スカイライン-征服-

スカイライン-征服-

今日も今日とて新作2本です。一本目は

スカイライン-征服-」です。

評価:(75/100点) – 楽しい楽しい侵略SF。でもちょっと蛇足付き。


【あらすじ】

ジャロッドと恋人のエレインは親友であるテリーの誕生日パーティのためにロサンジェルスまでやってきた。楽しいパーティを過ごし雑魚寝をした夜更け過ぎ、急にマンションが揺れたかと思うと窓からは強烈な光が差し込んでくる。テリーの仕事仲間であるレイは窓からの光を見ると突然姿をけしてしまった。窓の外には強烈な青い光を放つ塊が何個もあったが、それらはすぐに消えてしまう。
不審に思ったジャロッドとテリーは屋上にあがって様子を探る。すると今度は複数の光が地上に落ちて来た。その直後、巨大な宇宙船が上空に現れる、、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> テリーの誕生日パーティ。
 ※第1ターニングポイント -> 回想終了。
第2幕 -> 宇宙人の侵略と脱出方法の模索。
 ※第2ターニングポイント -> ジャロッドとエレインが屋上に出る。
第3幕 -> 結末。


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【感想】

今日は新作を2本見てきました。一本目は「スカイライン-征服-」です。「バトル・オブ・LA」と大変紛らわしいですが、新作の侵略SF映画です。完全なジャンルムービーですが、そこそこお客さんは入っていました。監督は「300」「アバター」等の特殊効果で知られるVFX会社・ハイドラックスのストラウス兄弟です。そんなわけなので、本作は人間ドラマと特殊効果が大きな見せ場となっています。
ここでいつものお約束です。以後本作のネタバレが含まれると同時に、関係無い映画までとばっちりを食ってネタバレされますw 本作および関係作を未見の方はお気を付けください。

侵略SFって最高じゃん!!!! という話

本作はいわゆる「侵略SF」と呼ばれるジャンルの映画です。侵略SF自体は昔からあるお決まりのジャンルです。例えば一番有名なところで言いますと、1898年発表のH・Gウェルズの傑作「宇宙戦争」や1953年発表のアーサー・C・クラークのこれまた歴史的傑作「幼年期の終わり」、さらには最近ですと1996年の映画「インデペンデンス・デイ」なんかもあります。基本的には宇宙人がやってきまして、なんだかんだありながら撃退したり撃退できなかったりします。1938年に「宇宙戦争」をラジオドラマにした際に全米が本当だと思って大パニックになったという有名なエピソードもあります。侵略SFは「戦争」や「天災」のメタファーとして描かれることが多く、強大な力や高度な知恵をもったエイリアンは「かなうはずのない圧倒的な敵」や「不条理性」の象徴として描かれます。
そんなわけで侵略SFは作られたタイミングでの時代背景に大きく左右されます。特に最近のハリウッド映画はその傾向が顕著です。個人的にあんまり好きな言葉ではないのですが、「9・11以降」に攻撃される事の恐怖をようやく実感として理解したハリウッド(アメリカ)映画は、侵略SFというジャンルで「個人の無力さと絶望」を描くようになります。

9・11以降の侵略SFの決定版は、おそらく異論の出る余地なくスピルバーグの「宇宙戦争(2005)」です。この「宇宙戦争」において、主人公はただの無力なブルーカラーとして登場します。妻には離婚され娘・息子からはバカにされるチビで情けないダメ親父が、エイリアン達の侵略で地獄絵図となったアメリカを舞台に元妻の所に子供を送り届けることに必死になります。主人公はニュージャージーからボストンまで子供達を届ける過程でガッツを思い出し、父親としての尊厳を取り戻します。ですが、この主人公は大勢に影響を及ぼしません。ヒーロー的な活躍をするわけでも無ければ、彼がすごい人物となるわけでもありません。完全に無力な一市民であり、ただただ逃げ惑っているだけです。しかもこのエイリアンの侵略が食い止められる理由も、人間がすごいからではありません。たんなる偶然です。人類はたまたま助かっただけで、人間様がすごかったわけではないんです。

「クローバーフィールド/HAKAISHA(2008)」も同様です。物語はいきなりニューヨークのマンハッタン島をゴジラっぽい巨大モンスターが襲うところから始まります。主役達はなんとかしてモンスターから逃げますが、別に退治するわけでもありません。逃げるだけです。次々と仲間が死んで脱落していくなか、主人公はただただハンディカメラを回しながら逃げまくります。でも最後まで解決はしません。残るのは必至に生きようとする人間と、その先の圧倒的な絶望だけです。

少しトリッキーな作品では「ミスト(2007)」があります。田舎のスーパーマーケットで急な濃霧に囲まれた主人公達は、濃霧の中から現れたエイリアン達に襲われます。いろいろその場で対処しようとはしますが、彼らは無力でただ籠城することしか出来ません。それすら困難になったとき、主人公達は命からがらスーパーから逃げ出します。しかし外には圧倒的な力をもつエイリアンがうじゃうじゃいます。なんとか生き残ろうとはするものの、、、という展開です。この作品において、主人公達は状況に貢献しないどころかむしろ悪化させてしまいます。そして状況は主人公達とはまったく関係無いところで解決に向かいます。主人公は無力というよりはむしろ結果的には邪魔者になってしまいます。

このように9・11以降、ハリウッドの侵略SFはどうしてもアメリカ同時多発テロを背景とした「大局にあって個人は無力だ」という方向の作品が多くなっていきます。1996年に「インデペンデンス・デイ」でウィル・スミスを先頭にしたアメリカ空軍が無邪気にエイリアン達をぶちのめしていたのを考えるととんでもない変わりようです。

では本作はというと、、、

さて、前述の状況を踏まえますと、本作がいかにオーソドックスな作りをしているかが良く分かります。本作の主人公ジャロッド達もやはりエイリアンの前では無力です。後半に火事場の馬鹿力でエイリアンを数体倒す描写はありますが、基本的には主人公達は今回の侵略行為に対してまったくなんの役にも立ちません。ただビビッてマンションに引きこもってるだけです。たまに部屋を出たかと思うと、すぐに作戦を失敗して戻ってきます。メインで描かれるのは「エイリアンの侵略」というシチュエーションを使った「極限状態における人間達のドラマ」です。2組の恋人達によるドラマであり、そして圧倒的な力の前での無力感とそれでも最後に残る意地の物語です。ですので、これはもう面白いにきまってるんです。
繰り返される痴話げんかとお化け屋敷のように急に画面の外から脅かしてくるエイリアン達。ハラハラどきどきしっぱなしの楽しいアトラクションの90分です。
大変愉快なんですが、一点だけ気になるのがクライマックス以降につくエピローグの展開です。このエピローグで描かれるある出来事によって、主人公のジャロッドが無力な一般人ではなく特別な存在になってしまうんです。本作の一番の良さは「どんなに格好を付けてもやっぱり個人は無力だ」という部分にありますので、主人公が特別になってしまうと話が全然違ってきちゃいます。ジャンルムービーとしてみればアリな展開ですし、つい続編をつくりたくなってしまったのかも知れませんが、急にトーンが変わるのでやっぱりちょっと吹き出してしまいますw

【まとめ】

とっても楽しいエンターテイメント映画です。エクスペンダブルズにも出ていたデクスターのあいつもマンションの管理人とは思えない熱い活躍を見せてくれますし、浮気者のちゃらいあんちゃん・ねぇちゃんにはきちんと天罰が下りますw お約束をしっかりやっているとはいえジャンルムービーには間違いありませんので、見る人は選ぶかも知れません。かなりオススメな作品ですが、もし未見の方はまずスピルバーグの「宇宙戦争」から見ると良いと思います。オススメです。

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記事の評価