アメイジング・グレイス

アメイジング・グレイス

本日の2本目は

アメイジング・グレイス」です。

評価:(85/100点) – 気品ある歴史ものの傑作。


【あらすじ】

時は18世紀後半。イギリスの政治家・ウィルバーフォースは従兄弟の家に静養に訪れる。彼は長年にわたり奴隷廃止運動に注力するあまり心身共に疲弊していた。従兄弟に紹介された美女・バーバラは彼の運動の支持者で、すぐに意気投合する。彼女を部屋に招いたウィルバーはバーバラに催促され、彼の運動の歴史を語り始める。それは信仰と尊厳を巡る物語であった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ウィルバーの静養とバーバラとの出会い。
 ※第1ターニングポイント -> ウィルバーがバーバラと出会う。
第2幕 -> ウィルバーの回想。
 ※第2ターニングポイント -> ウィルバーとバーバラが結婚する。
第3幕 -> 奴隷廃止運動の結末。


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【感想】

本日の2本目は「アメイジング・グレイス」です。イギリスでは2007年の春休み映画で、4年遅れで日本に上陸しました。川崎のチネチッタで見ましたが、年配のお客さんでそこそこ埋まっていました。
本作は植民地政策全盛期の大英帝国が舞台になります。ご存じ賛美歌の名曲「アメイジング・グレイス」の作詞家ジョン・ニュートン牧師や英国史上最年少の首相ウィリアム・ピットとウィルバーフォースとの出会いからはじまります。
いわゆる史実もののスタンダードなフォーマットを使いつつ、本作では気力を使い果たし無力感に囚われるウィルバーがバーバラと出会い復活し、ついには本懐を遂げるまでを丁寧に描きます。歴史物としての圧倒的な正しさにプラスして、挫折したヘタレの復活劇に落とし込むわけです。つまり私の大好物ですw
もうとにかく「見て下さい!」としか言いようがないぐらい、ものすごい説得力とカタルシスが詰まった作品です。冒頭のウィルバーは信仰に厚く「女性になんか興味無い」というオーラビンビンで使命感に囚われています。それが若いのに物事をハッキリ言うバーバラに出会い、まるで懺悔をするように自らの失敗を吐露するわけです。お互い好きあってる男女が同じ部屋に夜通し居るのに、やることが徹夜で政治話という超真面目さ。そしてこの真面目さと真剣さがあるからこそ、後半に出てくる法案を通す「チート(=ずる)作戦」に「その手があったか!」と膝を打ち、そしてそこからはじまる歴史物としては稀に見るサスペンス展開にハラハラするわけです。
もちろん格調をだすために犠牲にしている部分もあります。一番大きい点でいえば、もし本作をもっと突き抜けた物にするのであれば、奴隷達が劣悪な奴隷船で運ばれている様子や農園で酷使されている様子を映像的に見せれば良いのです。そうすればもっと真に迫って「奴隷制度は本当に酷い」という感覚を観客にも植え付けられます。でもそこは奴隷廃止200周年記念のイギリス作品ですので、あんまり当時のイギリス人を悪く描くわけにもいきません。この「非人道的であるから廃止すべきである」という主張の根幹である「非人道的っぷり」を描かないというのは、テーマを考えれば随分ヌルい手法です。
本作での「非人道的っぷり」の描写は見た限り3カ所だけです。一つは最初の奴隷解放運動者との晩餐で鎖を見せられるシーン。次に、実際の奴隷船を見学するシーン。最後に議員達をクルージングに招いて奴隷船の前に付け、わざと悪臭をかがせるシーンです。この3シーンとも、直接的な描写はしません。ここが本作の上品さでもあり、そして不満点でもあります。
もしかしたらアフリカの人から見たら「イギリス人の自己憐憫」と思われてしまうかもしれません。ウィルバーは昔のイギリスの価値観(=奴隷を使って植民地で富を増やすのは当たり前)を真っ向から否定した人物ですので、ウィルバーの視点にするとどうしても「昔のイギリス」を否定しないといけなくなってしまいます。そこをギャグパートを挟んでやんわりと回避しつつ最終的には人道的な所に落ち着くという無難な方向で逃げたのはとても上手いと思います。
結果として本作は説教臭くないギリギリのバランスでのヒストリカル・ヒューマンドラマとして、大変すばらしい出来になっていると思います。

【まとめ】

「奴隷貿易」という歴史上の負の部分に立ち向かう男を丁寧に描いた傑作だと思います。それもただ歴史を追っていくのではなく、あくまでも挫折した男の復活劇という一般的な作劇に落とし込んでエンターテイメントにまで昇華しています。
おしゃれ映画の雰囲気でちょっと躊躇うかもしれませんが、まちがいなく見ておいたほうが良い作品です。公開規模が少ないですが、お近くで上映している場合は是非見てみて下さい。見た後にあらためてアメイジング・グレイスの和訳を見れば感無慮になること必至です。かなりオススメな作品です。
※余談ですが、本作で唯一がっかりしたのが最後に流れるアメイジング・グレイスのバグパイプ楽隊バージョンの映像です。ウィルバーが眠るウェストミンスター寺院の広場での演奏っぽいんですが、完全に合成で楽隊の輪郭が浮いてますw 世界遺産ですので観光客を避けて撮影するのが難しかったのかもしれませんが、ちょっと萎えました。せっかく上品な映画なのに、最後でちょっとずっこけますw

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