。バートリ・エルジェーベトよろしく人肉を食って美を保つ悪魔のジェニファーが親友のボーイフレンドを狙っちゃって、、、というオカルトホラーなんですが、全体的に非常に半端かつ適当ですw
実際、劇中で起こる事件というのはまったく大したことがありません。単にジェニファーをニーディが止められるかどうかというだけで、捻りも無ければ伏線もありません。第一、本作は犯罪者用精神病棟に入ったニーディの回想から始まります。もうこの時点で、この話が2ヶ月間の出来事であること、ニーディの身にも性格が変わるような何かが起きること、そしてボーイフレンドは結局死ぬこと、ニーディはジェニファーと対決して生き残る事が分かります。つまり全部分かるw じゃあどうするかというと、回想でそのことの詳細が語られるだけです。しかも全部想像を超えることのない無難なことばかり。これで面白くなるわけが無い。残念ですが構成が無茶すぎます。インセプションみたいにアクロバティックな時系列シャッフルをするならともかく、これは何の意味もありません。フックアップにすらなってないです。
というわけで話の部分はかなりボロボロです。では肝心のミーガンのPVとしてはどうかというと、これもまた大変微妙です。なぜかというと、「男を誘う悪女」というキャラしか見せてくれないからです。全編通じてミーガンは誰かとキスばっかりしてるんですが、逆に言うとそれしかしてないんです。もっといろんな幅を見せてくれないと全然魅力的に見えません。確かに顔もスタイルも良いと思いますが、ただそれだけでフィルムを持たせるのはいくらなんでも無理です。あまりにフィルム上のキャラが立たなすぎて、むしろ顔が若干微妙かつ斜視なアマンダ・サイフリッドの方が魅力的に見えてきます。企画上の問題かもしれませんが、せめてジェニファーが獲物をおびき出すときにいろんなパターンを見せてくれないとどうにもなりません。しかも暴力シーンをカメラで写さないため、ホラー・クイーンにもなれていないんです。なんかもう、、、、ね、、、、どうすっぺこれ(苦笑)

【まとめ】

とっても困った映画でしたw コンセプトだけはありがちとは言えボンクラ男子が大喝采するようなものですが、あまりにも残念な出来すぎます。突き抜け方が足りません。ホラー寄りでやるならばそれこそ井口昇作品並にゴアでやっちゃえば良いですし、PV寄りでやるなら「永遠に美しく・・・」のようなお茶目なコメディ方向に振ることもできたはずです。でもどちらも全然出来ていません。作品のトーンはやけにシリアスですし、かと思いきやダサいロック調の歌謡曲が突然流れたりして青春映画っぽいノリもあります。なんか制作した人間が真面目すぎて退屈になっちゃってる印象があります。もっとふざけたり突き抜けたりしないとこの手の作品は面白くはなりません。
ということで、決して一口にダメだと切り捨てるほどでは無いですが、全体的に赤点というか、全項目が合格点の2段階ぐらい下というなんとも言えない失敗作だと思います。どこが悪いっていうか全部悪いw
強いて言えば、エンドロールでの対位法を使ったローショルダーへの制裁だけは面白かったです。面白かったというか可笑しかったw なんでそのトーンで全編通じて出来なかったのかと不思議でなりません。 決してオススメはできませんが、ミーガンの大ファンならばとりあえず押さえておいても良いかも知れません。

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運命のボタン

運命のボタン

今日は「運命のボタン」を観て来ました。

評価:(2/100点) – オカルトは断じて逃げの手段ではない。


【あらすじ】

ある日の早朝に突如ルイス家の呼び鈴が鳴らされる。不審に思いながらもドアを開けたノーラの前には、小箱が置かれていた。その日の夕方、ルイス夫妻の元にアーリントン・スチュワードと名乗る男が現れ、1つの提案をする。小箱の中のボタンを押せば、ルイス夫妻には賞金100万ドルが贈られるからりに見知らぬ人がどこかで一人死ぬという。決して裕福とは言えないノーラは、悩んだ末に勢いでボタンを押してしまうが、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ルイス夫妻に箱が届く。夫妻の日常。
 ※第1ターニングポイント ->ノーラがボタンを押す。
第2幕 -> 不審な人々と、アーサーによる捜査。
 ※第2ターニングポイント -> ウォルターが誘拐される。
第3幕 -> 結末。


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【感想】

今日は一本、「運命のボタン」を見てきました。原作はご存じホラー・SFの巨匠リチャード・マシスンがプレイボーイ誌に載せた短編「Button, Button」で、1986年にはマシスン自身の脚本で映像化(連続ドラマ・トワイライトゾーンのシーズン1・20話)しています。
実際には、原作の短編とトワイライトゾーンでは結末が違います。もちろんこの映画版もです。
原作の短編では、アーサーがボタンを押した時、夫が列車事故で死亡します。そして「あなたは本当に夫の事を知っていますか?」というオチが付きます。
一方、トワイライトゾーン版では、目に見えては何も起こりません。しかしスチュワードが「次はこのボタンをリセットして別の人に渡します。きっとその人はあなたのことを知らないと思いますよ。」と言い、アーサーが「やっべ。次は私が死ぬかも」って顔をして終わります。
どちらにも共通しているのは、「正体不明のオジさん」が「正体不明の箱」を持ってきて「良く分からないけど大金をくれる」という不気味さです。
それを踏まえた上で、では映画版はどうなっているかと言いますと、もはや完全に別物の単なる出来の悪いX-FILEもどきになってしまっています。昨日の「9<ナイン>~9番目の奇妙な人形~」と同じ症状でして、要は「説明が無いからこその面白さ」「どうしようもなく下らない説明」を付けてしまった結果、「想像の余地が無くなってしまった」って事です。
しかもオカルト系の話にしちゃうとか、リチャード・ケリーが正気だとは思えません。オカルトって言えば何でも許されるわけではないんですよ。オカルトっていうのはしばしば「理屈が付かなくて当然の事」として適当なシナリオの免罪符に使われることがあります。つまり「ここの辻褄が合わないじゃないか!」というツッコミに対して「いやオカルトですから何でもアリです」と言い訳が出来ると思われているんです。オカルト・ホラー好きとして断言しますが、オカルトは脚本家の逃げ道ではありません。オカルト・ホラーにするのであれば、きちんとそれ以外の部分を丁寧に演出して説得力を持たせないと行けないんです。ハッキリ言って本作のシナリオはあまりにもずさん過ぎます。正直かなり腹が立っています。本作の関係者は本気でマシスンに泣いて土下座するレベルです。舐めてるとしか思えません。

【まとめ】

まったくオススメできません。こんな糞映画を見るぐらいなら、是非原作を立ち読みするなり、レンタルDVDでトワイライトゾーンを見るなりして下さい。
断言しますが、こういう有名原作の良さを全部消すような適当な映画を撮って、しかも米国内で赤字をだした監督は干されます。
暫くさようなら、リチャード・ケリー。「ドニー・ダーコ」だけは面白かったよ(苦笑)。

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シェルター

シェルター

今日は「シェルター」を見てきました。

評価:(45/100点) – オカルト・サイコ・スリラーとして雑。


【あらすじ】

ある日精神科医のカーラは父親からの紹介でアダムと出会う。彼はデヴィッドという第二人格をもっており、デヴィッドになると歩けなくなったり色覚異常が直ったりしてしまう。解離性同一性障害に懐疑的なカーラは、アダムのペテンを証明しようと彼の素性調査を始める。しかしカーラが見つけたのは、実在したデヴィッドという人物だった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> カーラが父の紹介でアダムと出会う。
 ※第1ターニングポイント -> デヴィッドの母親に会う。
第2幕 -> カーラの調査。
 ※第2ターニングポイント -> カーラが昔のフィルムを見る。
第3幕 -> アダムからの逃亡と結末。


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【感想】

今日は「シェルター」です。予告で変な仰け反り方をするジョナサン・リース・マイヤーズがとっても面白そうに見える新作です。ところが、、、まぁなんと言いましょうか、、、類型的すぎてちょっと安心して見られてしまうぐらいのヌル~~~イ作品でした。
というのも、全編を通じて”サイコスリラー的””オカルト・ホラー的”な描写を駆け足で適当に流していくんですね。その結果として別に驚くわけでもなく、「過去作品のダイジェスト映像集」を見ているような気分になってしまいます。
さて、毎回恒例ですが、今回も多数のネタバレを含みます。多分映画館にわざわざ見に行く人も少ないと思いますが(笑)、ジョナサン・リース・マイヤーズのファンで未見の方には「早まらないで!!」という言葉と共に、以下のネタバレをお気をつけ下さるようお願いします。早まらないで!!!。

話の骨格について

話自体は非常にありがちなオカルトです。いきなり全部ネタバレしますが、要は
「信仰を利用した悪徳牧師が、信仰厚いシャーマンのババァに呪いを掛けられ、不信心者の魂を攫うシェルター(魂を隔離する殻/悪魔)になる。」という話です。それって「エクソシ(以下略)
そこだけ取り出すと結構面白い話だとおもうのですが、問題は序盤から中盤に掛けてオカルト要素をあまり描かずにあくまでもサイコパス・スリラーの描き方になっている点です。作品がオカルト方向に完全に振り切れるのは、シャーマンの女がシェルターの実演をするシーンで、時間にしておよそ1時間20分。作品の大半がサイコパス方向です。そのため、お化けの話が唐突に見えてしまいます。カーラが最初から解離性同一性障害に懐疑的だからなんですが、それがカメラにも転移してしまっていて、オカルト的な要素が散りばめられているにも関わらずどこか冷めた演出になってしまっているんです。だって、死んだ人物が乗り移った多重人格者とか、咳き込んだ人が突然死したりとか、すっごい夢(?)がある話じゃないですか。でも、そんなの嘘だと言わんばかりのカーラの態度にカメラも同調した結果、見ている方もなんか微妙な空気になってしまいます。
咳き込むといえば、劇中で背中に十字架模様の「みみず腫れ」が出来て咳き込み始めると死ぬという描写があります。でも、実はこれ、冒頭を見れば分かるようにアダムにもあるんですね。ところが最終盤でフィルムに映されるムーア牧師はジョナサン・リース・マイヤーズが演じています。ということは、アダムはムーア牧師に乗っ取られた人間ではなく、完全にオリジナルのムーア牧師とイコールです。なので背中に十字架があるのは別にアダムのターゲットになったからではありません。ということは、、、いったい何がきっかけなんでしょう?
考え得るのは、信仰を失ったものには天罰として背中に「みみず腫れ」が出来るというものです。でもこれだと咳き込んで土を吐き出す描写が説明できません。口に土が詰まるというのはムーア牧師の特徴だからです。ではやっぱりムーア牧師のマーキングなんでしょうか?でもそれだとアダムにもある理由が説明できないし、、、謎。
この辺りのディティールの甘さがとってももったいないです。せっかく良い設定なのに、適当に投げっぱなしなんです。

テーマの消化について

本作は「信じる物は救われる」っていうバリッバリの宗教映画テイストです。正確には「信じない物は悪魔に襲われる」でしょうか。いずれにせよ「信仰」というキーワードに乗れるかどうかはかなり大事です。
集中力が切れてちゃんと英語を聞いてなかったのですが、字幕で牧師となっていたので松浦美奈さんの訳が正確ならこれはプロテスタントの話です。
なんですが、本作ではきっちりとした結末で消化してくれません。前述したように、クリスチャン・ムーア牧師は「信仰を利用した悪徳牧師」であるが故に呪われました。なので、この作品の結末はムーア牧師が信仰を取り戻す以外にあり得ません。しかも最後にちゃんとカーラがお祈りを聞かせるという決定的な場面があるんです。しかし結末は100%腕力です。っていうかオバちゃんのチョーク・スリーパーを振り切れない男って(以下略)
わざわざネタ振りまでして回収しないあたりが適当です(苦笑)。
あとこれは根本的な問題なんですが、どうしても宗教観に頼る作品ではあるので、私のような無宗教の人間にはイマイチ怖くありません。

【まとめ】

まぁいいんじゃないですか(←適当)。少なくともジョナサン・リース・マイヤーズのファンであれば、彼の赤ちゃんプレイが見れる貴重な作品です(笑)。しかし、、、ちょっとジャンルムービーの中でもレベル低いです。とはいえ、「フォース・カインド」よりは面白いので、興味を持った方は是非直感に従って劇場でお楽しみ下さい。
しかしここのところジュリアン・ムーアの地雷率はハンパじゃないです。
・フリーダムランド Freedomland (2006)
・トゥモロー・ワールド Children of Men (2006)
・NEXT -ネクスト- Next (2007)
・美しすぎる母 Savage Grace (2007)
・ブラインドネス Blindness (2008)
・シェルター Shelter (2009)
・50歳の恋愛白書 The Private Lives of Pippa Lee (2009)
・シングルマン A Single Man (2009)
勝率12.5%。面白いの「シングルマン」だけですね(苦笑)。今秋公開が決まったみたいなので是非お楽しみに。

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渇き

渇き

いまさらですが「渇き」を観てきました。

評価:(75/100点) – 変テコながらハイテンション。


【あらすじ】

神父のサンヒョンは己の無力感からエマニュエル・ウィルスの被験者となる。死亡率の高いEV実験の中で、サンヒョンは発症しながらも生き残った初めての被験者として奇跡の象徴となる。しかし彼が生き残ったのは、輸血を受けた謎の血液の効果だった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> サンヒョンがEV実験の被験者となる。
 ※第1ターニングポイント -> サンヒョンがヴァンパイアになる
第2幕 -> サンヒョンとテジュの浮気
 ※第2ターニングポイント -> テジュがヴァンパイアになる。
第3幕 -> 結末


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【感想】

今日はパク・チャヌクの「渇き」を見てきました。観ようみようと思ったまま時間が合わず、気付いたら公開終了だったので滑り込みです。
とても変テコでハイテンションで、そして凄まじいフィルムでした。
大ざっばなジャンルとしてはモンスターホラーものです。神父であるサンヒョンがひょんなことからヴァンパイアとなり、聖職者としてのモラルとヴァンパイアとして生きるのに必要な血の獲得の間で揺れ動きます。そしてその均衡を崩す存在としてのテジュ。崩れるまでの苦悩と崩れた瞬間からの開き直り。まるで前半と後半で別の映画を見ているようで、それでも確実にサンヒョンの価値観だけがまっすぐに芯が通っています。分かりやすいモンスターとして描かずに、まるでヴァンパイアであることを病気か障害のように苦悩する人間像というのは結構珍しかったりします。
ヴァンパイアみたいな怪物は「十字架が嫌い」「神の敵」みたいな位置でキャラ付けをされることが大変多いのですが、本作ではむしろ神に忠実な人間くさい男です。このアイデアは中々です。
演出面ではかなりぎこちないカメラワークを使ってきまして、とても無骨で荒い印象を受けます。それは本作のトーンにばっちりです。
またソン・ガンホのすこしやつれた顔がまるで苦悩が張り付いているように見えてきてとても嵌っていますし、キムオクビンの終盤でがらっと変わる演技も本当に素晴らしいです。手放しで褒められるような脚本ではありませんが、しかし丁寧な人間描写と的確な伏線運びはさすがのパク・チャヌクです。
ゴア描写有りの怪奇映画でここまで人間ドラマを描かれてしまっては、正直そんじょそこらのジャンルムービーでは太刀打ちできません。そういった意味で、文句なくオススメできる良作です。ゴア描写が平気な人にだけですが(苦笑)。

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パラノーマル・アクティビティ

パラノーマル・アクティビティ

本日の2本目は。

最怖ホラーと宣伝中の「パラノーマル・アクティビティ」です。

評価:(1/100点) – 怖さがカケラもない心霊ホラー映画。


【あらすじ】

ミカは夜中におこる心霊現象の原因を探ろうと高性能なカメラを購入し寝室に仕掛けることにする。そこには怪現象が映っていた、、、。

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【感想】

さて、アメリカで話題沸騰、ロッテントマトでの評価も高いインディ・ホラー映画「パラノーマル・アクティビティ」です。2007年制作の作品ですが、アメリカでもロードショーに乗ったのは昨年秋です。ホームビデオで撮影されたという体のフェイク・ドキュメンタリー形式で、アメリカでは割とめずらしい心霊現象が題材と言うことでかなり期待して観に行きました。ところが、、、本当につまらない、、、というよりホラーなのに怖くない(笑)。
ラストの20秒ぐらいで音に驚く場面はあったのですが、しかし決定的に怖くありません。

フェイク・ドキュメンタリーの体裁について

本作は冒頭に、警察とケイティとミカに謝辞が送られます。ということはこの映画を作ったのは発見者でも撮影者(登場人物)でも無い第三者ということになります。この時点で結構微妙なのに、さらには途中に明らかな編集点と早送りが入ります。そして日時表示が出たり出なかったりします。
ですので、本作はフェイクドキュメンタリーという形式なのに、劇中の映像そのものではなく編集されてしまっていることになります。これでは怖くはなりません。「現実に映っちゃってる」のが怖いのであって、編集していいならそれこそCGでいくらでも出来てしまいます。あくまでもオリジナムービー(=劇中でミカが撮影していたテープ)をそのまま流すから意味があるのに、、、微妙すぎます。

お化けの動きについて

おそらく観た方が最初に思うのが「お化けの茶目っ気について」だと思います。なにせサービス精神が旺盛なお化けでして、律儀に毎回毎回「階段を上がって開いてるドアを通る」コースを辿ります。そして任意の固定カメラ撮影にもかかわらず、キーイベントは必ずカメラの前で行ってくれるエンターテイナーぶり(笑)。寝室のシーンはいつ横や下からお化けがフレームインしてくるのか楽しみにしていたのですが、結局最後までドアを通って来てくれました。
起こる現象といってもドアが閉まるのと怪音ばっかりで、ひたすら前振りが1時間以上続きます。やっとアタックが来たかと思いきや良くあるタイプの微妙なオチで、最後の方はちょっと笑いすら起きるレベルの酷さでした。とにかく怖くありません。

ミカとかいう頭の足りないバカ男について

私の中で本作の評価が完全に紙屑になった一番の原因は「ミカ」とかいう最低な男です(笑)。話を聞かない、独断専行、約束を破る、思い込みで動くくせに結果が伴わない。要は大口たたくだけで何の役にも立たないのですが、後半は常に怒鳴ってヒステリーを起こしています。よくここまでクソ野郎に作り込んだと関心するほどで、本気で舌打ちが止まらずイライラしっぱなしでした(笑)。これが監督の狙いだとしたら私は完全にストライクです。なのでラストに関しては完全にお化けに感情移入しています(笑)。GJ。

【まとめ】

まったく怖くないのでホラー映画嫌いな人でもなんの問題もありません。しかし決定的につまらないのでちょっとオススメしづらいです。とはいえ、この手の心霊ホラーは大勢と一緒に見た方が面白さが増すので、どうせみるならDVDよりは映画館の方が良いと思います。
まぁアメリカでの流行は本当ですので、確認の意味で映画館へ足を運んでみては如何でしょうか?

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Dr.パルナサスの鏡

Dr.パルナサスの鏡

本日は二本見てきました。一本目は

Dr.パルナサスの鏡」です。

評価:(80/100点) – これぞカルト映画の神髄。安心のテリー・ギリアム印。


【あらすじ】

パルナサスは数世紀前に悪魔・Mr.ニックと賭けをして永遠の命を手に入れた。しかし永遠の命は彼に生きることのつらさを思い知らせることとなる。そんな中、パルナサスは街で見かけた女性に恋をする。しかし彼は1000歳を越える年寄りで寄る辺もない。そこでMr.ニックはパルナサスに若さと彼女の愛を与えることにする。その代償は生まれてくる2人の子供が16歳になった時、ニックに引き渡すことであった、、、。


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【感想】

カルト映画好きならばニヤニヤが止まらない、傑作と呼ぶにふさわしい内容の作品でした。
話の内容は至ってシンプルで、「パルナサス老人が悪魔と勝負をして娘を助ける話」です。「96時間」などと同じプロットです。ただしそこはテリー・ギリアム。老いてなお手練れというか、この人は本当に変な映画を撮らせると天下一品です(笑)。
特に今回の「鏡の中には入場者の理想・妄想の世界が広がっている」「入場者は最後に2択を迫られ、正解を選べば現実に戻れるが不正解だと悪魔の手に落ちる」というこれ以上ないほどシンプルで意地悪な気色悪いゲームの設定は素晴らしいです。シンプルなストーリーも、このギリアム特有の「歪んだ世界」とヒース・レジャーの「胡散臭さ」が見事にトッピングされ、これ以上ないほど魅力的で気持ち悪い(←褒め言葉)ストーリーへと変身します。ごちゃごっちゃいうのも野暮なほど魅力あふれる役者達。そして微妙に薄暗くフィルムグレインのたっぷり乗った画面構成。少ない登場人物で物語の推進力を高める展開の旨さ。何処にも文句の付け所がありません。
強いて言うべきことがあるとするならば、ショウゲートの予告編は嘘ばっかってことです(笑)(Youtube)。
そりゃこんなカルトな映画に若い女性を一杯入れようと思ったらイケメン俳優で釣るしかないんですが、にしても酷い。少なくともヒース・レジャーはメインじゃないし、娘を救い出すために鏡に入るわけではありません。すごい意図的なミスリードです。どちらかというと、TOHOシネマズで流れるジョニーデップとおばちゃんが変なタンゴに乗せて踊る映像が一番内容に即してます(笑)。
是非劇場で見て欲しい作品ではあるんですが決して万人にはお勧めしません(笑)。特にジョニー・デップ狙いの女性には「そんなんじゃないよ!」と警告しつつ、しかし確実に、何があろうと、鉄板でオススメです!!!

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The 4th Kind フォース・カインド

The 4th Kind フォース・カインド

The 4th Kind フォース・カインド」見て参りました。

評価:(5/100点) – 工夫はしているが、、、。


【あらすじ】

アラスカ州ノーム。アビゲイル・タイラー博士は寝室で就寝中に隣で夫を殺害される。その後、子供2人を育てながら不眠症の村人のサイコ・セラピーを続けるうちに、多くの人が共通の体験を持っていることに気がつく。夜中に見えるフクロウとは何なのか?そして彼らが体験したことは?セラピーの結果から徐々にタイラー自身の体験と夫の死の真相が明かされる。


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【感想】

非常に微妙な出来です。予告はそこそこB級っぽい雰囲気を出していますが実際には矢追純一やMMRと何ら変わりありません。しかも矢追純一を見たときに感じる真剣過ぎてくだらないというギャグすら成立していません。本作はよく言えば器用に作りすぎであり、悪く言えばテーマと語り口のトーンがチグハグです。

本作に見られる工夫の跡

厳しいことを書きましたが、本作には一つ大きな工夫があります。それはフェイク・ドキュメンタリーをいかに本物っぽく見せるかという部分です。
例えばブレア・ウィッチ・プロジェクトでは、公開前のネタ振りとしてケーブルテレビで「ブレア・ウィッチの謎」と称した特番を放送しました。また前後にwebを用いて嘘のニュースを流し続け、映画があたかも事実であるかと思わせるために多くの宣伝手段を利用しました。報道と称して映画の宣伝を行うことの倫理的是非はありますが、しかし成功したのは事実です。
一方、本作では特に前振りは行っていません。webを検索していただくと分かるようにタイラー博士のそれっぽい嘘記事もほとんどありませんし、むしろユニバーサルの公式コメント(=あくまでも作り物であるという宣言)ばかりが目につきます。この時点でフェイク・ドキュメンタリーとしては駄目です。
しかし本作では2重の創作をかませるという発明を行っています。嘘のドキュメンタリーを劇中でさらに再現映像化することにより、より嘘ドキュメンタリーの信憑性を高めようという発想です。この手法は本当に発明だと思います。惜しむらくは、ドキュメンタリー部分(=劇中における”実際の映像”)の出来があまり芳しくないことです。話の内容自体はよくあるアブダクトもの(=宇宙人による誘拐話。)ですから、本作の成功はこのドキュメンタリー部分の出来にかかっています。せっかくタイラー博士にぴったりの役者を連れてきているのに、肝心のビデオカムが微妙すぎて何とも言えない雰囲気になってしまいました。残念です。
とはいえちょいと腹が立つ部分もあります。それはラストで完全に監督が投げっぱなしにしていることです。「信じるか信じないかはあなたの自由です」とか言うのは勝手ですが、じゃあ入場料返せと思ってしまいます。アブダクトものの映画ならそれらしく、最後まで「UFOは実在する」で押し切ってもらわないと困ります。だって弱気になる矢追純一なんて誰が見たいですか?弱気になる糸井重里なんて誰が見たいですか?彼らが真剣だからこそ客観的に見てる我々は面白いんです。「なにムキになってんの?バカじゃね(笑)」というのが彼らを見る偽らざる観客心理ですし、だからこそ人気があるわけです。でも本作では監督すら本気でUFOの存在を信じていないわけです。そんなもの見せられても何とも言えません。「はいはい、わかったわかった。で?」というのが私の率直な感想です。だって信じてないならこの映画の存在意義が無いじゃないですか。UFOの存在を啓蒙する気もなくUFOを否定する気もない。いったい誰をターゲットにして何故作った作品なのでしょうか?ハッキリしているのはこれよりも100倍は「奇跡体験!アンビリバボー」の方が作り手の意図が見えて面白いって事です。

【まとめ】

え~本作は春先にバルト9で見たアルマズ・プロジェクトとタメをはれるレベルのがっかり映画です。個人的な意見ですが、フェイク・ドキュメンタリーの面白さはやっぱり出落ちであり、そしていかに制作側が真剣に「捏造しようとしているか」だと思っています。本作のような酷い作品を見ると、改めて「ブレア・ウイッチ~」の偉大さが良く分かります。予算は関係ありませんし役者も関係ありません。いかに知恵と情熱を傾けられるかが勝負のジャンルです。
本作からは真剣さが一つも伝わりませんでした。もっとまじめにやっていればコメディとして成立していたのに、なんとも残念な話です。
劇中の村人よろしく、我々もこの映画の存在を忘れましょう。それが一番幸せです。
最後になりましたが大事なことを一つだけ書かせてください。昨年「曲がれ!スプーン」を見て良い話だと思った人は本作を見る責任があります(笑)。だって、UFOを信じるのが純真で素晴らしいことなんでしょ?だったら本作を見て是非とも信じてください。本作をつまらないといった人は本広克行にぶん殴られますよ(笑)。

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