エンター・ザ・ボイド

エンター・ザ・ボイド

2本目は

「エンター・ザ・ボイド」です。

評価:(41/100点) – 輪廻転生は分かったから、もっとコンパクトにまとめて。


【あらすじ】

新宿で麻薬の仲介人をしているオスカーは、ある日友人のビクターの裏切りに合い警察に射殺されてしまう。彼の魂は空中を彷徨いはじめ、過去へと流れ着き、やがて転生を迎える。

【三幕構成】

第1幕 -> オスカーのトリップ。
 ※第1ターニングポイント -> オスカーが殺される。
第2幕 -> 過去の回想。
 ※第2ターニングポイント -> 回想が現実に追いつく。
第3幕 -> 転生。


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【感想】

今日の2本目はギャスパー・ノエの新作・エンター・ザ・ボイドです。結構お客さんが入っていましたが、やはり圧倒的に映画オタクっぽい一人で来ている方が多かったです。まぁギャスパー・ノエっていう時点でえげつない映画なのが確定していますので、なかなか普通の人は入らないと思います(苦笑)。一組だけ学生のダブルデートみたいな方がいたのですが、なんといいますか、ご愁傷様です。R18+のアート系映画に紛れ込んだ方が悪い(笑)。

ざっくり

あんまり内容の無い作品なのでざっくりと概要を言ってしまいます。映像はたしかに独創的なのですがストーリーは至ってシンプルで、上記の「あらすじ」が全てです。オスカーが死ぬところが真っ先に描かれ、そこから彼がなぜ死に至ったのかの説明があり、そして遺された妹と友人の結末を見届けた後、彼は転生します。

唯一面白いのは、その視点が全てオスカーの主観で描かれることです。冒頭では彼がドラッグでラリっている描写を延々と見せられます。それを主観として描くことで、CGモデルで気持ち悪い万華鏡のような映像が流れます。そしてその直前に本作でもっとも重要な会話、すなわち、「死ぬと空中を漂って空から地上を見ることが出来る」「(オスカーとリンダは)ずっと一緒だよ。」「DMTは死ぬ直前に脳内に出る物質と同等」という内容が示されます。

実は本作は奇抜なルックに似合わず律儀に作られています。冒頭でオスカーのDMTトリップ映像を見せ、それを死ぬ時と同じだとわざわざ説明してくれます。ですから、中盤以降に出てくる変な映像が全て死後の魂の主観だと分かるようになっています。そして、分かりやすく提示されるチベット仏教のリインカーネーション(輪廻転生)の概念。ずっと一緒と誓った妹が死ぬまで、彼は空中から見守り続けます。そして最後には、彼は自分や妹のあまりに無常な人生が実はまったく虚無(=void)であったと気付き、悟りを開くかのように転生を行います。

こう書くと結構面白い作品に思えるのですが私的にはかなり厳しかったです。というのもやはりテーマに対して尺が長すぎるんです。しかも完全にワンパターンな演出が繰り返され続けます。オスカーが空中を漂うシーンが全て垂直カメラの水平移動という乗り物酔い確実な映像で表現されます。正確には分かりませんが、おそらく体感では全体の4割ぐらいはこの映像だったと思います。

そして何の意味があるかよく分からない性描写の数々。いや、最後のオスカーの空想ホテルはおそらく生命の袋小路というか輪廻転生の実現場って感じだとおもうんですが、それ以外がなんとも言えないんですね。別に妹がストリップ小屋で働くのは勝手なんですが、そこの雇い主のマフィアとの件はどうでも良いと思うんですが、、、。終盤に妹の身に起こるあるイベントのための伏線ではあるんですが、それにしては長すぎてどうでも良くなってきてしまいます。
この作品が90分くらいにまとまっていれば、かなり褒めていたと思いますし、結構好きな映像作品だったと思います。でもやっぱり140分もチカチカした刺激的映像を見せられるのはキツいです。恐ろしいことにカンヌ国際映画祭で流したのは160分バージョンらしいんですが、そんなの完全に拷問ですよ。ルドヴィコ療法かっていう(笑)。

【まとめ】

もし興味がある方は、体力のあるときに映画館へ行くとよいでしょう。間違っても仕事帰りとか寝不足の時にはいかないように(苦笑)。ギャグ無しで「てんかん」の発作を起こす危険があります。くれぐれもお気を付け下さい。

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記事の評価