スコット・ピルグリム vs. 邪悪な元カレ軍団

スコット・ピルグリム vs. 邪悪な元カレ軍団

連休2日目は渋谷で単館系を2本です。1本目は

スコット・ピルグリム vs. 邪悪な元カレ軍団」です。

評価:(90/100点) – やっと来た! ファミコン世代感涙のアホ・コメディ・アクション・恋愛映画!


【あらすじ】

スコット・ピルグリムは無職でロックバンド「セックス・ボブ・オム」のベーシストのダメ人間である。最近17歳で中国系の彼女ができて浮かれている。そんな彼はある日、白昼夢を見てしまう。そして白昼夢で見かけたピンク髪の女性に一目惚れをしてしまう。ところがなんと、17歳の彼女ナイブス・チャウと図書館でデート中に夢の女性を見かける。どうしても彼女の事が知りたい彼はその日の夜パーティで聞き込みを行い、ついにピンク髪の女性ラモーナを発見する。なんだかんだで付き合う事になるスコットとラモーナだったが、なんとラモーナには元カレ達で組織された「エクシズ」というグループが付いていた! スコットの前に立ちはだかるエクシズの面々。はたしてスコットはエクシズを乗り越えてラモーナとの幸せを掴むことが出来るのか?

【三幕構成】

第1幕 -> スコットとチャウとの付き合いと白昼夢
 ※第1ターニングポイント -> ラモーナと付き合うことになる
第2幕 -> エクシズとの戦い。
 ※第2ターニングポイント -> ラモーナがギデオンについて行く
第3幕 -> ギデオンとの決闘。


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【感想】

本日の一本目は「スコット・ピルグリム vs. 邪悪な元カレ軍団」です。邦題について言いたいことはありますが、まずは公開されただけで良かったです。署名活動に携わった方々、本当にお疲れ様でした。
が、、、が、、、、、観客が少ない!!!!!!
渋谷のシネマライズで見ましたが、お客さんの入りは6~7割ぐらいでした。たしかにポスターを見るだにオタク向けですしアメリカでは盛大に転けていますが、あまりにもあんまりです。とりあえずこういう面白い映画に人が入らなくて公開されなくなるのは嫌なので、拡大ロードショーになる5月半ばにはもう一回見に行きます。
本作はテレビゲームやアニメへのオマージュがとてつもない事になっていて物凄い情報量を畳みかけてきますので、詳しく知りたい方は今月号の映画秘宝を読んで下さいw 主要所は全部載ってます。また下記のサイトがアメリカのオタク達がみんなで元ネタを持ち寄ったwikiです。
http://scottpilgrim.wikia.com/wiki/Scott_Pilgrim_Wiki
こいったオタクマインド全開なアホ映画ですので、好きな人には本当に心に刺さります。いきなり冒頭のユニバーサルロゴがドット絵かつ音も8ビット音楽だったり、「ファイナルファンタジー2だ!!!」とか言ってFF2のバトルBGMをベースで弾き始めたり、ストリートファイターの声が入ったり、スーパーマンリターンズでクラークケントを演じたブランドン・ラウスが胸に「3」のマークをつけて野菜好きのサイヤ人になってギターヒーロー対決したり、挙げればキリが無いくらい頭の悪いアホネタの宝庫になっています。
もし難点があるとすれば、スコットがナイブスと付き合ってるのに当然のようにラモーナと二股を掛けたり、ラモーナも元カレ軍団になんにも言わなかったり、ちょっと自分勝手過ぎる点です。結構ナイブスが健気で可哀想ですし、セックス・ボブ・オムのドラマー・キムもかなりツンデレで可哀想な人になっています。
ただ、軽く引くぐらい物凄いテンションで押し切っていますので、笑っていると2時間があっという間に経ってしまいます。圧倒的に頭の悪い戦いの数々と、そして頭の悪いゲイネタの数々。とにかく、20代~40代前半までの人ならど真ん中で突き刺さるはずですので、見に行ってみて下さい。
内容はありませんので(笑)、ただただとっても愉快な2時間が過ごせます。「高校デビュー」のような芸人の一発ネタを出してくる邦画と何が違うのかと言われてしまうかも知れませんが、本作はエドガー・ライトがきちんとしたテクニックでかなり上手く演出しています。だから所々は頭が悪くても、全体としては普通に良く出来た映画です。ファミコン世代は確実に見ておくべき青春映画です。超おすすめ大プッシュです。

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記事の評価
ランウェイ☆ビート

ランウェイ☆ビート

エイプリルフールだったけどこれだけはガチです。

「ランウェイ☆ビート」でも食らえ!!!!!

評価:(2/100点) – 美糸(びいと)って名前、ホストの源氏名?


【あらすじ】

東京下町の月島高校に通う塚本芽衣は平凡な生活を送っていた。クラスメイトには引きこもりの留年生がいたり、ヤンキーがいたり、大人気のティーンモデルがいたりする。ある日文化祭の出し物を企画していると、昨年と同じくモデル・美姫を大フィーチャーしたファッションショーに決まる。しかし美姫はそれだけではつまらないといい、みんながオリジナルのデザインを持ち寄り自分が気に入るものがあれば、自身の持つファッション雑誌の連載で紹介すると約束する。張り切るクラスメイト達だったがなかなか気に入るデザイン画は書けない。そんなとき、やってきた転校生・溝呂木美糸がいじめられっ子の引きこもり留年生・犬田悟を一晩でイケメンにプロデュースし、さらには素晴らしい出来のデザイン画を複数点見せつける。なんと美糸は有名ファッションブランド・スタイルジャパンの社長の息子だったのだ。そんな美糸の元にクラスメイト達は一致団結する、、、。


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【感想】

4月1日、映画の日は「ランウェイ☆ビート」を見ました。先々週末公開の松竹/TBS映画ですが、震災の影響で得意のごり押し地上波宣伝が出来ず興行的にはかなり悲惨な事になっています。今日も客席は7人しかいませんでした。1,000円なのに、です。
さて、本作は根本的な部分が駄目すぎます。大きく分けると2つの要素で絶望的に失敗しています。1つは「ダサい」こと。もう1つは「話しがぎこちない」こと。それぞれについて詳しく書いていきたいと思います。
ということで、今回はネタバレをガンガン含めて書きます。公開後2週間経ってますので大丈夫だとは思いますが、もし万が一見に行く気がある方はいますぐブラウザを閉じて下さい。もっとも、本作は話しをネタバレされたからと言ってどうこうなる映画ではありません。話しなんぞ予告である程度分かってますから。そんなことよりも、この作品は細かいディティールが酷い事になっています。

絶望を感じる所その1: ダサい

一言で「ダサい」と言っても、本作には2種類のダサさが入り交じっています。そしてその2種類は切っても切り離せない関係にあります。
本作が始まってすぐ、3~4分ぐらいでしょうか、、、月島商店街での人物紹介シーンがあります。なんてことはないシーンなんですが、ここで頭をハンマーでぶん殴られるような強烈な衝撃を受けます。というのも、いわゆる「コマ落ちエフェクト」が入るんです。急に一時停止して、2~3秒飛ぶものです。どんびきするほどのダサさです。そう、ダサさの1種類目は「演出のダサさ」です。これは最初から最後まで随所で見られます。私もついうっかり使ってしまう言葉なのですが、「ポップ/POP」という単語は非常に危険です。一般的には「ポピュラー/大衆的」の略語ですが、和製英語として特に創作畑では「かわいい/いまどき」みたいな意味で使われることがあります。おそらくですが、本作の演出面でのキーワードはこの「ポップ」だと思います。何故かと言いますと、本作での演出はすべて「スカしたハズシ」を意図されているからです。息抜き的な意味で、あえて少しダサいことをしているという空気をビンビン出してきます。これは大谷健太郎監督の過去作「NANA」「NANA2」でも見られた現象です。直近の「ジーン・ワルツ」では直球でダサかっただけ好感が持てたのですが(苦笑)、本作の様に小細工をしようとして失敗していると見るに堪えません。特にもっとも気になるのは、やはりクライマックスのファッションショーに挟まれる観客席からのカメラ映像です。クライマックスのファッションショーは爆笑ポイントの連続でそれはそれは愉快なシーンなのですが、なんと観客席からのハンディカメラ映像(たぶんSONYのHDハンディカム)に光量不足でデジタルノイズが入っていますw
フィルムから見る限り、最後のファッションショーはある程度進行も実際にやっていると思います。実際にファッションショー・イベントを通しでやって、それを映しています。そうすると当然撮影用のライトを最適化できません。かなり暗い客席から少し明るいランウェイをハンディカメラで撮っても上手くは撮れません。本作ではその失敗した映像をポスプロ段階で白黒レベルをカチ上げることで明るくしようとしています。そこでカチ上げすぎたため、デジタルノイズが乗っちゃっているんです。撮り直せって話しなんですが、そんな失敗映像を入れているということは、これは監督の意図としては「ハズシ」であり「実在感の表現」だっていう事です。
実は超直近で同じ演出を試みている作品があります。「ザ・ファイター」です。「ザ・ファイター」では試合のシーンになると突然画面の解像度が落ちわざとインターレースの映像になります。輪郭にシャギがかかる映像で、テレビの放送波で使われる形式です。これはまさしく実在感の表現であり、テレビ中継の映像を再現することで実際の出来事のように見せる演出です。まぁ「ザ・ファイター」の場合は多分に「ロッキー・ザ・ファイナル」へのオマージュではありますけれど。
なぜ同じことを意図し同じ手法をとりながらこんな悲惨なまでに開きができるのでしょうか? 演出力っちゃあそれまでですが、それはやっぱり真面目さだと思います。つまり、実在感の表現としてなぜハンディカメラを使うのかという大元の部分です。「ザ・ファイター」だったらテレビ放送を真似するため。「ロッキー・ザ・ファイナル」だったらリングの中の視点で臨場感をだすため。「レスラー」だったらドキュメンタリー調にするため。でも本作にはその根拠がありません。「なんとなくハンディカメラを使っとけば本当っぽくみえるだろ?」っていう短絡的で上っ面だけの演出です。映画監督は映像作家でありクリエイターなんだから最低限の頭は使ってください。
ちょっと長くなりすぎました。2種類目のダサさに行きます。これはもう文字通りの見たまんま。そもそも服装がダサいです。
Twitterでは面白おかしく「ロディ・パイパーっぽい」と書きましたが、これは決して大袈裟ではありません。主役のビートはデザイナーとは思えないほどいつもワンパターンの服装をしています。トップスはワイシャツに大きめのレザーブルゾン/革ジャン。右手首には驚くべき事に星柄の皮のベルトをブレスレットのように常に付けています。たとえ制服であってもです。先生は没取しろ。ボトムスはジーンズないしチノパンの上から、常に青か赤のタータンチェックのスカートを穿いています。足下はコンバースのハイカットか革ブーツ。レザーじゃなくキャンバス地です。このパターンをずっーーーーーーと着続けます。以下参考画像です。

↑ こちらランウェイ☆ビートの舞台挨拶。真ん中がビート。

↑ こちら往年の名レスラー。”ラウディ”ロディ・パイパー。
「格好良い」タイプではなく、スコットランドからきた飲んだくれというキャラです。
瓜二つです。すごい相似形w でもやっぱパイパーのが渋くて格好良いです。
作中ではビートは「おしゃれさん」で通っているわけです。意味が分かりません。おしゃれではないでしょ、これ。舞台挨拶の衣装なんて本当にコスプレっていうか役者が可哀想。完全に羞恥プレイです。やっぱり本作で一番オシャレなのは田辺誠一演じるお父さんです。彼は常に細身のスーツを着ていてシンプルで格好良いです。一方でビート側の「格好よさ」表現っていうのは、すごくゴテゴテしたものを付けていくやり方なんです。顕著なのは劇中でのワンダの変身です。類型的なオタク・ひきこもりとして登場するワンダは、髪を切って服装を変えることでイケメンとして生まれ変わり、性格まで明るくなり、ついには超人気モデル美姫の恋仲になります。大出世なのですが、彼のイメチェン時の服装は正直無理です。というのも、このワンダ変身後の服装は、ベルトを多用して、革のブーツにデザインYシャツという「渋谷に昔居た勘違いしたヤンキー高校生」そのものなんです。一目見ただけで痛々しさが伝わってくるんですが、劇中では女性陣がみんな見とれてしまいます。こういったセンスにものすごいギャップを感じます。私ももう歳なんでしょうか、、、。
また、中盤でビートのデザインがワールド・モードに盗用されるというイベントがあります。この時の衣装もそんなにみんな騒ぐほど可愛いかが全然ピンときません。たしかに桐谷美玲が可愛いのは間違いないですが、特にパクッたワールド・モードの服はかなりダサいと思います。星いっぱい付けた真っ赤なタイトシャツって、、、小学生のお絵かきじゃないんだから。
ファッションに疎い私が無いセンスを振り絞って考えたんですが(苦笑)、たぶんこれってそもそも「オシャレ」ってものを考えるときのポイントのズレなんだと思います。私なんかが「オシャレ」を考えると、一番最初に気になるのは「シルエット」なんです。例えばボトムスだったら、パイプドなのかテーパーしてるのかとか、太めなのか細めなのかとか。トップスも同じで、細身なのか余裕があるのかとか、シャツの襟の形であるとか、そういうところです。でもこの作品内での価値観は明らかにシルエットではなく装飾なんです。ベルトが一杯あるかとか、星が一杯付いてるかとか、そういうゴテゴテしたオーバーカロリーな感じです。個人的にはそれってジャンクフードに通じるセンスだと思うんですが、でもこの辺は個人差があると思うので一概に否定は出来ません。
唯一言えるのは、「ビートのデザイン・センス」は劇中内での扱いほど万人に受けるすごいものでは無いってことです。

絶望を感じる所その2: 話しの進め方がぎこちない

すでに書き始めてから2時間経過して4600字を突破したのでちょっと先を急ぎますw
本作で絶望的なのはダサさだけではありません。話しの運びも本当にキてます。
Twitterでハナミズキを引き合いに出したのは、実は本作もハナミズキと同様に映画の構成ではなくテレビドラマのフォーマットを垂れ流しているからです。ハナミズキ同様に本作は全5話です。
第一話「転校生ビートとワンダのイメチェン」
第二話「文化祭やるぞ!!!!」
第三話「ミキティの裏切り / 父との和解」
第四話「プロジェクト・ランウェイ・ビートとワールドモードの妨害」
第五話「ファッションショー本番」
しかも本作の問題はフォーマットだけではありません。イベントの進め方にも大きな問題があります。本作では何回か大きなイベントがあります。しかしその一つ一つのエピソードがその後にほとんど影響を与えません。極端な事を言えば、ミキティの裏切り・ワールドモードのパクリのあたりはエピソード自体を丸々削除しても全体に影響がありません。その後のワールドモードの妨害の話しも、大勢に影響がありません。だって、本来この話しは「学校の文化祭でファッション・ショーをやろう!」っていう物なんです。だから、実は本作を整理すると15分ぐらいに収まります。
本作のストーリーには大きく2つの柱があります。1つはファッション・ショーの企画を通じて語られる父と子の和解の話しです。こちらはベタベタで安っぽいもののそれなりにまとめてきています。父を憎んでいた息子が父の思いを知ることで和解し、やがて父と同じ境遇を経験し乗り越えることで成長します。しかし、全体尺の半分ぐらいにはもう父子が和解してしまうため、いまいち興味が続きません。後半は結構どうでも良くなってきます。
もう1つは忍ぶ恋の話し。こちらは「主役(のはずの)塚本芽衣がビートに惚れてしまうがビートにはすでに恋人がいる」という片思いの話しです。こちらも描写がかなり適当で、「ここで惚れたな」っていうポイントが無いまま唐突に好きとか言い出すのでかなりどうでも良いことになっています。しかもわざわざ同じ境遇としてミナミを出してくるあたりも小賢しいです。だってミナミとビート父とビート母の三角関係がまったく同じ構図のまま子供に引き継がれるってそれはちょっと適当過ぎるでしょ。しかも同じイベントの同じタイミングで同じように緊急手術とか、、、これがいわゆる「天丼ギャグ」って奴です。どんなに真面目にやっていても繰り返されると笑いに転化してしまうという恐ろしい現象です。
先ほどもちょろっと出ましたが、これが本作を語る上での2つめのキーワードです。「小賢しい/小手先」。いかにも「企画会議で一生懸命練りました!!!」っていう上っ面だけの人物配置。このいかにもな「やっつけ感」が本作を極めて不愉快で見ていて腹が立つものにしています。それが最高潮になるのがラストのファッション・ショーです。これはもう是非映像でご自身の目で見て下さい。あまりの破壊力に爆笑必至です。でも本来ここって笑われてはいけない場面です。しかし劇中内の観客の少なさもあいまって非常にシュールなコント空間になってしまっています。

【まとめ】

話しダメ、演出ダメ、音楽ダサイ、俳優大根、とかなり極まった作品です。唯一の救いは桐谷美玲の可愛さですが、でも本当にそれだけ。しかもキャラクターの魅力ではなく単に顔が可愛いってだけです。ですから本作を映画館で見る必要は万に一つもありません。どうしても気になる方はレンタルDVDで十分です。
ただやっぱりここまで完成度の低い作品というのもなかなか見られませんので、記念にはなるかと思います。ご自身の忍耐力を試したい、またはゆったりとした空間でポップコーンを食べてウトウトしたいという方にのみオススメです!!!

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ツーリスト

ツーリスト

今日は新作2本です。

1本目は「ツーリスト」です。

評価:(10 /100点) – こ、、、これは、、、Vシネマか?


【あらすじ】

アレクサンダー・ピアースは詐欺師にして7億4400万ポンド(=約1000億円)の脱税を行う国際指名手配犯である。彼の恋人であるエリーズはフランス警察に完全マークされていた。ある日、いつもの喫茶店で朝食を取っていたエリーズのもとにアレクサンダーからメッセージが届く。指示通りにイタリア・ベニス行きの列車に乗ったエリーズは、そこでアレクサンダーと似た体型の男に声を掛ける。彼はアメリカ人で失恋旅行中の冴えない数学教師だった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> エリーズの逃亡。
 ※第1ターニングポイント -> 電車内でエリーズがフランクに声を掛ける。
第2幕 -> フランクの災難
 ※第2ターニングポイント -> エリーズがフランクにカミングアウトする。
第3幕 -> エリーズの囮作戦。


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【感想】

今日の1本目はツーリストです。本国では興行的に爆死し、さらには買収してまで推したゴールデングローブ賞ではあまりの出来にミュージカル・コメディ部門でノミネートされるという赤っ恥までかいた問題作ですw
とはいえ、今週公開作の中では間違いなくポップな作品ですので、結構若い方を中心にお客さんは入っていました。学生の内はもっとちゃんとした映画を見た方がいいですよ、、、。
本作はフランス映画「アントニー・ジマー(2005)」のリメイクとのことですが、私はオリジナル作品は未見です。前知識をまったく入れない状態で見に行きました。
で、、、率直に言うと、、、、これは無い。根本的に役者の”格”が主役2人とそれ以外で開きすぎているため、開始早々にオチがわかりますw そしてそのオチを最後の最後まで引っ張るものですから、なんか終始微妙な気持ちで見ることになります。端的に言うと超眠いw
もちろんディモシー・ダルトンは有名ですが、正直”格”っていう意味ではちょっと、、、、。
ということで、本作は最初っから話しがあって無いようなものです。ですので、これはもうアンジェリーナ・ジョリーとジョニー・デップを見るためだけの作品なわけです。ところが、これがまた微妙なんです、正直。
アンジーはものっすごいマスカラの厚化粧で正直老けてますし、ジョニデもおどけ方が完全にジャック・スパロウのそれなのでセルフ・パロディにしか見えません。途中でジョニデが屋根の上をふらふら走るシーンがあるんですが、肩をすぼめて乙女走りみたいな格好をするのがまんまジャック・スパロウです。すっごい安っぽいんです。しかもちょっと太っちゃってます。このスター2人しか見所がないのに、肝心の2人が微妙に撮れているので、、、、、誰得って言葉が頭をグルグル回りますw
結果としては、「楽しかった!!!!」みたいな幸福感とはほど遠い「あぁ、、、、、あぁ、、、、。」というやっちまった空気が残ります。話しが適当で有名な男女スターがワイワイやるだけのサスペンスというのはツタヤにいけば山のように置いてありますが、それらと違い爽快感が決定的に欠けています。スリラーなのにロクなピンチもないため、カタルシスが一切ありません。アンジーとジョニデがスターそのままで適当に活躍して、適当にくっついて、適当に終わります。見ていてどんどんどうでも良くなってしまいました。
本作を映画館で見るぐらいならツタヤに行ってサスペンスのコーナーを漁った方が有意義だと思います。デートムービーとして時間つぶしにするぐらいでちょうどいいのでは無いでしょうか。積極的なオススメはちょっと厳しいです。

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恋とニュースのつくり方

恋とニュースのつくり方

今日の2本目は

恋とニュースのつくり方」です。

評価:(12/100点) – (自称)負け犬天才美女がみんなにチヤホヤされる話。


【あらすじ】

28歳彼氏無し。ベッキー・フルラーは仕事一筋で生きてきた。しかし地方TV局の緊縮財政の折、ベッキーはリストラされてしまう。それでも夢を追うベッキーは全国局に履歴書を送りまくる。
彼女の新しい仕事は40年以上続いた老舗の全国ネット早朝番組「デイブレイク」のエクゼクティブ・プロデューサー。しかし番組は視聴率が低迷し打ち切りの危機に瀕していた、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ベッキーのリストラと新しい仕事。
 ※第1ターニングポイント -> プロデューサー業開始。
第2幕 -> マイクへの懐柔と視聴率獲得作戦。
 ※第2ターニングポイント -> 「デイブレイク」が打ち切りの危機を脱する。
第3幕 -> ベッキーへのオファー。


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【感想】

今日の2本目は「恋とニュースのつくり方」です。「”プラダを着た悪魔”の脚本家」「”ノッティングヒルの恋人”の監督」という宣伝をしているように、配給としては完全にOLに狙いを絞っている、、、、はずなんですが、観客は少々の女子高生と年配の女性のみでした。400人の箱で20人も入っていませんから、初日としては相当マズい感じです。
ちなみに、公式Twitterへのリツイートで褒めてくれた人にオリジナルグッズプレゼントとか、ブログで褒めてくれた人にオリジナルグッズプレゼントとか、作品同様に腐った性根のキャンペーンをやっています。
ですが、私はそんな物で懐柔なんぞされません。甘い!!!!!
レイチェル・マクアダムスの自筆サインポスタープレゼントでも絶対無理。ハリソン・フォードとのディナーにご招待でギリギリ懐柔できるぐらいの作品の出来です。プライベートのハリソン・フォードに突撃して「F○ck Off!!」と叫ばれるという「ブルーノごっこにご招待」なら絶賛してみせますけどねw
とまぁおふざけは置いておきまして、本作で何がショックだったかというと、これはもう「誰かが私にキスをした」レベルの調子こいた万能美女の話をハリウッドメイクで見せられるということに他ありません。本作は「恋に仕事に頑張る冴えない女の子の話」みたいな雰囲気を被った「天才で、美人で、イケメン・エリートの彼氏がいて、誰からもチヤホヤしてもらえる女性の話」です。これを見た本当に冴えないOLの方々は激怒して良いレベルです。
だって、本作ではベッキーが努力するという直接的な描写が一切ないんです。彼氏の家にお泊まりしながらも夜中にニュース番組をチェックしたりする描写はあるんですが、そもそも彼女の受け持つ「デイブレイク」は報道番組ではなく情報番組ですし、直接この勉強が役に立つ場面が一切ありません。なにせ彼女が視聴率を立て直す切り札は「デイブレイク」を下世話なバラエティーにすることなんですから。でも、それってどうなんでしょう? 下世話な番組にしたらすぐに視聴率がV字回復するってちょっとTV視聴者を舐め過ぎじゃないですか? 早い話、本作ではベッキーは最初から最後まで、超優秀で人当たりも良くていろんな男性が声を掛けて好意を寄せてくれる完璧人間なんです。そんな完璧人間が個性的なキャスター2人を懐柔する話しなんです。
私、実は「プラダを着た悪魔」は大好きです。今でもちょくちょくDVDで見返すぐらい好きです。アン・ハサウェイとメリル・ストリープが大好きだというのも多分にあるんですが(苦笑)、あの映画ではきちんとアンディが「上司の無茶振りに根性で耐える」という「修行シーン」があったんです。ところが、本作では同じ脚本家が書いたとは思えないほど、主役のベッキーは最初から才能を持っているんです。それは開始直後の「デイブレイクのプロデューサ就任初の事前ミーテイング」ですぐに発揮されます。聖徳太子よろしく一斉に発せられる複数の要望をすべて完璧に裁いて見せるんです。しかも最後には余裕のアメリカン・ジョークまで付けてきます。この時点でどっちらけです。こいつはもう我々とは違う世界の天才なんだと。これは「冴えない女」では断じてないと。そう思ってしまうわけです。そうすると、後はもう感情移入も応援もすることなく客観的に天才の天才的でイケイケな行動を死んだ目で見るしかないんです。
本作にはテレビ業界特有の苦労や過酷な労働条件で働く女性の苦労は語られません。あくまでも記号としてのTV業界です。
なんか全体的に作り手の愛情や熱意が伝わらない作品でした。別に調子に乗っている天才の話ならそれはそれで良いんですが、だったら天才なりの苦労とか、天才だけどブチ当たる壁とか、そういった物を設定して欲しかったです。なんの障害もなくスルスルと実績を上げて行くベッキーを見て、本当に心底どうでも良いと思ってしまいました。
OLの方には一切オススメしません。もし「自分は天才なのに周りが分かってくれないから不当な扱いを受けている」と日頃から思っている方には、是非見て欲しい作品です。そんな方にはオススメします!!!

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デュー・デート ~出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断~

デュー・デート ~出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断~

2月の映画の日は

デュー・デート ~出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断~」です。

評価:(40/100点) – ドタバタ・ロードムービーだけど、、、。


【あらすじ】

ピーターは出張先のアトランタで妻の出産が近いことを知る。急いでロサンゼルスまで戻ろうとしたピーターだったが、空港でぶつかった男と荷物が入れ替わってしまい麻薬所持の疑いを掛けられ、さらには機内でテロリストと間違えられ搭乗拒否のブラックリストに載ってしまう。果たしてピーターは5日間で無事アメリカを横断して妻の元へとたどり着けるだろうか?


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【感想】

2月1日は「デュー・デート ~出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断~」を見て来ました。公開から一週間経っていましたので1000円ですがほとんどお客さんは入っていませんでした。昨年公開の快作「ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」の監督トッド・フィリップスの最新作です。春には「ハングオーバー! パート2」の公開を控え乗りに乗っている監督です。
本作と「ハングオーバー!」で大きく違うのは、やはりキャストが格段に豪華になっているという部分です。主役をロバート・ダウニー・Jrが演じ、相方のイーサンをザック・ガリフィアナキスが演じます。「ハングオーバー!」の頃はそこまで名の知れていなかったザックも、いまや完全にコメディスターです。
ただ、、、この豪華さというのがプラスに働いているかどうかは微妙なところです。というのも、「ハングオーバー!」では役者達はアドリブ全開で「おもしろ素人」感を出しつつハチャメチャなハイテンションを叩き込んでいましたが、今作では良くも悪くもキャラクターが固まった2人がそのキャラを逸脱しない範囲で「あの○○さんならやりそうw」というラインを狙っているからです。ですからロバート・ダウニー・Jrはトニー・スタークやホームズのままの「真面目だけどちょっと抜けてて愛嬌のあるキャラクター」ですし、ザックは「下品で無神経だけど実は繊細なダメ人間」のままです。そこに意外性やリミッターを突き抜けた感じはありません。予想通りのレベルで予想通りのギャグを予想通りのタイミングで行います。
また、本作ではコメディ・パートとシリアス・パートが目まぐるしく入れ替わります。この配分はほぼイーブンで大変考えられているとは思いますが、どうしても笑いが続かないため面白さが減じてしまいます。
これはかなり難しい問題です。実際、本作で私が一番笑ったのはジェイミー・フォックスの家でのコーヒーのやりとりでした。この場面は典型的な天丼ギャグで、「ハングオーバー!」では何度もやっていた演出です。それが本作では1カ所しかありません。本作を見ていて一番の不満はこの「くだらなさ不足」です。前作のヒットを前提に人気のある俳優を使った結果、どうしてもより安全な方向の企画に逃げてしまったような印象を受けます。あのマイク・タイソンや虎を惜しげもなく使う馬鹿馬鹿しさは本作にはありません。

【まとめ】

相変わらず前半の伏線をクライマックスで一気に回収するなどの「映画的な巧さ」はありますが、いまいちコメディとしての破壊力は足りません。もちろん決してつまらないわけではありませんから、気軽に見に行くには十分な出来だとは思います。下ネタも多いのであんまり大声でオススメはしづらいですが、もし時間に余裕があれば見に行くのもいいのではないでしょうか?
もし「ハングオーバー!」が未見であれば、そちらを圧倒的にオススメします。

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僕が結婚を決めたワケ

僕が結婚を決めたワケ

日曜日は

僕が結婚を決めたワケ」を見ました。

評価:(55 /100点) – かなりブラックなヒューマンドラマ


【あらすじ】

ロニーは40歳を過ぎて独身である。相棒の自動車エンジニア・ニックとは学生時代からの中で、厳しいながらも小さなエンジン工場を経営している。ロニーはある日、デトロイトのゼネラルモーターズ本社にて役員プレゼンを行う絶好の機会を得る。ロニーとニックは大規模契約を獲得するべく、40万ドルの資金でエンジン音豊かな電気自動車の試作を請け負う。
一方ロニーは同棲しているベスにプロポーズを決意するが、下見に行った植物園でニックの妻・ジェニーヴァの浮気を目撃してしまう、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> GMへのプレゼンと試作請負。
 ※第1ターニングポイント -> ジェニーヴァの浮気。
第2幕 -> ロニーによる浮気調査。
 ※第2ターニングポイント -> 心理セラピー
第3幕 -> プレゼンの行方とプロポーズ


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【感想】

昨日は一本、「僕が結婚を決めたワケ」を見て来ました。意外だったのですが、結構なお客さんが入っていました。箱が違うので比べづらいですが、ソーシャル・ネットワークよりも密度は高かったように思います。監督はご存じロン・ハワード。あんまりコメディを撮っているイメージが無いですが、「エドtv」以来でしょうか。とか書いた途端にそういや昔人魚姫のパロディで「スプラッシュ」とか愉快なコメディを撮ってた気もします。
本作は「結婚を夢見る男が、目の前で結婚の欺瞞的な部分を見せつけられることで悩む」話です。あくまでもコメディなので出来るだけきつくならないようには描いていますが、「仕事でテンパっている胃潰瘍持ちの親友に嫁の浮気をどうやって告げるか」という聞いただけでこっちが胃潰瘍になりそうな話が1時間近く続きます。その居たたまれなさたるや並のものではありませんw
話自体は本当にそれだけなのですが、超演技派ヴィンス・ヴォーンの見るからにヘタレな野暮ったい目つきだけで十二分に説得力があります。わりとヘタレな独身貴族というのはテーマにはしやすいのですが、ここまでストレートに「結婚っていいかも」と思わせられるのはとてもすばらしいと思います。ただ、劇映画として見ると全体的に薄いかなという印象です。
ロニーは物語の冒頭で結婚を決意した状態で始まりますが、いろいろあって「結婚ってタフだな」と思い知り、結局その上で再度結婚を決心します。その心の流れに対して、明らかに作品の尺が長すぎます。途中のジップとの件のあたりは本筋とはまったく関係無いコメディ展開です。ただ、その馬鹿馬鹿しさは結構なものですので、素直に呆れながら笑えると思います。
ハッキリ言いまして、あんまり映画館で1800円払って見る映画では無いと思いますw ただ、主要登場人物が5人程度の小さな話ですが間違いなく愉快な作品です。レンタルDVDで出たら間違いなく要チェックな作品です。その他の作品を見に行ったついでに見るぐらいの期待度であれば、とっても気楽でとっても愉快な作品ではないでしょうか。オススメです。
あ、最後に。つきあい始めのカップルでいくのは止めた方がいいです。ある程度長い付き合いならば良いかもしれません。

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キス&キル

キス&キル

今日は凄い映画を2本も連続で見てしまいました。

1本目は「キス&キル」です。

評価:(2/100点) – エアベンダーを抜いてぶっちぎりで洋画の年間ワースト


【あらすじ】

ジェンは両親とフランスのニースに旅行に来ていた。彼女はホテルでスペンサーと名乗るイケメンに一目惚れ、一緒に食事や観光をするうちに恋に落ちる。やがて二人は結婚して、3年がたったある日、、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ジェンとスペンサーの出会いと結婚生活。
 ※第1ターニングポイント -> スペンサーがヘンリーに襲われる。
第2幕 -> 2人の逃走。
 ※第2ターニングポイント -> 自宅に戻る。
第3幕 -> 結末


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【感想】

本日は2本見て来ました。1本目はとりあえずリハビリと思って比較的アンパイそうな「キス&キル」にしたんですが、、、、これは無い。カップルを中心に結構お客さんが入っていたんですが、ちょっとコレは酷いです。ラブコメを前提で見に行ってますのでかなりハードルが低めになってはいるんです。にもかかわらず、さらにそのハードルの下をリンボーダンスのようにくぐってきますw
本作は非常に狭いコミュニティの中で展開されます。出てくる単語だけは「CIA」だの「国家」だのと大きいことを言うのですが、登場人物はご近所さん止まりでまったくスケール感がありません。コメディならコメデイで割りきってしまえばいいのですが中途半端に真面目に作ろうとしているため、一般のご近所さんがサブマシンガン等の武器やコンバットスーツを持っている意味が全くわかりません。あげくの果てには黒幕の存在や事件の真相すら半径2mの世界で完結してしまいます。
あまりにもスケール感が小さく、そしてあまりにもアシュトン・カッチャーのアクションがショボイため、まったく何一つ乗れる部分がありません。あまりにも退屈すぎるため、「トム・セレックってドン・フライに似てきたな~~~。」とかどうでも良いことばっかりが頭をよぎってしまいました。
テイストだけはラブコメ風ですが、やってること自体は中学生の学園祭レベルです。褒めるところが本気で1カ所もない珍しい作品です。早く記憶から消したいのと、2本目が重たいのでこの辺で切り上げますw 例えレンタルDVDでの鑑賞だとしてもオススメはしません。久々の洋画核地雷ですw

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記事の評価
インシテミル 7日間のデス・ゲーム

インシテミル 7日間のデス・ゲーム

今日の二本目は

インシテミル 7日間のデス・ゲーム」です。

評価:(4/100点) – 秋だ! 一番! ホリプロ祭り!!!


【あらすじ】

フリーターの結城はコンビニで求人雑誌を立ち読みしている最中に女性に声を掛けられバイトを紹介される。それは「ある心理的な実験」に7日間参加するだけで時給11万2000円という高額な賃金を得られるというものであった。参加者10名を乗せたリムジンは山奥の建物へと着く。そこには10体のインディアン人形と豪華な夕食が用意されていた、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 10名の紹介と暗鬼館。
 ※第1ターニングポイント -> 西野が殺される。
第2幕 -> ゲーム。
 ※第2ターニングポイント -> 残り三人になる。
第3幕 -> 結末。


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【感想】

本日の2本目は「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」です。若年層とカップルを中心にかなり混雑していました。400人規模の箱でほとんど満席状態は久しぶりです。本作は藤原竜也、綾瀬はるか、石原さとみというホリプロの主力3名を皮切りに、役者は全てホリプロ所属となっています。そして開始早々に「日テレ」のロゴマークに続いてズッコケる「ホリプロ50周年記念作品」の文字。
そう、本作はテレビ屋映画ならぬ「事務所屋映画」です!!!!
ま、原作が事務所と関係ないだけ「瞬 またたき」よりはマシかもしれませんけど(苦笑)、、、。
え~~~いつもの事ですが、ミステリーとはいえツッコミ所が有り余っているため、今回もネタバレを多数含みます。未見の方で見るつもりがある方は今すぐブラウザを閉じて映画館へ行って地獄を見て下さいw 既にご覧の方、未見だけど見る気が無い方のみ、少々お付き合い下さいますようお願いいたします。

概要とルールのおさらい。

本作はまたまた日本産のソリッドシチュエーションスリラーです。監督は中田秀夫。Jホラーの名監督ですが、近年はキャリアプランを考えてなのかテレビ屋映画にシフトして行っています。

ストーリー自体はソリッドシチュエーションスリラーの典型です。訳ありの数名が密閉空間に閉じ込められ、そこでゲームを通じてサバイバルしていきます。当ブログでは耳タコで書いていますが、ソリッドシチュエーションスリラーはゲームの面白さが全てです。では、本作のゲームのルールは何でしょう?
1) 勝利条件は「1週間生き残る事」または「最後の2人になる事」。
2) 夜になったら部屋に籠もる事。廊下にはガードが巡回し、見つかると殺される。
3) 部屋にはミステリーの名作にちなんだ凶器が一個づつ準備され、使用は自由。
4) 部屋には鍵がかからない。
5) 「事件」がおきたら「解決」をすること。「解決者」は推理を皆の前で発表し、推理は多数決で真贋が決定される。
6) 推理が肯定された探偵にはボーナスが付き、報酬2倍。
7) 推理と多数決により犯人に指名された人間は隔離部屋に投獄される。
8) 殺人を犯した者は報酬2倍。殺人の被害者も報酬2倍。
9) 報酬のベースは1881万6000円。
とりあえず以上でしょうか? かなり原作から変更・削除をされています。

本作のまったく駄目な所。

さて、上記のルールを見てこのジャンルに詳しいかたは嫌な予感がすると思いますw そしてその予感は当たっているでしょう。
つまり、「殺人に抑止力が無い」。これが本作の一番がっかりする所です。本作では一人殺す度に報酬が2倍になります。そして推理は多数決で決まります。なので、開始早々に8人を殺せば終わりです。そうすると報酬48億になりますw
しかし、本作では殺人に抑止力が無いにも関わらず、殺人がたったの3件しか起こりません。驚くべきモラリティの水準ですw ソリッドシチュエーションに必須の「人間の本質としての暴力性の暴露」が一切ありません。なので、まずはスリラーとしてのワクワクがありません。これが致命的です。

そしてがっかりポイントその2は多数決のゲーム性です。これまた驚くべき事に、今回多数決はたったの2回しか行われず、なんと派閥に別れることもありません。しかも後半は多数決が行われること無しに、藤原竜也に勝手に探偵ボーナスがじゃんじゃん付きます。もはやルールすら無視w 意図は分かりませんが、本来この”多数決”をルールに盛り込んだという事は、つまり恣意的に誰かをハメることが出来るということなんです。なので、このルールが説明された時には、私は当然「これは派閥に別れて多数決を奪い合うゲームだ」と思ったんです。だって派閥を作れば「敵対組の一人を殺して」「多数決で敵対組の一人を監獄に送れ」ば、一気に脱落させられるんです。でもそうはなりません。それどころかまともな推理は一回もありません。全部感情論だけの多数決です。なんじゃそれ。

そしてこれがダメ押しですが、そもそも本作のゲームの運営事情が酷すぎます。このゲームは安東の推理によると約2000万人の視聴者がいる会員制のwebコンテンツです。つまり日本人の5人に1人、世界中と考えてもビートルズの「赤盤」「青盤」やマドンナの「LIKE A VIRGIN」レベルのスマッシュヒットです。すっげぇwww
作中の描写でも、渋谷TSUTAYA2階のスタバで携帯を使って見ている若者・サラリーマンが映ります。そもそもスナッフフィルムがそんなメジャーになるわけないですし、よしんばこの世界では日本が「ヒャッハー!!!!」な無法地帯だったとしても、それを参加者達が一人も知らないのは明らかに変です。それこそイギリスのバラエティ番組「サバイバー」以上にメジャーなコンテンツのはずです。

また、これはカイジでも思ったことですが、そもそもこういう「人死に上等」なゲームの主催者が、生き残った人間にお金を渡して帰すんでしょうか? 殺して終わりじゃないかって気がすごいします。
本作も駄目なソリッドシチュエーションスリラーのご多分に漏れず、結局最後は参加者の一人が凶暴化して襲ってくる安い展開に落ち着きます。そしてその襲い方も驚異的なヌルさです。なにせ建物内には、「釘打ち機」「拳銃」「ボウガン」「斧」「ナイフ」と殺傷力抜群なアイテムが転がっています。しかしラスボスが使うのはアイスピックw なぜそのチョイスなのか首をひねらずには居られません。

結局、本作はソリッドシチュエーションの見た目だけを持ってきただけです。「なぜソリッドシチュエーションスリラーが面白いのか」という根本的な分析が全く出来ていません。結果として、「ホリプロ大感謝祭」という単語が透けて見えるようなお遊戯大会になってしまっています。しかも特にメイン級の役者陣が北大路欣也以外はほぼ全滅で、ホリプロのプロモーションとしても失敗しています。
これを見た後だと、ホリプロは50周年を迎えてもうダメなんじゃないかとすら思えますw まぁ伊集院光さんが居る限りは支持し続けますけど(苦笑)。

【まとめ】

またもや日本産のソリッドシチュエーションスリラーの駄目な面が全部凝縮された凄い作品が出てきてしまいました。俳優ファンの方にもオススメしづらいレベルになっていますが、片平なぎさのファンであればかろうじて楽しめるかも知れません。おそらく本作で得をしているのは片平さんだけです。

綾瀬はるかを見ているだけで乗り切れないこともないですが、それでもあまりに酷すぎる話のずさんさが気になって全然乗れませんでした。開始40分目くらいの最初の多数決で心がぼっきり逝きましたw
まったく心がこもりませんが(苦笑)、でもきっと楽しめる人もいると思うので確かめる意味でもオススメです(棒読み)。

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