春との旅

春との旅

本日は二本です。
一本目は

「春との旅」です。

評価:(45/100点) – 作りは素晴らしいがメッセージが不愉快


【あらすじ】

春は祖父・忠男と二人暮らしの19歳である。ある日、春が務める学校が廃校になることが決まり、彼女は単身上京を決意する。そこで春は忠男に兄弟の元に身を寄せるように勧める。こうして春と忠夫の親戚巡りの旅が始まった、、、。


[スポンサーリンク]

【感想】

さて、本日の1本目は「春との旅」です。ティ・ジョイ作品ですので本来ならバルト9で見るのが正しい姿勢なのですが、いろいろあって川崎チネチッタで見てきました。お客さんは20~30人は入っていましたが、すべて中年以上の方で若者は皆無でした。まぁ作品の予告からして「良くできた文芸映画」という雰囲気なので仕方がないのかもしれません。余談ですが、なぜかチネチッタ別館・チネグランデが上映中もライトを落としてくれなかったため、すっごい明るい中でフィルムをみるという不思議体験になってしまい、細かい色合いが完全に飛んでしまっていました。よっぽど途中で出て返金交渉してやろうかとおもいました。最悪です、、、。
本作のストーリーはとても単純です。頑固者で人付き合いが悪く、兄弟達の忠告を無視しつづけてきた忠男が、足が悪くなり春と喧嘩したのを機に兄弟のもとに居候しようと訪ね歩くという話です。
この兄弟役が大滝秀治さんに小林薫さん、さらには弟の内縁の妻として田中裕子さんと超大物そろい踏みで物凄い演技を見せてくれます。特に大滝さんと仲代さんのシークエンスは圧巻の一言で、いつ殴り合ってもおかしくないくらいの緊張感をだしています。
俳優力が素晴らしい反面、ストーリーはあらぬ方向にすっとんでいきます。要は全ての兄弟から説教をくらうわけですが、その説教というのが基本的にはどれも正論なわけです。ストーリー上は誰がどう見ても明らかに忠男と忠男の娘(春の亡き母親)が悪いんです。特に淡島千景さん演じる姉の苦言はまさにその通りです。「困ったときだけ甘えるな。」「周りのみんなはあんたの犠牲者」「春ちゃんだけは犠牲にするな」etc。どれも正論です。てっきり私は、この映画が「忠男の孫離れ」に行くと思っていたんです。ところが、結局忠男は口では良いことを言っても、最後まで甘えっぱなしなんです。それは結局、孫の春が犠牲になることを(彼女が受け入れているからという言い訳付で)肯定しているわけで、だからこそラストシーンはああ撮るしかないんです。ああいうラストにしないと、「春が我慢し続ければいいじゃん」という最悪な結論になっちゃいますので。
私の個人的な意見ですが、本作はきちんと考えて撮っているかなりマトモな邦画だと思います。ですが、特に春が父親に会いに行く場面からものすごく不快指数が上がってしまいました。
原因は2点ありまして、自殺した母親を最低女にしてしまった点と、父の再婚相手を片耳の聞こえない障害者として描いた点です。
前者については簡単でして、要は春が父親を嫌う理由が自分勝手過ぎるし、父親が娘を遠ざける理由がないからです。春は「人間って~」みたいな適当なこと言いやがりますが、父親視点で見るといいがかりそのものじゃないですか。普通こういう状況であれば、父親は娘を引き取りませんかね?少なくとも一緒に暮らそうくらいは言うと思うんですけど、、、。
後者については、母子家庭で左耳の聞こえない女性だけが忠男を無条件で受け入れるという節操のない発想です。しかも明らかに途中で忠男の左側に立って会話する描写があるんですね。出会った時はわざわざ春の右側にまわりこんでアピールしてたのに、設定忘れちゃったんでしょうか? 障害と人格を結びつける設定って個人的にはすごい不愉快です。忠男が居候を辞退したのがせめてもの救いでした。
結局、この話は最後まで忠男が春に依存してしまうわけです。これってあたかも「しっかりものの孫とダメ人間の祖父との愛情・信頼関係」に着地しているように見えますが、これって全然美談ではないです。母親だって浮気したあげく、旦那が怒って出てったことに逆ギレして中学生の娘を遺して自殺するような自己中メンヘラですよ。なに考えてるんでしょうか?私なぞはどうしても忠男の兄と姉の正論の方を支持してしまいます。
仲代達矢さんの素晴らしい俳優力で誤魔化されかけますが、よくよく冷静に考えるとかなり迷惑な話です。描こうとしている対象は山田洋次の「おとうと」と同じなんですが、最後まで孫に甘えきってしまっているという点において、こちらの方が下に思えてなりません。

【まとめ】

テレビ局主導の映画ばかりの状況下では、どうしてもこういう「きちんと作ろうとしている邦画」は嫌いになりきれない部分はあります。しかし、どうしてもストーリー展開に共感できませんでした。ただし仲代達矢さんの力によって「どうしようもないクズだけど愛おしい偏屈老人」という描写は成功していると思います。とはいえ「甘える事」と「家族愛」を混同するような展開は正直なところちょっと腹も立ちました。
徳永えりさんのがに股走りが観たい方は是非是非劇場でどうぞ(苦笑)。

[スポンサーリンク]

記事の評価

トラックバック用URL:

http://qbei-cinefun.com/journey-with-haru/trackback/

春との旅」への1件のフィードバック

  1. 私も昨日見てきました。
    あなたと同じような憤りを思えましたが
    とにかく出演者の演技力に感動しました。
    あなたのような、緻密な文章を書く人を
    ここまで不愉快にできるこの映画は
    やっぱり凄いんだと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です