ソラニン

ソラニン

本日はアイドル映画2本立てです。

1本目は「ソラニン」です。

評価:(85/100点) – 堂々たる傑作青春映画。


【あらすじ】

井上芽衣子と種田成男は大学の軽音サークルで出会い同棲をしている。芽衣子はOLとして、成男はバンド活動の傍らでweb制作のバイトをして、それぞれ生活していた。ある日会社を辞めた芽衣子は、成男にプロミュージシャンを目指すよう説得する。それをプレッシャーに感じながらも、成男は相方で留年中の加藤と家業を継いだビリーに声を掛け、オリジナル曲「SOLANINE」のデモテープを作成するが、、、。

【作品テーマ】

「大人への成長には痛みが伴う。」

【三幕構成】

第1幕 -> 芽衣子が会社を辞めた後の日常
 ※第1ターニングポイント -> 成男が本気でバンド活動を始める
第2幕 -> デモテープの作成とその結果
 ※第2ターニングポイント ->成男が自殺する
第3幕 -> 芽衣子のバンド活動


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【感想】

今日はアイドル映画を2本見てきました。1本目は宮崎あおい主演のソラニンです。テーマとしては良くある青春映画ですが、とにかく描き方がとても上手く、特にキャラクターの配置が抜群です。
まずは話の流れを確認しつつ、キャラクターの配置を見てみましょう。

話の流れ

本作のストーリーはずばり「大人になること」です。
成男はフリーターをやりつつ、練習だけでステージをやらないバンド活動を続けています。一方の芽衣子も大人になりきれず、衝動的に会社を辞めてしまいます。グダグダしていた二人ですが、芽衣子からハッパを掛けられた成男は本気でバンド活動をやるためにバイトを辞めて音楽活動に専念します。ところが自信作だった「ソラニン」は全く認められず、あまつさえアイドルのバックバンドという屈辱的な仕事依頼のみがやってきます。そしてこの挫折を機に、成男は大人になる決意をします。しかし土壇場で魔が差し、自殺をしてしまいます。さらにこの事件をバネにして芽衣子が成長します。
本作は、「大人になりきれなかった彼氏の自殺を機に大人へと成長する女性を描いた青春映画」です。

キャラクター配置の妙

本作に出てくるバンド「ROTTI」のメンバーはまさにこのテーマのために作られたキャラクター達です。
・大人になりきれなかった(社会に適応しきれなかった)、成男。
・大人になって家業を継いだ、ビリー。
・まさに大人になろうとしている(おそらく社会に適応できる)、加藤。
本作では成男がメインですが、ここでビリーがメインになると「マイレージ、マイライフ」になるわけです。テーマである「大人になることの痛み」に対して、きちんと対比するキャラクターを交えつつ大変誠実に描いています。
「人生に不満の無い奴なんていない。でも今日(=趣味のバンドをやってる時)は最高に楽しい。」というビリーの言葉が全てを語っています。ちょっとこのセリフは余計かなと思う部分ではありますが、しかしこのテーマに対してロックバンドという安易になりがちな青春の記号を上手く使っていると思います。惜しむらくは後半出てくる鮎川と大橋があんまり話と関係無いことですが、原作付の作品なのでご愛敬と言うことで(笑)。

個人的に感じる問題点

本作を私は傑作だと思いますが、やはり若干気になる部分もあります。
まず第一に、世間的にはダメ人間の成男が格好良く描かれている点です。仕方がないんですが、いかにも夢も追い切れずに社会にも適応できない中途半端な男を肯定されるとちょっと微妙な気分になります。またそれと並行して、レコード会社の冴木を悪く描くのも少しどうかと思います。ある意味では彼こそがもっとも社会に適応した大人なわけで、それを「夢を忘れた冷たい大人」みたいに描かれると、社会人としては「ちょ、まてやこら」と思わずには居られません。
第二に、これは主題とは全く関係無いんですが、メガネロックを青春の代名詞にするのはもう止めませんか?
私はいわゆる「3大インディ・ロックバンド」と言われていた「スーパーカー」「くるり」「NUMBER GIRL」のど真ん中世代でして、メガネロックバンドのパイオニアにもろに影響を受けていました。「くるり」の岸田さんとは数回ですがお会いする機会がありまして、信者というほどでは無いですがそれでも大ファンではあります。あの音痴なのに体から絞り出すように歌う独特な歌唱は岸田さんがやることで初めて価値がでるわけで、それを安易にコピーされても全然「魂の声」に見えないですし、単なる劣化コピーにしかならないわけです。余談ですが、作中のROTTI練習風景で一番最初に演奏される曲は、そのまんま「くるり」の「東京」とコード進行が同じです。
本作における「ソラニン」は大人へ成長しようとする人間が子供時代の自分に向けて別れを宣言する歌です。だからこそ、最後に芽衣子が歌う意味が出るわけです。芽衣子は単純に死んだ彼氏へのオマージュとして歌っているだけでなく、自身の成長を宣言するために歌います。そしてこれがラストの引っ越しに繋がります。彼女は成男の死に折り合いをつけて次のステップへ成長するんです。
なので、「ソラニン」は「大人になりたくないけど、ならざるをえなくなった人間」の魂の叫びでなくてはいけません。それなのに、寄りによってメガネロックって、、、、しかも劣化コピーそのもののAJIAN KUNG-FU GENERATIONって、、、、バカなの?
せめてエンディングが宮崎あおいと高良健吾のデュエットないしどちらかのボーカルなら救われたと思うんですが、最後にアジカンを出した時点で作品としては割と台無しです。
第三に、これは本当にどうでもいいんですが、成男の父が無礼すぎます。財津和夫さんをキャスティングしてそれはないだろと。死んだ息子を世話してくれた女性に向かってお礼や謝罪の一つも無いってどういう事!?しかもふざけたタメ口ですし、とても60歳近い大人には見えません。

【まとめ】

本作はまったく危なげない堂々たる青春映画です。しかも宮崎あおいがどうかってぐらいに可愛いですし、サンボの近藤洋一もかなり良い存在感を見せています。
公開館もそこそこあるようなので、是非々々劇場で見て下さい。後半の無理にでも泣かせようとする展開に少し引きましたが、公開終了前にもう一回行くかも知れないくらいに好感が持てる映画でした。オススメです。

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記事の評価

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ソラニン」への2件のフィードバック

  1. 働きながら音楽をやるって事はそんなに簡単な事じゃない。大体劣化コピーがどうとか、明らかに狭い音楽観で書かれた文章。邦楽好きなだけて音楽も作れる訳じゃない人間が偉そうに語るのはやめてくれ。適合した社会人が偉いとか思い上がりもいいとこ。
    音楽やってる奴は働きながら僅かな時間で音楽を続ける事に苦労しながらやってる訳で、才能や音楽業界の理想と現実の中で苦しんだりする訳で。あんたみたいに何もやってない奴が偉そうに書く事じゃない。

  2. 映画「ソラニン」を観た感想

    ★★★今回、宮崎あおいちゃんが歌を頑張った。すごく頑張ったんだなーと思った。やっぱりというか、そんなにうまくはなかったけど、芽衣子のキャラクターとしてはピッタリの歌い方だった。

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