アバター(2011/邦画)

アバター(2011/邦画)

4月最後の映画は同名のハリウッド映画とは全く無関係な

「アバター」です。

評価:(65/100点) – 無茶苦茶すぎて一周して面白い。


【あらすじ】

阿武隈川道子(あぶくまがわ みちこ)は高見女子高校に通う二年生。しかしクラスは女王様・阿波野妙子が牛耳っており、教師の面前で平然とイジメが行われるほど荒れていた。
道子は17歳の誕生日祝いで母親から携帯電話をプレゼントされた。喜んで学校にもっていった道子だったが、それを阿波野に見つかり、強制的にアバQなるSNSに招待されてしまう。この学校ではアバQの人気こそが絶対で、そのゲーム内でレアアイテムを持っていることが阿波野の権力の源だったのだ!
しかし道子が期間限定スロット企画でレアアイテムを手に入れてしまったことから状況は一転する、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 道子とアバQの出会い。
 ※第1ターニングポイント -> 道子と西園寺の結託。
第2幕 -> アバターサークル結成と道子の復讐。
 ※第2ターニングポイント -> 道子が阿波野に復讐する
第3幕 -> 阿波野の逆襲


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【感想】

土曜の2本目は「アバター」です。とはいっても某ジェームズ・キャメロンの3D大作では無く、「リアル鬼ごっこ」「Xゲーム」でお馴染みの山田悠介原作の方です。たぶん製作費用はキャメロンの800分の1ぐらいですw 初日で昼の回は舞台挨拶をやっていましたが、あまり混んでるのが苦手なので敢えてレイトショーで見てみました。そして予想的中。初日に行くような人は当然舞台挨拶が見られるなら見たいわけで、夜の回はガラガラでした。現在渋谷のシアターNと名古屋のシネマスコーレだけで上映していまして、画質が荒かったのでたぶんBD上映だと思います。
いきなり結論を言ってしまいます。本作は突っ込み所だらけで出来もヘッたくれもありませんが、テンションだけは無駄に高く、面白さはかなりのものです。なので全然OKです。問題なし。オススメです!!!!!
真面目な話し、面白さだけで言えば間違いなくジェームズ・キャメロンのアバターを越えてます。いまからダメな所を書きますが、でもだから最低ということではなく、そういう適当な所も含めて本作はアイドル映画として十分成立しています。
ここでいつものお約束です。これ以後書くことは本作の直接的なネタバレを含みます。まっさらな気持ちで鑑賞したい方はご遠慮下さい。重ねて言いますが、オススメですよ!!!!

本作の話しの流れ

本作は行き当たりばったりで滅茶苦茶な話しなので整理しないとワケが分かりませんw なのでまずは設定とストーリーを整理しましょう。
本作における学校ではアバター(=ネット上の似顔絵キャラ)を着せ替える「アバQ」というサイトが物凄く流行っています。「アバQ」は広告収入で成り立っており、アバQ公式サイト内のアフィリエイト広告をクリックするとポイントが溜まり、そのポイントと着せ替えグッズを交換してアバターを着飾っていきます。
ポイントを獲得するにはアフィリエイト以外にも、他人を招待したり直接的にwebマネーで買う方法やイベントゲームで獲得する方法もあります。また着せ替えグッズには星1~星5までのレア度が設定されており、レア度の高い物はイベントゲームでしか手に入りません。
学校内では阿波野妙子が絶対的な女王様として君臨しています。彼女は手下をつかって弱い者達からレアアイテムをカツアゲしており、そのレアアイテムを見せびらかすことで生徒達から指示を得ています。レアアイテムの譲渡を拒んだ西園寺真琴(さいおんじ まこと)は猛烈なイジメにあっています。
そんな状況下でたまたま道子が全国で50個しかないレアアイテムを手に入れたことから状況が一変します。西園寺と道子は美人局をしながら金を巻き上げレアアイテムを次々と購入、学園内でのし上がっていきます。
その道子の強烈な野心の背景として、かつて妙子によって父親を間接的に殺されたことと、そして自身の顔に対するコンプレックスが描かれます。次第に道子は権力におぼれ、狂気に走るようになります。
この作品はいろいろなエピソードがぐちゃぐちゃに混ざっていますが、柱になるのはこの道子のコンプレックスの話しであり、コンプレックスがやがて強迫観念に変わり、そして遂には決定的な狂気になって周りも巻き込んでいくというサイコホラーになっています。
本作の一番の見所はこの「道子がどんどん狂っていく」部分です。ただの内気な少女が、自己表現としてのゲームにのめりこんで行き、しまいには完全にそこに取り込まれます。このディティールは素晴らしく良く出来ています。それこそお金と時間を掛けて脚本を書き直せば、普通にファンタスティック系の賞レースに絡めるぐらいのプロットです。

本作のツッコミ所。又は、ほつれ具合

本作のツッコミの全ては「大仰」「嘘くさい」「そんなアホな!」。この3パターンが全てです。そしてその全てが脇がガラ空き過ぎてそもそもガードする気が無いくらい途方もなくほつれており、そこが逆に魅力になっています。
一番ひどいのは道子が整形手術するくだりでしょう。整形前と整形後でかわったのはアイシャドーとファンデーションが濃くなって髪がシャギ掛かっただけ。つまりただの高校デビューです。それは整形じゃないw しかもこの前後で橋本愛がものすごい無理をして話し方を変えようとするものですから、その滑舌の悪さと相まって悶えるレベルの恥ずかしさになっています。この瞬間、私はこの映画がアイドル映画として完璧に成功していると確信しましたw
これ以外にもツボは山ほどあります。たとえば何故かサークルの皆が付けるガスマスクです。ガスマスクには「金のガスマスク(道子専用)」と「銀のガスマスク(西園寺専用)」と「銅のガスマスク(幹部用)」と「黒のガスマスク(雑魚用)」があるんです。何故ガスマスクかもわかりませんし、ガスマスクを特注している意味もわかりませんw 東急ハンズとかで頼めるのでしょうか? 意外と部活グッズで流行るかも知れません。 しかもこのガスマスクはチェーンソーを跳ね返すほどの強度をもってます。是非一家に一個!!!
あとはなにせ阿波野です。昨年の実写版マリみてで令ちゃんを演じた坂田梨香子がいかしたテンションで怪演しています。男に振られた腹いせにチーズ味のカールを泣きながらヤケ食いしたり、キレてチェーンソーを持ち出してきたり、いちいち小ネタを仕込んできます。阿波野最高。
アバター程度でなんでそこまで人を操れるのかとか、この世界の警察は無能すぎるとか、夜中に学校に侵入している割に声が大きすぎとか、プロジェクターがどんだけでかいんだとか、高校性がwebマネーを何百万も使ったら不審だろうとか、そういう現実とつなげたリアリティは全くありません。ですが逆に言うと本作のリアリティ水準は冒頭からその程度ですので、特に引っ掛かる部分もなく見ることが出来ます。
本作は最初から最後まで設定が無茶苦茶なため、ある意味ではツッコミ所だけで出来ているとも言えます。ただその無茶苦茶さこそがハイテンションさにつながり、そしてアイドル映画としての魅力にもなっています。だから昨年の「私の優しくない先輩」と似たような雰囲気になります。純粋に映画としてみれば酷い出来ですが、アイドル映画としては十分ですし、結果として面白さはかなりのものです。

【まとめ】

ということで、本作は好事家専用の良作と言って良いと思います。とにかく面白いですが絶対に一般受けはしませんし、なによりアイドル映画視点を持っていないと結構つらいと思います。演技力は全員お察し下さいレベルですし、話しも無茶苦茶です。でもあまりに弾けすぎていてむしろ物凄く熱気・スクリーン圧力のある作品になっています。DVDが出るかもわからない作品ですので、お近くの方は是非映画館で見てみて下さい。オススメです!!!

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