シャンハイ

シャンハイ

先週の土曜日は新作を2本見てきました。一本目は

「シャンハイ」です。

評価:(55/100点) – 歴史ロマンかと思いきやB級ロマンティック・サスペンス


【あらすじ】

太平洋戦争前夜、米海軍・特殊工作員のポールは同僚で親友のコナーが殺された事件を捜査するためシャンハイへと降り立った。コナーは対日本の特殊工作員としてシャンハイに在留する日本軍の捜査をしていたのだ。ポールは捜査をする内にシャンハイの実力者アンソニー・ランティンとその妻アンナと出会う、、、。


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【感想】

先週の木曜日は米映画「シャンハイ」を見てきました。渡辺謙と菊地凛子が宣伝で全面に出ていますが、バリバリのアメリカ映画です。宣伝の割には小箱だったので、そこそこ人は入っていました。客入りの間、ギャガの話題作恒例で宣伝部が大挙して下見に来ていましたが、これだけ入っていれば上等では無いでしょうか。

映画の概要

本作は制作費40億程度で主要登場人物が4人だけの非常に小規模なサスペンス映画です。
舞台は太平洋戦争直前のシャンハイ。話は主人公ポールが親友コナーの殺された事件を捜査するためシャンハイに来る所からはじまり、やがて中国人の破壊工作員と日本軍との抗争に巻き込まれていきます。
基本的にはよくある「エキゾチック・ロマンス」系の作品です。つまり、欧米人が”良く分からない未開の地”を訪れそこでなんとなくそれっぽいエキゾチックな事件に巻き込まれつつ現地の美女とイチャイチャする類の作品です。このジャンルの代表格はもちろんみんなが大好きな「007」シリーズです。今回もやってること自体は「主人公があんまり活躍しない007」です。形式上は「介入型サスペンス(※自主的に主人公が捜査をするサスペンス)」の体裁を使ってはいますが、実際にはジョン・キューザックの困り顔と相まってかなり巻き込まれているような印象を受けます。この巻き込まれる・状況に流される感じが本作に強烈なB級ロマンスっぽさを与えています。捜査官とはいえポールは最初から最後まで後手後手にまわってしまい事件は勝手に解決しますし、何より政治情勢に対してあんまり役にたっていません。というかテロリストに荷担してますけど、、、いいんでしょうか。
歴史ものとしてみると時代考証はかなり適当ですし中国政府が撮影協力してる時点で「お察し下さい」というレベルになっていますが、ロマンス作品としては丁度良い湯加減です。あくまでもロマンス要素がメインでサスペンスはとってつけたようなオマケですのであんまり細かく突っ込んでも仕方がないかなとは思います。「ロシアより愛をこめて」のソ連の描き方とか、「007は2度死ぬ」でタイガー田中はちょっと、、、というのと一緒ですので(苦笑)。まさかこれを見て「シャンハイってこんなだったのか」とか思う人はいないと思うので。興味がある方は上海租界について本がいっぱい出てますので図書館で探してみて下さい。
前半のロマンス部分を牽引していたドイツ人の女友達・レニが中盤以降まったく出て来なくなったり(スパイがバレて別れた?)、かと思いきやそもそもポールが上海に来た根本の理由もよくわからなくなっていきますし、話はどんどん甘い方向に流れていきます。でも、細かい所を気にしないで見ていればそれなりに楽しめるかと思います。このレベルならテレビドラマで十分という話もありますけどw

【まとめ】

本作は「アメリカ人がエキゾチックな国で一夏のバカンスよろしく調子に乗る話」として結構良くできているとおもいます。こういう娯楽に大きく振ったB級サスペンスは話のアレな所も含めて楽しめます。ちょくちょく歴史描写で引っ掛かる部分はあるのですが、概ね楽しい100分でした。この100分っていうのも作品内容にあった丁度良いサイズです。
とりあえず、そこまで見たい作品が無くてフラっと寄るぐらいの感覚が一番合っているのではないでしょうか。オススメです。

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記事の評価
SUPER8

SUPER8

さて2本目のこちらが大本命です。

そう「SUPER8」です。

評価:(89/100点) – スピルバーグ的なパブロフの犬


【あらすじ】

時は1979年オハイオ、田舎の炭鉱町。13歳のジョーは母親を事故で亡くしてしまう。父親とはあまり上手くいかず、唯一の楽しみは大好きな特殊メイクや模型制作の腕を活かした友人達との映画作りであった。
ある日真夜中の停車場で撮影中に、突如通りかかった空軍の輸送列車にトラックが突っ込んで大惨事を起こすところに出くわしてしまう。その日から町には不思議な事が起き始めた、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 母の死と映画作り。
 ※第1ターニングポイント -> 空軍輸送列車の脱線事故が起きる。
第2幕 -> ジョーとアリスと列車事故のその後。
 ※第2ターニングポイント -> オペレーション・ウォーキング・ディスタンス開始。
第3幕 -> アリスの救出と結末。


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【感想】

今日の2本目はJ・J・エイブラムスの新作「SUPER 8」です。プロデュースにスピルバーグが名を連ね、エイブラムスのバッドロボットとスピルバーグのアンブリンの共同制作となっています。昨年から予告編が大きく話題になっていた期待作で、平日の昼間の回なのに8割方お客さんが入っていてちょっとびっくりしました。
なお、これ以降、いつもどおりネタバレが含まれます。完全に青春・ヒューマンドラマですのでネタバレがあってもあまり問題はないとは思いますが、未見の方はお気を付け下さい。一部であんまり評判が良くないみたいですが、私個人としては十分に今年のトップ10に入ってくる映画だと思います。懐古主義なだけと言われればそうかもしれませんけどねw

本作の概要

本作はタイトルの「SUPER 8」の通り、8mmで自主制作映画を作る少年少女達の物語です。主人公のジョーは13歳の春に母親を亡くし、以後保安官の父親と二人暮らしです。しかしながら父親とはあまり上手くいきません。いつも母の形見であるペンダントを肌身離さず持っていて、悲しみを引きずっています。そんな彼が、夏休みに起きた一連の事件をきっかけに恋をし、母親の死を受け入れて前向きに生きる決意をするまでをテンポよく描きます。
本作に登場するエイリアンは空軍に監禁・実験台にされた怒りから人間達を襲うようになります。それはまさしく主人公ジョーの心境そのものです。好きな女の子・アリスの駄目親父から「二度と顔を出すな」と言われ、父親からは「友達を選べ」「アリスとはもう会うな」と理不尽に命令され、そんなジョーの鬱屈とリンクするように、エイリアンは暴れまくります。こうして、アメリカ空軍のエイリアン捕獲作戦とジョー達の映画制作が並行して語られていきます。
確かにエイリアンは出てきますが本作はあくまでも青春映画です。母親の死から立ち直れない少年が似たような鬱屈を抱えるエイリアンと向き合うことで自身も前向きに生きる決意をするに至ります。そしてそれはスピルバーグが「E.T.」「ジョーズ」で描いたテーマと同じです。

70年~80年代映画とスピルバーグへの愛

本作にはかつての70年代・80年代映画への愛が溢れています。舞台となる1979年は、5月にロメロの「ソンビ(ドーン・オブ・ザ・デッド)」がアメリカで公開され全米のオタク少年が映画館に忍び込んで熱中していた時代です。この映画でも、ロメロのゾンビを見て夢中になったチャールズ達が自主制作でロメロに捧げるゾンビ映画を制作します。そのラグタイムはわずかに2ヶ月。ドーン・オブ・ザ・デッドを見てすぐにゾンビ映画を作り始めている計算になります。まぁ、、、アホですw
そして画作りやテーマはもろに初期アンブリンの青春・ジュブナイル作品そのものです。「未知との遭遇(1977)」「E.T.(1982)」「グーニーズ(1985)」を中心に、列車事故から逃げ惑う所は「スタンド・バイ・ミー(1986)」、バスがエイリアンに襲われるところは「ジュラシック・パーク(1993)」も入っています。要所要所ではCGを使うものの、全体的にはとても静かで基本的な演出を多用します。そしてそれはまさに70~80年代の、CGをほとんど使わずに特殊効果と役者の間合いで見せていたころの映画です。
髪型や服装が昔っぽいというのもありますが、この演出の古さによって本作は強烈に「アンブリンっぽさ」を感じさせます。それはもう冒頭でジョーが家の外で座っているところを窓越しショットから切り返してバストショットで撮るところから一貫しています。
だから何も劇的な事が起きてないのに、私は冒頭から泣きっぱなしでした。強烈にノスタルジックな映画になっています。
主人公のジョーと同じ1966年生まれのJ・J・エイブラムスがいわばこのジャンルの神様であるスピルバーグの公認の元で本作のようなパスティーシュを作ったことに意味があります。ジョーをはじめとする劇中の映画バカ達はエイブラムスの分身であり、そして自分が少年時代に見た映画を自分の分身を主役にして作り直しているわけです。だから映画内でのノスタルジーとメタレベルでのノスタルジーがぐっちゃぐっちゃに混同されており、それに巻き込まれる観客もまたノスタルジーに取り込まれてしまいます。

【まとめ】

この作品はスピルバーグに捧げるオマージュ/パスティーシュ映画です。ですから、大前提として子供の頃にそれらの元作品に触れたことがあるかどうかが鍵になります。30歳~40歳ぐらいの方ならばど真ん中にノスタルジーを刺激されると思います。一方で、10代~20代前半ぐらいの方であんまり昔の映画を見たことがないと、あんまり盛り上がらない映画に見えるかも知れません。派手なイベントもあるにはありますが、間接的に内面を描写する演出ばかりですので「映画」への慣れは必要かと思います。
ピンと来ない方がいるのは仕方が無いかなとは思いつつ、個人的にはかなり気合いを入れてオススメしたい作品です。とりあえず見て損することは絶対ありませんので、是非是非映画館でご覧下さい。オススメです。

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ロシアン・ルーレット

ロシアン・ルーレット

今日は休みで2本みました。最初は

ロシアン・ルーレット(原題:13)」です。

評価:(40/100点) – 絵面のインパクト勝負。


【あらすじ】

ヴィンスは大怪我をした父親の治療費を捻出するため、家を担保に借金をする。しかしヴィンスはまだ見習いの電気技師で収入もロクにない。
ある日、ヴィンスは仕事先で儲け話を立ち聞きする。家主がオーバードーズで死んだすきに手紙を盗んだ彼は、その手紙の指示に従い秘密のゲーム会場へと向かう、、、。


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【感想】

本日の1本目は「ロシアン・ルーレット(原題:13)」です。2005年のフランス映画「13 Tzameti」のリメイクですが、私はオリジナル版は未見です。平日な上に公開から1週間経っていますので、お客さんは1桁でした。
本作はお金がどうしても欲しい青年が殺人ゲームに巻き込まれるというよくあるソリッド・シチュエーション・スリラーです。ただ、ゲームシーンの絵面はかなり面白いのですが、ゲームが100%運のみで決まってしまうためいわゆるゲーム性がまったくありません。ゲーム性が無いため、あんまりハラハラドキドキもしませんし、主人公が成長することもありません。巻き込まれ型のスリラーで、ひたすら主人公はオロオロとするだけです。そしてついに日常に帰ろうというまさにそのとき、、、、という所がちょっとホステルっぽい雰囲気もありつつ良い感じになっています。
(オリジナル版を見ていないのでなんとも言えないのですが、)どうも絵面の面白さが先行してしまったようで、せっかくジェイソン・ステイサムやミッキー・ロークをキャスティングしているのにあんまりキャラクターが立っていません。フォーマット自体はおもいっきりジャンルムービーですが、そんなにテンションが上がることなくなんとな~く気がついたら終わってましたw
追ってる警察もすごい適当ですし、ゲームの主催者側の監視もザルそのものです。参加者はみな従順でイレギュラーなこともまったくおきません。良くも悪くも安心して見られるB級映画でした。スリラーなので安心して見られちゃだめなんですけどねw
アクションなしのジェイソン・ステイサムは貴重なので彼のファンならば見ておいて損は無いと思いますが、あんまり一般にオススメできる内容ではありません。あんまり語りたくなるような映画でもないので、今回はさらっとこの辺で。

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プリンセス・トヨトミ

プリンセス・トヨトミ

今日の一本目は大阪よ立ち上がれ!!!

「プリンセス・トヨトミ」でファイナルアンサー!!!!。

(4/100点) – 中学校のドアの件どうなった? 知らねヽ(´▽`)ノ


【あらすじ】

会計検査院の松平は部下2名を従えて大阪に会計監査に訪れた。特に何事もなく監査は進んだが、社団法人OJOの監査で不思議な事が起こる。監査後に忘れた携帯電話を取りに戻った松平が見たのは、つい1時間前までいた職員達が忽然と消え、電話も不通、机の中ももぬけの殻になった姿だったのだ。不信に思いながらも決定的な証拠を得られなかった松平だったが、空堀中学校で不思議な扉を見たことと研究者の漆原の言葉から、OJOに抜け道があることに気付く、、、。


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【感想】

本日の1本目は「プリンセス・トヨトミ」です。まるで2chのコピペでお馴染みの「大阪民国」を絵に描いたような映画ですが、結構客席は若い人もいて、埋まっていました。監督はフジテレビの鈴木雅之。フジテレビと東宝の協賛映画です。
ここでお約束のお断りです。本作にはロクにドラマがありませんがそれでも「話しが無い」という説明をするために結末付近までネタバレ有りで書きます。特に支障は無いと思いますが、未見の方はお気を付け下さい。

話しの地滑りっぷり

いきなりですが、本作はかなり話しが地滑りします。というか、そもそも話しが始まるまでに1時間以上かかります。
本作の前半は会計検査院の鬼の松平・ミラクル鳥居・旭の監査行脚を軸に物語が進みます。OJOで不思議な事があった後も監査は普通に進められます。物語が動き始めるのは開始約1時間目。松平がOJOの扉を開けさせるところです。ここまでがとにかく退屈です。いわゆる謎らしい謎もないまま(=話しが無いまま)ひたすら監査が続くものですから、とてつもなく退屈で睡魔との戦いになります。そして通路が開くと同時に、大阪国についての話しがすべて中井貴一の口から語られます。ここは完全に説明口調で、ナレーションで良いレベルで一気に情報が伝えられます。実は本作はある意味ではここで終わっているとも言えますw ここまでが言うなれば「前置き」にあたります。そして「木曜日」のインタールードの後、「金曜日」としてようやくドラマが始まります。最近の邦画にありがちなのですが、前置きでたっぷり状況やキャラクターの説明をして、映画上の第三幕だけで独立したドラマを語る構成になっています。これが私が良く使う「全○話のテレビドラマ」というやつです。
金曜日になると、ストーリーは監査から離れて一転、「豊臣国松の末裔が誘拐された」という話しになります。しかも「誘拐された」裏側も並行して見せながらの展開です。当然それまでにそんな誘拐の話しはありませんから、本当にここだけ全体から独立した話しになっています。そして、映画は最終的には「父と息子の関係性」「会話が途絶えがちな父と息子の幸せな一子相伝の話し」に着地します。前半の展開からは思いも寄らない所へのすごいすっ飛び方ですw 普通の映画は尺を最大限に使ってあるテーマ(=ゴール)を語るためにエピソードを逆算で構築するのですが、本作の場合はどうしても行き当たりばったりな感じがしてしまいます。だってこのテーマなら前半は丸々要らないですからw
ということで、本作にはかなり置いてきぼりにされた印象があります。「あれ、そこ曲がるの?」「あれ、その道は違くない?」って言ってる間に気がついたら知らない土地で迷ってる感じですw

細かい所が行き当たりばったりすぎる

当然話し全体の流れがずさんであれば、細部を見ればボロボロですw 例えばそもそものきっかけになった「OJOの職員が入り口から出ていないのに忽然と姿を消した件」は最後まで意味が分かりません。話しの流れ上は「OJOの建物に隠し扉があったのだ!!!!」ってことで解決しているような雰囲気になっていますが、この隠し扉の先は部屋が一つあるだけで行き止まりですw そもそもこの隠し扉の通路は「人生で2度しか歩かない」「父と子が語り合うための神聖な場所」なわけで、断じて昼休みに通るための通用口ではありませんw よしんばカメラが映していない所でこの行き止まりの部屋からさらに別の通路があったとしても、OJOの職員がそんな所を通って別箇所に行く理由がありません。OJOのオフィスで大阪国の業務をすればいいだけですからw
隠し通路といえば、やはりこちらも話しのきっかけになる中学校にあった不思議な扉があからさますぎる上にその後は一切登場しません。江守徹扮する漆原教授曰く「大坂城には最低でも三カ所の隠し通路がある」はずですが、これと中学校/OJOの扉との因果関係もまったくありません。けっきょくなんだったんでしょうか? もしかして中学校の扉とOJOの扉が中で繋がってたんでしょうか? じゃあOJOの職員って本業は学校の用務員とかっていう設定? なんかよく分かりません。
分からないと言えば、やっぱりそもそもこの「秘密結社 大阪国」という設定がさっぱりです。そもそも年間5億円の資金のためにものすごい苦労しているわけですが、有志団体で推定会員266万人(=大阪の人口)いるんだから、全員から年会費200円取った方が秘密が守れるんじゃないの? 「他へ引っ越した人はどうなるの?」とか、「そもそも大阪城が赤くなったら観光客にはバレバレじゃね?」とか「大阪城の前で数万人単位で集まって数で脅しといて秘密も何も無いだろ!」とか、「結局鉄砲もってるんだから危険分子じゃん!!」とか「御神体=教祖が匿名の”ミスX”じゃあ求心力無いでしょ。」とかツッコミ所は山ほどあります。
そもそもからしてメインのはずの「プリンセス・トヨトミ」がなんにもしませんから。ドロップキックを一回やったくらいですw
着地も結局「鬼の松平」が拳銃にびびって逃げ帰ったようにしか見えません。情にほだされたとも見えなくはないですが、それも単に拳銃で撃たれて気が弱ってただけにも見えます。っていうか検査員なんだから仕事しろ。ちゃんと報告挙げろ。おまえの独断で揉み消して良い規模の裏金じゃない。

でも良いところもあるよ!!!

文句ばっかりになってしまったので、良い所も挙げておきましょう。なんといっても一番良いところは沢木ルカの存在感です。この子がまだ13歳だというのでかなりビックリしてるんですが、かなり良いです。ちょっと古風な感じのボーイッシュさと相まって、往年の角川映画のヒロインっぽさを凄い感じます。東宝映画ですけどw
その他の存在感ではやはり玉木宏です。大阪城公園の屋台のお兄ちゃんというズルい役でシークエンスのすべてを掻っ攫っていきますw いきますが、残念ながら話しの本筋とは一切関係ない出オチです。本作で非常に困るのは、柱になる話しが無いためメインの役所のキャラクター達が総じて薄っぺらいことです。結果、沢木ルカや玉木宏や甲本雅裕のような直接ドラマに絡まない俳優の「地力」が目立ってしまっています。

【まとめ】

色々書きましたが、沢木ルカを見るためだけでお釣りがくるぐらい彼女は素晴らしいです。なのでオススメしておきたいのですが、、、ちょっと内容が内容だけに難しいです。幸い映画の日が近いですから、1日に1000円で見に行くぐらいでちょうど良いのではないでしょうか?
真面目に見るとやってられないくらいの出来ですから、あくまでも半笑いでビール片手に見るぐらいの態度でOKですw

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少女たちの羅針盤

少女たちの羅針盤

土曜の2本目は

「少女たちの羅針盤」を見ました。

評価:(8/100点) – 内容もドラマも無い「アイドル青春まったり映画」。


【あらすじ】

ネット映画の撮影で福山を訪れた女優のマリアは、地元では名の通った存在だった。ミステリー仕立ての映画で、監督より台本が最終稿でガラッと変わったと告げられる。
どうにか撮影を続けるマリアだったが、控え室でメイクをしていた彼女の元に脅迫文が届く。かつて仲間だったインディ劇団・羅針盤のメンバーを殺したというマリア。脅迫者はその事実を知って脅してきているのだ。それは、4年前の出来事だった、、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> マリアの撮影と脅迫。
 ※第1ターニングポイント -> 羅針盤結成。
第2幕 -> 羅針盤のストリート・デビューと市のイベント。
 ※第2ターニングポイント -> 仲間が自殺する。
第3幕 -> 現代での復讐。


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【感想】

昨日の二本目は「少女たちの羅針盤」でした。「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」の優秀作の映画化ということですが、原作は未見です。言われてみれば福山駅前のロータリーで古墳が出たとかいって工事してる時に島田荘司のでっかい看板が立ってた気がしますw
監督は長崎俊一。すみませんがこの人の映画はみんな大好き栗山千明のデビュー作「死国」以外見たことがありません。本当にすみません。
公開初日でしたが結構ガラガラでした。せっかく成海璃子と忽那汐里に加えて美少女クラブ21の森田彩華とおまけで草刈正雄の娘まででてるのに、酷い話しです。
さて、ここで毎度毎度のお約束です。結末ずばりは書きませんが、以降を読めばたぶん犯人やそのほか諸々は感づいてしまうと思います。未見の方で見る予定がある方はお気を付け下さい。つまんない映画ですが、主演の羅針盤の4人組はなかなかナイスなので顔を見ているだけでなんとかやり過ごせますよ。

は、、、、話しが無い、、、、。

さて、いきなりですが本作の公式キャッチコピーを見てみましょう。「ねえ、殺すって どんな気持だった」。いきなり看板に偽り有りです。本作は駆け出しっぽい女優(アイドル?)のマリアが撮影現場に入るところから始まります。で、彼女の独白形式で彼女がかつて人を殺したことが分かるんですが、、、、「じゃあこのキャッチコピーって誰の台詞?」ってなるわけで、作品を見てお分かりのとおり”アイツ”なワケです。っていうか主演の成海璃子がイケイケで友人を巻き込んでいく話しなんで最初っから分かりきってるんですけどね。
本作は、現代のマリアの撮影現場での会話と脅迫をフックにして物語が進んで行きます。つまり、劇中内監督の「マリアちゃん羅針盤にいたんでしょ?この辺じゃ有名だよ。」と、「私は人を殺しました。」の2つです。ここから4年前に舞台が移ります。
こういう流れですので当然観客が期待するのは「伝説的な羅針盤とはそもそもどういうグループで、どうして地元で有名なのか」と「羅針盤にどういういざこざがあって殺人事件にまで至ったのか」です。私はいますごく当たり前のことしか書いていません。だってこの2つがフックで過去の話にいくんですから。

フックがフックになって無いんですけど、、、、、。

ところが、、、、、これがびっくりするんですが、両方ともショボいというか見当外れなんですね、、、。まずそもそも「伝説的な羅針盤」というところが微妙です。映画のほぼ7割ぐらいはこの羅針盤が結成されてからストリートで人気が出てステージバトル・フェスティバルに出場し話題になるという過程です。要は「部活/サークルの活動シーン」なわけですが、伝説にまでなる意味がわからないんです。だって特別に何かの賞をとったわけでもないですし、テレビに出たわけでもありません。あくまでも商店街のストリートパフォーマンスで口コミで広がり、そして大勢の観客の前で披露してスタンディングオベーションを貰うわけです。
で、、、たぶん椅子の形からしてステージバトル・フェスティバルの会場は福山市の神辺文化会館の大ホールだと思うんですが、ここって公称で800人ぐらいしか入らないんですね。つまり、多く見積もってもストリート入れて1000人前後しか見てないワケです。これって映画監督が演技を評価するほどの伝説にはほど遠いので、、、なんなんでしょう???

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※椅子・手すりの形・配置が一緒です。
左:公式ポスター
右:神辺文化会館の大ホール
(こちらのサイトからお借りしました。 http://www.cheriver.com/blog/?m=201012 )

ちなみに、本作を最後まで見ると分かるんですが、この劇中の映画監督も人間違いをしているので、実は伝説でもなんでもなくて監督が知ったかぶっただけっていうオチがたぶん正解ですw
っていうか劇中の描き方だと、マリアの方が羅針盤のメンバーなんかよりよっぽど昔から地元の有名人なんじゃないの? しかも普通だったらアリキリの石井扮するマネージャーも事件の事は知ってるでしょ。それって藤谷文子さんのマネージャーがセガールの事を知らないのと同じ様なものでしょ。または後藤真希のマネージャーがEE JUMPの事を知らないようなものでしょ。まぁいいですけど。
またどうしても突っ込まざるを得ないのは、ラストで告発者として出てくる羅針盤メンバーです。彼女たちを同じ女優さんが回想シーンのまんまで演じているわけですが、高校から大学への4年って顔や体格や服装は結構変わりまっせ、、、、これも別にいいですけど。
もう一つのフック、つまり「どういういざこざがあって殺人事件にまで至ったのか」ですが、これがもっと驚くことになってます。この「メンバーの死」は殺人事件では無く飛び降り自殺として不審点も無いまま普通に警察処理されているんです。つまり、そもそもフックになってないw ミステリーで殺人事件が題材になる以上は、「あの子が自殺するわけがない!!!!」みたいな感情論だけではなく、明らかに不可思議な点が無いといけません。じゃないとそもそも謎解きが始まりません。本作の場合、実際に始まらないんですけどね、、、、、、これってミステリーか???
本作の中ではなんとまぁ恐ろしい事に、事件をメンバーが独自に捜査するというあってしかるべきな描写が何一つありません。飛び降り自殺が起きると、すぐに過去の話から現在の話しに舞台が移って解決編が始まります。なのでさっぱり意味がわからないんです。そもそも事件そのものに「謎」が無いのに、捜査も無いままにいきなり「犯人はオマエだ!!!」みたいな話しになるので、まったくついて行けません。支離滅裂。
そんなわけで、本作には話しもドラマもないんです。そもそも語られるべきものが何も無い。そうすると、そういった支離滅裂とした要素を省いた残りはなんなのか??? これはもう「旬のアイドル/女優4人がいちゃつく様子をみるだけ」というピュアな、、、本当にピュアな意味でのアイドル要素しか残らないんです。
唯一の救いはアイドル要素としての「美少女4人のいちゃつきあい」としては何とか格好だけは付いているという点です。だからギリギリ、本当にギリギリの所でなんとか頑張れば2時間耐えることが出来ます。「耐える」という表現が全てを物語っています、、、。

【まとめ】

いろいろ書いてきましたが、本作はまったくミステリーではありません。ですから公式の予告やサイトで期待して見にいくのは大変危険です。あくまでも成海璃子の男気に胸を熱くし、忽那汐里の透明感に惚れ惚れし、草刈麻有の幸薄い感じを心配しつつ、森田彩華を懐かしく愛でる、、、、そういう一部の特殊な人向けの作品です。
個人的には全く問題ありませんが、、、、ちょっと映画として人様にオススメするのははばかられます。でもやっぱりせっかくの成海璃子の新作なので、超オススメです!!!!

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記事の評価
ブラック・スワン

ブラック・スワン

今日は二作です。1作目は水曜公開で早くもそこそこ話題作

「ブラック・スワン」です。

評価:(100/100点) – 抑圧を狂気で解き放て!!! 永遠の清純派を卒業できるのか!?


【あらすじ】

ニナ・セイヤーズはバレエ団のソリスト(準主役)である。バレエ団は経営難から立ち直るために次シーズンでプリマ(主役)の交代を考えていた。タイトルは新しく振り付けし直した古典・白鳥の湖。即席のオーディションに合格したニナは念願のプリマの座を射止める。しかし、彼女は完璧主義者であるが故に感情を表に出した演技が苦手で、オデット(白鳥)の演技は出来てもオディール(黒鳥)の演技が上手く出来ない。演技監督のトマスの厳しい指導を受けるうちに、彼女の周りには不思議な事が起き始める。

【三幕構成】

第1幕 -> ニナのオーディション。
 ※第1ターニングポイント -> ニナがスワン・クイーンに選ばれる。
第2幕 -> ニナの苦悩と演技指導。
 ※第2ターニングポイント -> ニナがリリーと夜遊びに行く。
第3幕 -> ニナの開花と初演。


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【感想】

今日の1本目はアカデミー主演女優賞を獲った「ブラック・スワン」です。監督はレスラーのダーレン・アロノフスキー。日本では水曜公開でしたが、平日の初動で結構観客が入ったと話題になっていました。
もしかしたら興味ある人はもうレイトショーで見ちゃってるのかも知れませんが、私の見た回はあんまり人が入っていませんでした。

本作全体のテーマ

本作はダーレン・アロノフスキー監督の前作・レスラーと同様にハンディカメラ調のドアップ画角を中心にして徹底したニナ・セイヤーズの一人称視点で描かれます。どこまでが現実でどこまでが彼女の幻覚かまったく分からないまま(※そしてそんなことはどうでもいいんですが、、、)、世界全体が彼女を追い詰めていきます。
ニナは元端役のバレエダンサーでシングルマザーの母親の夢を全て引き受け、完全なる「良い子」として才能を発揮してきます。彼女は技術的には完璧でありながらバレエへの情熱が踊りには出ません。そんな彼女が「情熱の化身」とも言うべき黒鳥を踊るために苦悩し、そのプレッシャーに耐えきれずに発狂していきます。
本作では「白鳥の湖」の一番の見所である白鳥と黒鳥の一人二役をモチーフに、がちがちの母親に管理され続け抑圧されたニナの解放を描きます。
本作が大変すばらしく大傑作であると思う一番の理由がクライマックスの強烈なカタルシスです。彼女は完全にイっちゃってますが、しかしそれこそが彼女にとっては「解放」だからです。彼女は最後彼女にとってまさに「Perfect…」な結末を迎えたわけで、それがハッピーエンドで無いはずがありません。

やってること自体はレスラーと同じだけど、、、

とまぁ最高なワケですが、メタレベルでやっていることはレスラーとほとんど同じです。つまり13歳でリュック・ベッソンにフックアップされてレオンで世界規模のアイドルになり、さらには18歳でスターウォーズEP1を撮影しながら受験勉強をしてハーバード大学に合格、何カ国語も喋れる美人で秀才なセレブという完璧超人のナタリー・ポートマン自身を役柄に投影します。「超良い子だけどいまいち”良い少女”感が抜けない」というのはまさにナタリー自身であるわけで、それがニナ・セイヤーズの実在感に貢献しているのは間違いありません。
プラスとして、本作では発狂系サイコスリラーからの明らかな引用も随所にあります。一番言われるのはおそらくロマン・ポランスキーの「反撥(1965)」と今敏の「パーフェクトブルー(1998)」だと思います。「反撥」は発狂に至るプロセスと「性的な幻覚」を重ねてくるテーマ的な部分、「パーフェクトブルー」は壁一面の絵/ポスターが話しかけたり笑ったりしてくる演出と鏡の中の自分が挑発してくる場面、プラスでお腹を刺す部分ですね。まぁほとんどそのまんまですw

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左:ポランスキー監督「反撥」(1965/仏)  右:ダーレン・アロノフスキー監督「ブラック・スワン」(2010/米)

ただ、パクリまくってるから駄目だと言うことではなく、それらを使ってきちんと「抑圧からの解放」というドラマを作ってくる所がダーレン・アロノフスキーの小憎らしい所ですw こんだけ面白ければパクってようが目新しくなかろうがなんでも良いやって言う、、、それぐらい黒鳥のピルエットには強烈なカタルシスがあります。まぁ演出的にやり過ぎって話しもありますし、ちょっと吹き出しそうにはなるんですが、、、でも「成長したね!!!」って感じで微笑ましい場面です。文字通り強く羽ばたいてるのでw
この作品のずるいところは、きちんと作劇上のクライマックスと劇中劇「白鳥の湖」のクライマックスが完全にシンクロしていることです。オデットは王子をオディールに奪われたことで絶望しますが、身を投げることで終に呪いから解放されます。そしてニナ・セイヤーズは、、、、というのは見てのお楽しみです。

【まとめ】

発狂系サイコ・スリラーの新しい大傑作です。あの童顔で可愛いナタリー・ポートマンが最後には血走った目をかっぴらいて黒鳥に生まれ変わるワケで、これはもうファンならずとも感涙です。現実でも本作の振り付け担当のべンジャミン・ミルピエとよりによって出来ちゃった結婚して清純派のイメージを破ったので(笑)、間違いなく本作が彼女自身の解放にも良い方向にいったんでしょう。というわけで、これからは「レオンの子役のナタリー・ポートマン」「アミダラ役のナタリー・ポートマン」では無く、「ブラック・スワンのナタリー・ポートマン」です。間違いなく彼女の代表作です。オススメします。マジ必見。

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記事の評価
アンノウン

アンノウン

土曜の2本目は

アンノウン(2011)」でした。

評価:(65/100点) – 安心と信頼のダークキャッスル印


【あらすじ】

バイオテクノロジー学者のマーティン・ハリス博士は妻リズと共に学会に出席するためベルリンに来ていた。無事会場のホテル・アドロンに着いたものの、空港に忘れ物をしたマーティンは一人タクシーを拾って空港に戻ろうとする。しかしその途中、彼は交通事故にあって昏睡してしまう。
それから4日後、目を覚ました彼は朦朧とした意識の中でやっと思い出したホテルへと向かう。しかし妻は自分の事を知らないと言い、さらにまったく別の人間がマーティン・ハリス博士を名乗っていた。
彼は交通事故で記憶が混乱してしまったのだろうか? 彼はいったい何者なのか?


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【感想】

土曜の2本目は「エスター(2009)」のジャウム・コレットセラ監督の新作「アンノウン」です。予告を見るだにB級臭がプンプンしますw その臭いにつられたのか、結構中高年のお客さんが入っていました。
サスペンスですのでネタバレ無しで行きたいと思います。
本作は前半と後半でまったくテイストが違います。前半はどちらかというとサイコスリラー風味なんですが、ある出来事をきっかけに急にアホな力技のサスペンス映画になります。でまぁ前半からダークマンの頃のようにちょっと猫背でガシガシ歩くリーアム・ニーソンが待ってましたとばかりに暴れまくるわけで、これがつまらないはずがありません。
直接的に連想されるのは昨年の「パリより愛をこめて」。それとリュックベッソンの一連のバカ・アクション映画です。全体的に投げっぱなしな感じですとか、実は凄い人という体裁の脇役が出てくるのに妙に薄っぺらい感じですとか、結局身内だけで全部完結してる感じですとか、そっくりですw
こういう「ド」が付くほどのB級映画は細かい事を考えずにポップコーンを食べられるかどうかが勝負ですので、これはもう大変すばらしいポップコーン映画に仕上がっています。だって俺たちのアニキが困り顔でモテモテなんですよ!!!! だってダイアン・クルーガーがちょっとヤンキーっぽくってイケイケなんですよ!!! パスポートを持ってない外人が事故って昏睡してるのに警察は調べに来ないのかとか、一流ホテルのドアマンがVIP客の顔を忘れるわけ無いとか、webサイトの画像を差し替えたってキャッシュで分かるしそもそもプロがそんな証拠になる痕跡を残さねぇよとか細かい所は一杯ありますが、一切気になりません。
超最高!!! 超楽しい!!! 超オススメです!!!!



って浮かれられれば良いんですけど、でもたぶんこれってリーアム・ニーソンが元々アマチュア・ボクサーでアクション俳優(アイドル)だっていう前提を分かってないとただのハチャメチャな映画に見えてしまうかも知れません。その辺はバットマン・ビギンズ以降でかなりアクション畑に戻ってましたのである程度は大丈夫かと思います。
タレ眉毛で困り顔なのに超強いというギャップがリーアム・ニーソンの一番の魅力なので、本作はまさしくバッチリの企画です。だからやっぱ最高!!!! 超楽しい!!! 超オススメです!!!!
っていうぐらい大味な感想がぴったりな映画です[emoji:i-229]

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記事の評価
八日目の蝉

八日目の蝉

昭和の日の2本目は

八日目の蝉」です。

評価:(85/100点) – 永作の狂気と母性全開のロードムービー


【あらすじ】

秋山恵理菜は生まれてすぐに父の不倫相手の野々宮希和子に誘拐された。4歳の時に希和子が逮捕され実の両親の元に戻ったものの、結局両親とも上手くいかず、自身も大学に入って不倫に走ってしまう。そんな時、彼女のアルバイト先に千草と名乗るジャーナリストが現れる。彼女は恵理菜に誘拐されていたときの様子を聞き出そうとする。徐々に記憶を辿っていく恵理菜は、やがて希和子との”親子関係”を思い出していく、、、。


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【感想】

昨日の二本目は「八日目の蝉」を見てきました。GWではほぼ唯一の邦画大型作品ですので、結構お客さんが入っていました。原作は角田光代。1993年の「日野OL不倫放火殺人事件」を元ネタにアレンジしたサスペンス小説です。去年一度TVドラマにもなっていたようですが、私はこちらはノーチェックでした。

本作の概要

さて、本作は非常に説明しづらい内容になっています。内容を簡潔にいうと、「子供の時に起きた事件で親の愛情を知らずに育った女性が、自分が妊娠したときに不安を覚えるが、過去と向き合うことで実は親の愛情を受けていたことに気付く。」という話しです。
でまぁそんな感じの話ですので、倫理的には相当きわどいことをやっています。ただ、本作では昨年の「悪人」と違ってかなり丁寧に描写を積み上げていますので倫理的な問題や描写としての不自然さはそれほど感じません。

本作は開始早々、裁判での秋山恵津子(実の母親)と希和子の供述から始まります。ここでハッキリと希和子が反省していないことと、そして恵理菜に感謝をしていることが告げられます。本作はすべての事件が終わった後に大学生になった恵理菜が回想をちょくちょく挟む形で進行していきます。そこで展開されるのが、恵理菜の家庭事情と希和子と恵理菜の逃亡生活です。

かなり序盤の段階で丈博(恵理菜の父)がいかに最低かという部分と恵津子がかなりのヒステリーかつ娘との関係でどんどん精神的に病んでいく部分が語られ、その一方で希和子には同情的に肩入れしていきます。希和子は堕胎により子供が産めなくなり、そして不倫相手の嫁からは罵倒され、ふらっと侵入した秋山家の中でたまたま赤ん坊の恵理菜を見つけて攫います。そして恵理菜に堕胎した娘につけるはずだった薫という名前を付けて実の娘として育てます。

本作のタイトル「八日目の蝉」については劇中で2回ほど言及する部分があります。一度目は夜の公園で恵理菜と千草が語り合う場面。ここでは「普通は一週間で死ぬのに八日目まで生き残ってしまった蝉はさみしい」という説明があります。そして終盤、今度は原っぱに寝そべってやはり二人が語り合う場面です。こちらでは千草が「とはいえ、八日目まで生き残った蝉は、きっと普通の蝉が見られなかった世界が見えたんだ。」と幾分かポジティブな解釈がなされます。

これは微妙に作品のテーマとはずれますが、おそらく希和子の事だと思われます。普通なら不倫がバレて子供が産めない・男不信という最悪な状態で終わるのに、そこから不倫相手の子供を攫ってしまったことで強烈な母性が目覚め、希和子は4年間だけ幸せな時間を送ります。それは希和子にとっては堕胎した娘とすごすはずだった時間の穴埋めであり、非常に利己的・自分勝手な行為です。というか犯罪ですし。

本作において、恵理菜は自分が忘れたと思っていた「育ての親」である希和子と境遇が似てくることに焦りと不安を感じています。自分も希和子と同じように妻子持ちのダメ男と浮気をし、そして希和子と同じように妊娠し、希和子と同じように男からは「今は生まないで欲しい」といわれてしまいます。そんな状態の中で、彼女は唯一の友達となった千草と共に自分のルーツを探る旅にでます。希和子の逃亡生活を追体験するように、恵理菜と千草は旅をし、そしてその土地々々で思い出を取り戻していきます。その思い出が遂にすべて戻ったとき、彼女は自分の境遇に折り合いが付くようになるわけです。

本作の良い所

ということで、本作は二重のロードムービーとなっています。
一つは「希和子と薫の幸せな親子の日々」
もう一つは「恵理菜と千草の自分探しの旅 a.k.a トラウマ克服話し」
このどちらもかなり面白いのですが、やはり尺のボリュームからしても話しの構造からしても、前者の「希和子と薫」の方が圧倒的に面白くなっています。こちらはただひたすら本当に何気ない日常を淡々と描いていきます。ちょっと舞台が某ヤ○ギシ会っぽいカルト・コミューンだったりしますが、そこで行われる親子関係は至って普通のものです。そして舞台が小豆島に移った後はより一般的なノスタルジー描写になっていきます。それは例えば「歩いても 歩いても(2008)」を見て泣いちゃうのと同じような、なんのドラマ性も無いノスタルジーの中にちょろっと見える怖さを魅力として見せてくれます。そして最後には本当に反則的な超ウェットで真っ正面な親子愛をド直球で見せてきます。ものすごいあざとく、感じ悪い演出なのですが(苦笑)、泣いちゃうのが人情ってもんです。「なんじゃこの監督、こんな甘ったるいことしやがって!!!!」と怒りながら顔は泣いてますw

後者の「恵理菜と千草の自分探しの旅」については正直な話しそこまで絶賛するほどとは思えません。一応「親子愛の認識・再確認」というのがこちらの主題なのですが、肝心の千草側の事情については具体的にはほとんど語られませんし、恵理菜についても「希和子に誘拐されていた4年間は実は幸せだった」という劇場予告でも分かる部分を受け入れるかどうかという話しになっています。結局実の両親との関係がどうこうなるわけではありませんし、希和子とどうこうなるわけではありません。正しい意味での「自分探し」だけです。そういう意味では本作はサスペンスでは無く、ジャンル的には「人間賛歌/ヒューマンドラマ」です。「人生はいろいろあるし良い事も悪い事もあるけど、でも最高!!!!」。演出のあざとさとか井上真央と劇団ひとりがダメダメだとか不満はありますが、でもここまでちゃんとやられたら褒めざるを得ません。いや面白いです、本当に。

演技はアレですが、井上真央と永作博美が顔がすごい似てるんです。目の感じですとかアゴ周りですとかそっくりです。この時点でたぶんキャスティングは大成功だと思います。
相変わらず怪演を見せてくれる永作博美はすばらしいです。この人の魅力はギョロッとして分厚いクマのある引っ込んだ目だと思います。結構危ないことを書きますが、時折ちょっとヤ○中に見えるんです。この「童顔でかわいいんだけどちょっとイッっちゃってる感じがする」のが永作博美の最大の魅力です。ちょいちょい狂気がちらついて、優しそうなのに結構怖いんです。本作でもその狂気性がそのまま母性の爆発に繋がっていきます。それが完全に物語とリンクしているので、ものすごい説得力があるんです。本当いい役者です。「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」の時と同じような怖さがあります。

井上真央もいままでより明らかにちゃんとした役で(←失礼)、それに本気で取り組もうという姿勢が見えて大変好感が持てます。芸歴は長いのにまだ「これは井上真央の役」みたいな得意技がありませんが、何かハマリ役やゴリゴリに追い込む監督に出会ったら化けるような雰囲気はありました。「ダーリンは外国人」の汚名返上傾向です。

【まとめ】

正直まったく期待しないで見に行きましたし、ぶっちゃけた話し上映時間の都合で「キッズ・オールライト」から「八日目の蝉」に見る物を変えたぐらいノーマークでした。なんか中島美嘉の大仰なテーマソングといい、予告といい、安い泣き脅し映画の匂いをビンビン感じます。実際泣き脅し気味なのは否めませんが、でもちゃんとした泣き脅しです。素直に面白い作品でした。
手放しで大絶賛!って感じではないですが、今年だと邦画の「白夜行」とためを張れるくらいの作品だと思います。拡大ロードショー中ですので、なにか別の映画を見に行ったついでにでも見ていただくと結構満足感が高いのではないでしょうか? 原作をかなりバッサリ整理していて、間違いなく原作よりもスマートになっています。とりあえずGWになにを見るかで迷ったら押さえておくと良いでしょう。オススメです。

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