月に囚われた男

月に囚われた男

2本目は「月に囚われた男」です。

評価:(90/100点) – レトロ感たっぷりの王道的SF傑作


【あらすじ】

サム・ベルはルナ産業に3年契約で雇われて月に単身赴任している。彼の仕事は自動削岩機4体が採取したヘリウム3を回収して地球に送出することである。任期満了まで2週間に迫ったある日、彼は削岩機へ月面車で乗り込むのに失敗し、削岩機のキャタピラに車ごと突っ込んで負傷してしまう。相棒のロボテック・ガーティに救われた彼だが、何故かガーティより月基地からの外出禁止例を出されてしまう。なんとか外に出たサムは、月面車にて事故現場へ向かう。そこにはキャタピラに突っ込んだままの車と負傷して昏睡している自分自身の姿があった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> サム・ベルの仕事模様
 ※第1ターニングポイント -> サム2号がサム1号を救出する
第2幕 -> サム1号とサム2号の捜査
 ※第2ターニングポイント -> サムが過去のライブラリ映像を見て隠し部屋を発見する。
第3幕 -> 月からの脱出


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【感想】

本日の2作目は「月に囚われた男」です。監督のダンカン・ジョーンズにとっては長編映画の1作目です。関東では2館でしか上映していませんが、私の見た回は3~4割ぐらいの入りでした。あまり宣伝して居ないこともあるのでしょうが、映画の出来を考えればもっと入っていても良いように思えます。
長編第1作目とは思えないほどに良く出来た素晴らしい作品でした。

話のプロット

本作は一発もののアイデア勝負の作品です。サム・ベルが三年間の密閉空間かつ単独というストレスフルな労働環境の中で精神を病んでいくように見えて実は、、、という類のソリッドシチュエーションで、登場キャラクターはわずかに3人です。
サム・ベル1号とサム・ベル2号、そして相方のガーティのみで90分間のストーリーを転がし続けます。
この転がしかたがとても見事で、状況の変化やキャラの関係性の変化に併せてどんどん違った展開が表れます。サム1号とサム2号の視点が混乱しているように見えても、実際には彼らの手の甲を見ればどっちがどっちか分かるようになっていますし、その演出の仕方が大変見事です。
おそらく本作は「2001年宇宙の旅」と「惑星ソラリス(タルコフスキー版)」に多大な影響を受けています。サムとガーティの関係はモロにボーマン船長とHALのそれですし、幻覚の見方や家族との関係はクリスのそれと似ています。60年代~70年代初頭のレトロSFのテイストを上手く利用して低予算をカバーする手腕は、とても第1作目とは思えません。
そして、最後の最後、エンドテロップの最後に思いっきり控えめに凄い一文が表示されます。
「(C) LUNAR INDUSTRIES LTD.」



え、これルナ産業の広報映像だったの? ってことは裁判用のネタ?

【まとめ】

ミニマムな構成かつ低予算(5億)ながら、非常に良くできたSF作品です。特にアーサー・C・クラークやレイ・ブラッドベリの短編が好きな方であれば間違いなく気に入ると思います。
公開館が少ないのでなかなか劇場でみるのは難しいかも知れませんが、是非DVDが出てからでも見てみて下さい。間違いなくオススメです。

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