アリス・イン・ワンダーランド

アリス・イン・ワンダーランド

今日の一本目は期待の新作、

「アリス・イン・ワンダーランド」です。

評価:(55/100点) – つまらなくはないが、、、中途半端。


【あらすじ】

19歳になったアリスは、ある日大勢の前でヘイミッシュにプロポーズをされる。しかし困惑した彼女は見かけた白ウサギを追いかけて逃げ出し、ウサギの穴に落ちてしまう。目が覚めるとそこは子供の頃から夢に出てきたワンダーランドだった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> アリスがパーティーに出席する。
 ※第1ターニングポイント -> アリスがアンダーランドに迷い込む。
第2幕 -> アリスとハッターとの再会。アリスと赤の女王の城。
 ※第2ターニングポイント -> アリスがヴォーパルの剣を持って城の女王に合流する。
第3幕 -> アリスとジャバウォックの決闘。


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【感想】

さて、本日はディズニー期待の大作実写映画・アリス・イン・ワンダーランドです。宣伝は去年の11月頃から散々見せられてきましたから、話の内容はあらかた想像がついていました(笑)。監督はティム・バートン。おなじみジョニー・デップとヘレナ・ボナム・カーターがメイン級ででており、鉄板のバートン組って感じでしょうか?

話のディティールについて

本作の話自体は、よくある類の異世界に迷い込んで独裁者を倒すファンタジー・アドベンチャーです。最近ですと、ナルニア国物語第一章/第二章あたりが全く同じ話ですし、古くは「ネバーエンディングストーリー」や「オズの魔法使い」など山程ある話です。
そんな中で本作がアリスとしてギリギリ成立出来ているのは、一重にキャラクター造形の巧さです。特に見た目に関しては本当にジョン・テニエルが描いたオリジナル挿絵にそっくりです。ジャバウォックなんてそのまんまで3Dで動きますから、感激とまでいかないまでも感心はしました。
しかし、キャラクターの性格については正直に言ってほとんど原作と関係ありません。っていうかハッターが真面目かつヒロイックすぎますし、原作での最重要キャラ・白ウサギもキャラが薄すぎます。
結局ですね、本作はルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」と「鏡の国のアリス」にある単語やエピソードやキャラクター造形を使って、ティム・バートンが(ディズニーの制約の中で)好き放題やっているという印象がします。この「ディズニーの制約」というのが結構微妙だったりします。

ティム・バートンという監督の資質

いまや日本でも一般認知度の高い人気監督になりましたティム・バートンですが、当ブログで彼の作品を扱うのは初めてです。ということで、そもそもこの監督の資質というものについて考えてみたいと思います。
ティム・バートンの代表作といえば、バットマンシリーズやシザーハンズ、マーズ・アタックあたりが有名でしょうか? 彼の作品に共通するキーワードは「弱者に対する優しさ」と「カルトな描写」です。例えば「シザーハンズ」では生まれつき人とふれあうことが出来ない孤独なエドワードの悲哀を描いていますし、「バットマン・リターンズ」では親に捨てられた孤独なペンギンの悲哀が前面にでてきます。「チャーリーとチョコレート工場」では貧乏な少年が正直さと真面目さで評価されるようになりますし、「スウィーニー・トッド」では悪徳判事にハメられた一小市民の反撃を描きます。
そしてこれらの「弱者に対する優しい視点」がカルトな雰囲気を混ぜて倒錯した描かれ方をします。
では今回の「アリス・イン・ワンダーランド」はどうでしょうか?
「アリス・イン・ワンダーランド」はまさに赤の女王の圧政で虐げられた人々の復讐劇です。その意味ではこれ以上ないほど「弱者の味方」そのままです。ところが、、、本作を見ていてイマイチ物足りないのはここに「カルトな描写」が入ってこないことです。具体的にはマッド・ハッターがまったくマッド(=気狂い)じゃないんです。せっかくジョニー・デップなのに、全然変人ではありません。マッドなのは服のセンスぐらいです(苦笑)。
本作で私が一番ワクワクしたシーンはずばり言って、赤の女王城のお堀に浮いた顔(生首)を飛び石にしてアリスが渡るシーンです。あとはアン・ハサウェイ演じる「白の女王」のエドワード・シザーハンズを連想させる変な動きぐらいでしょうか?
逆に言うとですね、、、そこ以外はきわめて普通で、「毒気」を抜かれたティム・バートンの抜け殻のように見えてしまいます。とてもディズニーっぽいと言った方が良いかもしれません。ディズニーなので赤の女王を処刑するわけにはいかないですし、人間の形をしたクリーチャーは殺せないんです。
でもそれってティム・バートンの魅力の大部分を削いでしまっているわけです。じゃあカルト表現を削いだ分だけファミリー向けになっているかというと、そうでもありません。生首が出てきたりしちゃうわけで、100%ファミリー向けにはなっていません。とっても中途半端です。

話のプロット上で気になる点

物語で気になる点は結構あります。まず一番は、そもそもアリスが救世主であることの根拠の薄さです。「預言に書いてあるから」ってだけだとちょっと、、、。おそらく実際には「アンダーランド(ワンダーランド)はアリスの夢なのだから自分が最重要人物になるのは当然」って辺りの事情だと思いますが、ちょっと微妙です。しかも終盤では、いくら「ヴォーパルの剣が戦ってくれるから握ってるだけで良い」とはいえ、ちょっと驚くほどのアクションを見せてくれます。せめて白の女王に合流した後で剣術の練習ぐらいはして欲しかったです。
第二に、この物語の着地の仕方です。本作は最終的には「ダウナー系の不思議ちゃん」だったアリスが「物事をハッキリ自己主張する大人の女性」に成長する物語になります。でですね、、、この自己主張の仕方に問題があると思うんです。特に姉とおばちゃんに対しての態度は自己主張っていうよりは冷や水をぶっかけてるようにしか見えません。もしかしたらアメリカ人の感覚では問題無いのかも知れませんが、ちょっとどうなんでしょうね?

【まとめ】

ここまで書いていない重要な事があります。
原作の「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」が何故ここまで名作として普及しているかという理由は、もちろん1951年のディズニーアニメの影響もありますが、その原作の持つ暗喩性によるところが大きいと思います。早い話がアリス・キングスレーが少女から女性に成長する過程をワンダーランドのメタファーに置き換えて語っているわけです。
ですから、私個人としては「千と千尋の神隠し」で宮崎駿がやったような「倒錯した自分流の不思議の国のアリス」をティム・バートンがやってくれることを期待していました。その意味ではちょっとがっかりです。
しかし、決してつまらない話ではありません。手放しでは喜べないものの、最近のファンタジーアドヴェンチャーとしては手堅い出来です。小さいお子さんを連れて行くのは考えものですが、友人や恋人と気軽に見るには最適ではないでしょうか? ディズニーのエンタメ・ファンタジーとしては十分に及第点だと思います。

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